炭素市場上昇の流れで一時的に逼迫するもその後は乱高下

  • EUAの終値は前週比約4%増の93.67ユーロ。取引レンジは10.02ユーロに拡大(前週は9.73ユーロ)。
  • 氷点下の気温が予想された中で複合エネルギーは好調。再生可能エネルギー発電量の低迷は2月中旬まで続く見込み。
  • 炭素市場は先週になってエネルギー市場と同調したものの、日中の変動幅ははるかに大きい。先週のEUAのセッション毎の平均取引レンジは4.2ユーロ超(前週は3.4ユーロ)売気は96.0~97.5ユーロ。これは一時的な逼迫が終わる兆し。
  • ヨーロッパ全土におよぶ新たな寒冷前線がガス価格に影響(約5%増);現在の備蓄レベルは容量の70%(前週は75%)。現時点でのガス備蓄量は2022年比で 56%増、2021年比で13%増。LNGの備蓄量は56%で不変。
  • DBX提供のデータによると、1月のヨーロッパの石炭火力発電量は16%減。価格は引き続き年初来最低レベル近くで推移。
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  • FED、ECB、BOEがそろって利上げを実施。FEDの25 bpsに対し、ECBとBOEは50 bps。利上げは夏まで続くとBOEが見る中、中央銀行はその業務が完了に程遠いことを公表。これにともない、株式市場と外国為替市場が乱高下した。
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  • EU環境委員会が2023年2月9日に開かれ、ETS改革、MSRの調整、CBAMについて投票が行われる。

強気のセンチメントが週末に向けてピークに;天候は再び例年並みに;隔週オークションで連続上げ相場終了かRedshaw社の見通し:横ばい
  • UKAの終値は前週比約13%増の83.40ポンド。取引レンジは12.06ポンドに拡大(前週は7.51 ポンド)。
  • UKAの対EUA週間平均ディスカウントは-4.53ユーロ(前週は-7.36 ユーロ)。(チャートを参照)。
  • 水曜に開催された隔週のUKAオークションで供給が追加。現在の15ポンドを超える連続上げ相場は前回のオークションからが始まったことから、市場関係者は動向を注視。
  • 今日から天候は例年並みに。予想気温は-1~10℃。
  • イギリスのガス備蓄量は今週5%減。備蓄レベルは65%。

価格上昇が投資家を呼び込む
  • KFA Global Carbon ETF(投資家心理の指標)のEUA保有量は3.5%増、UKA保有は3.3%増。NAV(Net Asset Value:純資産総額)は6億7,500万米ドルに増加。

技術的な短期見通し:強含み
  • Futurestechの次期レベル:上げ相場が数週間続いたことを受け、99.22ユーロと101.95ユーロが視野に。
  • 推奨される取引:押目買い/買い持ちを続けること

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • 次の冬季に備え、EUはガスの需要を引き続き抑制すべき(調査結果)
  • 欧州委員会がコンプライアンスの期限を検討

ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • GER(Global Emission Reduction)は前週比横ばい;二酸化炭素除去の現状に関する報告書が発表される。

再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • EUのGO(Guarantees of Origin:発電源証明)は約8.9%減。PPA開発者が収益上限規制で破産の危機;米国のインフレ抑制法に対抗してEUがグリーンディール政策を設定
技術的見通し―強含み
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
  • 短期傾向:強含み
  • 昨日(2023年2月5日)までの相場動向:昨日は上昇が持続したが、97.55に達した時点で一部で逆方向の取引が見られた。したがって、当初は99.22、その後は101.95を視野に入れていたが、木曜には弱気に転じた。そこで96.20で戻り売りし、売り手も現れたものの、金曜にはローソク足に「流れ星」のパターンがわずかに現れた。
  • 推奨される取引:押目買い/買い持ちを続けること
氷点下の気温でエネルギー市場が全面的に反発
  • 右記の図はEUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、選手、EUAは約4.6%増。ドイツ電力は約8%増。ARA石炭は約2.8%増。TTFガスは約5.1%増。
  • 右記の図は石炭とガスを燃料とする一年後の先物価格をもとにしたドイツの発電マージン。
    • Y1石炭のマージンは51.63/ユーロ/MWh 前後(今週 14.4%増)、Y1ガスのマージンは36.41ユーロ/MWh 前後(今週27.66%増)
    • ガスの利益幅は著しく拡大したものの、メリットでは引き続き石炭が優位。

