週初めの下落が週末にかけて大きく回復

  • EUAの終値は前週比約0.4%減の93.32ユーロ。取引レンジは6.10ユーロに縮小(前週は10.02ユーロ)。
  • 先月に天気予報が度々変更されたことでガスと電力の価格が一定の値幅で変動。石炭市況は引き続き下落し、今週は過去1年の最安値を記録。
  • 炭素市場は複合エネルギー市場より持ちこたえたものの、以前として週の大半で低迷。日次ボラティリティは減少し、セッション当たり平均3.48ユーロの取引レンジとなった(前週は4.2ユーロ)。短期的に弱気のセンチメントとなるには89.18ユーロが目安となる水準。
  • 先週は気温が氷点下となったものの、ヨーロッパ全体ではガス備蓄は潤沢。温暖な天候と強風が予想されることから、EUでは備蓄量の増加が見込まれる。現在の備蓄レベルは容量の67%(前週は70%)。LNGの備蓄レベルは48%に減少(前週は56%)。
  • マクロ:米国とイギリスのインフレデータ(CPI)はそれぞれ火曜と水曜に公表される予定。誤差が予想以上となったことから、中央銀行による更なる対策が必要とされていることは明らか。株式市場、外国為替市場、債券市場等で激しい値動きが予想される。
  • EU環境委員会が「Fit for 55」によるETS改革を支持。次の段階は3月と4月に行われる欧州理事会と欧州議会による票決。
  • EUのENVIが今週火曜にリパワーEU計画の対策を票決。

オークションによる供給はあったものの、UKAは一定の値幅で取引された。気温の変化で売り圧力が発生する可能性あり。Redshaw社の見通し:横ばい
  • UKAの終値は前週比約0.7%増の83.99ポンド。取引レンジは4.02ポンドと狭く(前週は12.06ポンド)、水曜のオークション前後も小幅な値動きに終始。
  • UKAのレジリエンスにより、対EUA週間平均プレミアムが復活し、現在は1.36ユーロ(前週は‐4.53ユーロのディスカウント)(チャートを参照)。
  • 今週は温暖な天候に戻り、最高気温は15℃に達する見込み。
  • 先週の寒波がUKのガス備蓄に大きく影響。今週は11%減。現在の備蓄レベルは54%。

EUA/UKAの相場が横ばいで推移する中、投資家のポジションは不変。
  • KFA Global Carbon ETFのEUA/UKA保有量は不変。NAV(Net Asset Value:純資産総額)は6億6,300万米ドルに減少。

技術的な短期見通し:強含み
  • Futurestechの次期レベル:上げ相場が数週間続いたことを受け、99.22ユーロと101.95ユーロが視野に。
  • 推奨取引:押し目買い/買い待ちの継続

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • フランスへのLNGの供給量が2022年に倍増-TSO
  • ETSのグローバル市場が2022年に過去最高の8,500億ユーロに到達。

ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • GEOとN-GEOが反発;二国間のカーボンクレジット取引の簡易化に向けてIETAが取引基準を発表。

再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • EUのGOが約18.91%下落;ポーランドで12月に再生可能エネルギー発電量が1 GW相当増加;グリーン産業を暫定的に支持することでEU首脳が合意。
技術的見通し―強含み
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
  • 短期傾向:強含み
  • 昨日(2023年2月12日)までの相場動向:水曜にフィボナッチによるサポート(89.73ユーロ)で一時的に安定したものの、週全般で弱気の気配となった。 午前の取引でそこそこ値上がりしたことで金曜はほぼ陽線となったが、その後反転。終値は上昇した。
  • 推奨される取引:押目買い/買い待ちの継続
寒波が去って温暖な天候に;北欧の日間風速が過去3ヵ月の最高を記録
  • 右記の図(上)はEUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは約0.4%減。ドイツ電力は約8.1%減。ARA石炭は約12%減。TTFガスは約7.1%減。
  • 右記の図(中)は石炭とガスを燃料とする一年後の先物価格をもとにしたドイツの発電マージン。
    • Y1石炭のマージンは40.27/ユーロ/MWh 前後(今週22%減)、Y1ガスのマージンは28.40ユーロ/MWh 前後(今週22%減)
    • 複合エネルギー市場の低迷が引き続き発電のスプレッドを圧迫。

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
フランスへのLNGの供給量が2022年に倍増 (montelnews.com)フランスのガスターミナルに供給されたLNGが昨年倍増し、 370 TWh(330億立法メートル)に達した。先週の金曜、ガス輸送システム事業者 GRTgazが語ったところによると、これは東欧向けのロシア産パイプラインガスの減少を補填したことが原因。さらに、「ヨーロッパでのガスの流れが西から東に逆転したことでフランスはLNGの主要な玄関口となっており、エネルギーの安全保障で重要な役割を果たしている」と GRTgazは述べている。実際、フランスがパイプラインを介して近隣諸国に輸出した量は2021年比で約4倍増している。また、「フランスのガスシステムはわずか数か月で新たな地政学的環境に大きく反応し、ヨーロッパにおけるエネルギーの連帯に貢献している」と GRTgazのティエリー・トゥルーベCEOは述べている。

ETSのグローバル市場が2022年に過去最高の8,500億ユーロに到達 2022年は(世界のETS市場において)125億トン分の排出枠が取引された。リフィニティブのアナリストによると、これは金額にして8,500億ユーロに相当する。取引量は2021年比で20%減少したものの、価格が高騰する中で市場価値は14%増加している。EU ETSで取引される量は全体の87%(7,510億ユーロ)を占めており、米国市場(WCIとRGGA)の7%、UK ETSの5%がこれに次ぐ。中国市場の割合は1%に満たない。

ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報
GER(Global Emission Reduction)は今週横ばい。
GEO (Global Emission Offset)は19%増。N- GEO (Nature-based Global Emission Offset) は43%増。

二国間のカーボンクレジット取引の簡易化に向けてIETAが取引基準を発表 国際排出量取引協会(IETA)が先週、プロジェクト由来のカーボンクレジットの売買に関する一連の包括的合意事項を提示することを明らかにした。 その目的は、カーボンクレジット取引のベースとなるERPA(排出削減量購入協定)を標準化することにある。ボランタリー炭素市場では標準商品が一般化しているが、取引の大半は依然として二国間(店頭取引)で行われており、これにERPAが適用される。IETAはERPAが取引の最低基準となることで、ボランタリー・カーボンクレジットの売買にともなう問題が軽減されることを期待している。IETAのダーク・フォリスターCEOは、「今回の新たなERPAは標準化に向けた第一歩」と述べている。

再生可能エネルギー市場に関する最新情報
第6週 AIB再生可能エネルギー(本年):

仲値 = 5.3925ユーロ (-1.2575 ユーロ/-18.91%)

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:19.00~21.00ポンド、売却目安:32.00~34.00ポンド

UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP21: 6.75~7.00ポンド; CP22: 8.50~8.75ポンド; CP23: 8.00~8.25ポンド

ポーランドで12月に再生可能エネルギー発電量が1 GW相当増加 エネルギー関連のデータを提供しているEnergy Market Agencyによると、ポーランドが12月に再生可能エネルギーによる総発電量を997 MW 上乗せしたことで東ヨーロッパ諸国のグリーン電力の総容量は22.7 GWとなった。モンテルによると、この増加分の大半は陸上風力発電によるもので(0.5 GW)、太陽光発電(351 MW)がこれに次ぐ。これにより、ポーランドの太陽光発電と陸上風力発電の総容量はそれぞれ12.2 GW 、8.3GWとなった。ポーランドは再生可能エネルギーの総発電容量を2030年までに倍増して50 GWとすることで化石燃料への依存を低減しようとしている。今回のグリーン電力の増加はこの方針によるもの。
 
グリーン産業を暫定的に支持することでEU首脳が合意 EU首脳がグリーンプロジェクトの認可を迅速化し(ネットゼロ産業法)、「重要原材料法」を採択すべき点で合意した。その目的は、新たなリサイクル対策を構築し、原材料の供給業者の多様化を図ることにある。これは、中国への依存を低減する上でも必須の措置といえる。しかし、対策に要する資金の出所とその金額は明らかにされておらず、共同借り入れに対する抵抗も大きい。また、オランダ・アイルランド・北欧諸国等のEU加盟国は過剰な補助金に懸念を示している。なお、グリーンディールは3月22・23日に開かれるEU首脳サミットでさらに検討される予定。
 




会員登録・ログインでコメントの閲覧ができます。

法人様向けの有料プログラム

有料サービスに申し込む

コメント投稿や閲覧が可能

無料会員に登録する

既に会員のかた

ログインする