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
次の冬季に備え、EUはガスの需要を引き続き抑制すべき(調査結果)シンクタンクのブリューゲルが木曜に語ったところによると、次の冬季に向けて備蓄を確保すべく、EU諸国はガス需要を今後半年に渡って15%削減する必要がある。EU加盟国は、ウクライナ戦争でロシアからのガスの供給が削減されたことを受け、過去5年間の平均を基準にそれぞれのガス消費量を15%削減する自主協定に合意している。これは各国で備蓄レベルを高め、寒い時期の需要急騰を抑えるための措置。同自主協定は3月31日に失効するが、ブリューゲルによると、次の冬に向けて備蓄容量の90%を確保するには最低でも対象期間を10月まで延長する必要がある。LNG船が相次いで入港し、ロシア以外の国からパイプランで供給される量も増えてはいるものの、需要の抑制は引き続き必要とされている。

欧州委員会がコンプライアンスの期限を検討;2023年は不変―2024年に変更される可能性 ECが明らかにしたところによると、今年のEUAの償却期限は4月30日で当初と変わらない。しかし、EU ETS改革の一環として、2024年以降はコンプライアンスの期限が9月30日となる可能性がある。また、各国向けの無償排出枠の配分期限は現時点でほとんど遵守されていないものの、今回の修正案により、これも現行の2月28日から6月30日に変更される可能性がある。なお、こうしたコンプライアンス・サイクルの変更は、欧州議会と欧州理事会がEU ETS改革を正式に承認するまで公表されない(3月/4月の予定)。

ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報
GER(Global Emission Reduction)は今週横ばい。
GEO (Global Emission Offset)は12%減、N-GEO (Nature-based Global Emission Offset) は26%減。

二酸化炭素除去(CDR)の現状に関する報告書が「発生期の炭素の除去方法」について世界的な現状評価を提供 調査結果によると、現在の二酸化炭素の年間除去量20億トンのほぼ全量は従来の土地管理によるもの。DAC(直接空気捕捉)やBECCS(回収・貯留付きバイオマス発電 )、バイオ炭等の「非従来型」の方法による除去量は全体の0.1%程度に過ぎない。報告書は、こうした非従来型の方法を発展させる必要性も強調しているが、CDRの促進にともなう不確実性とリスクを考慮した場合、除去よりも排出自体の削減を加速すべきだとしている。また、炭素除去の現状について参考となる評価を行う一方、今後の対策を促進するための実践的方法も提示している。さらに、「ネットゼロ目標を公約としている国は多々あるものの、CDRに向けた具体的計画や政策はほとんどない」ことを考えると、CDRの管理を調整し、各国がそれぞれの現状に合わせて政策を決定することが今後の対策の鍵だと述べている。

再生可能エネルギー市場に関する最新情報
第5週 AIB再生可能エネルギー(本年):

仲値= 6.65ユーロ(0.65ユーロ減/8.90%減)

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:17.50~20.50ポンド、売却目安:29.50~32.00ポンド

UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP21:6.75~7.00ポンド、CP22:8.50~8.75ポンド、CP23:8.00~8.25ポンド

PPA開発者が収益上限規制で破産の危機: 専門家が先週、モンテルに伝えたところによると、低コスト発電事業者に課される収益上限規制により、買電契約(PPA)を結んでいるドイツ企業が破産の危機に面している。ドイツの再生可能エネルギー供給元であるLichtblicks社のスポークスマン、Ralph Kampwirthは、「一部の企業が現在、破産の重大なリスクを抱えている」と述べている。同氏のコメントの背景には、高騰するエネルギー価格を抑えるために政府が6月末まで課している130/MWhの上限規制がある。再生可能エネルギー技術に適用される同規制は2024年4月まで延長される可能性がある。また、ノルウェーの公益事業であるStatkraft 社のスポークスマン、 Nora Johanna Kryssonがモンテルに語ったところによると、上記の理由により、既存の再生可能エネルギー資源に関する短期契約には「経済的妥当性」がないため、実際に締結に至るものは少ない。さらに、これ以上規制期間を延長すれば、ドイツ市場は投資家の信頼を失うことになるだろうとも述べている。
 
米国のインフレ抑制法に対抗してEUがグリーンディール政策を設定 欧州委員会(EC)が、再生可能エネルギーと脱炭素関連のプロジェクトの補助と適用対象の拡大を2025年末まで延長するプロポーザルを提出した。グリーン・プロジェクトをより迅速に承認し、EUの資金を再生可能エネルギーに振り分け、太陽光パネルと風力タービンに必要とされる原材料を確保することが狙い。EU首脳は、米国の総額3,690億米ドルに及ぶ一連の補助金により、多くの企業が米国に移転することを危惧している。ウルズラ・フォン・デア・ライエンEC委員長によると、EU加盟国向けの補助金総額は約2,500億ユーロ。その大半はCOVID-19復興基金等から拠出される。補助の詳細は2月9、10日のEUサミットで明らかにされる予定。
 




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