石炭価格と市場全体のリスクオンセンチメントと並行してEUAが高騰;低調なオークションでUKAのボラティリティが増加;気温は再び例年並みに

  • 強気のセンチメントが持続してEUAの終値は前週比約5.4%(5ユーロ)増の96.75ユーロ;取引レンジは6.31ユーロに拡大(前週は6.17ユーロ)。上昇傾向の主な要因は駆け込みのコンプライアンス購入、フランスでのストライキと原子力発電所の停止、風力発電量の低下、オークション量の減少、市場全体のリスクオンセンチメント等。先週の中央ヨーロッパの天候が例年より寒冷だったことから、エネルギー市場の下支えでEUA価格が急騰。全体的に市場が沈静化したことでEUAの日中ボラティリティが著しく低下。平均取引レンジはセッション当たり2.34ユーロとなった(前週は4.46 ユーロ)注目すべきテクニカルレベルは90.71ユーロ、90ユーロおよび87.66ユーロ以下。上方のレジスタンスは92ユーロ、93.26ユーロ、94.14ユーロ。上昇傾向の主な要因は駆け込みのコンプライアンス購入、フランスでのストライキと原子力発電所の停止、風力発電量の低下、オークション量の減少、市場全体のリスクオンセンチメント等。
  • エネルギーコンプレックスはやや複雑。石炭と石油が高め。ガスは低めの週となった。EUAの日中ボラティリティはやや高まり、平均取引レンジはセッション当たり3.13ユーロに(前週は2.34ユーロ)。テクニカルなサポートレベルは96ユーロ、94.70ユーロおよび91.75ユーロ以下。上方のレジスタンスは98ユーロ、100ユーロ、101.20ユーロ。
  • ガスの貯蔵量は1%増で現在は容量の56%。ENTSOGの最新の予測によると、ロシアからの供給がなくてもEUの貯蔵レベルは10月までに90%に達する見込み(「その他のニュース」を参照)。
  • ヨーロッパへのLNGの輸入量は前週比3%減で現在は容量の58%;フランスのLNGターミナルの混乱にも関わらず、現在の貯蔵量は2021・2022年の実績を20%上回るレベル。
  • マクロ:米国の失業率が予想に反して聖金曜日に3.6%に減少;米国のインフレデータは水曜、EUの工業データは木曜に発表の予定。

オークションの低迷を受けてUKA価格急落するも週末には横ばいにRedshaw社の見通し:横ばい
  • 引き続きUKAは一定の値幅で取引され、ほぼ横ばいの73.99ポンドで引けた-わずか0.09ポンドの増加;取引レンジは4.96ポンドに拡大(前週は3.83ポンド)。強含みで今週はスタート。最高値は火曜の77.99ポンド。しかし、オークションを原因とする下落で増加分はすべて消失。キーレベル;下落傾向では72.22ポンド、70.70ポンド、69ポンド。上昇傾向で注目すべきレベルは76.40ポンド、77.99ポンド、80.03ポンド。
  • EUAに対するUKAの平均スプレッドは拡大-ディスカウントは新記録となる-10.04ユーロ(前週は-7.10 ユーロ)。(チャートを参照)
  • 例年並みの天候でイギリスのガス貯蔵レベルはほぼ不変;前週比1%減の60%。
  • 晴天と雨天が交互して例年並みの気温が続く見込み。
  • イギリスのデータ:GDPデータの発表は木曜(前月比0.1%増の見込み)

炭素投資家のポジションは不変;EUAとともにNAVも増加。
  • KFA Global Carbon ETFの保有量はEUAとUKAの双方で不変。NAV(Net Asset Value:純資産総額)は3.3%増の6億5,200万米ドル。

技術的な短期見通し:
  • Futurestechの次期レベル:強気筋が支配的。
  • 推奨取引:押し目買い

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • EUのガス貯蔵目標である90%は10月までに達成できる見込み-TSOs
  • 特定の航空機投資を対象としたグリーンラベルの導入をEUが検討。

ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • GEOとN-GEOの価格はともに前週比減;格付け機関がREDD+についての審査結果と提言を発表。

再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • GO価格は5.5%増;EDF Renewablesがニューヨーク州で太陽光発電施設の建設認可を申請;エンジーがフランスで500MW規模の洋上風力発電施設を建設へ。
技術的見通し―強含み
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
  • 短期傾向:強含み
  • 昨日(2023年4月10日)までの相場動向:93.87~94.10ユーロが懸念されなかったことで昨日の陰線(上影陰線)はほとんど不変。強気を維持!- 思ったとおり、昨日は強気筋にとって良い日。利益は98.00ユーロで頭打ち!その後の引き戻しは95.75ユーロにとどまった。強気筋が優勢。これに抗わないこと!
  • 推奨取引:押し目買い
気温が上下してエネルギーコンプレックスはやや複雑
  • 下記左の図はEUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは5.4%増。ドイツ電力は 4.9%減。ARA石炭は3.1%増。3.1TTFガスは3.3%減。
  • 右記の図(中)は石炭とガスを燃料とする一年後の先物価格をもとにしたドイツの発電マージン。
    • Y1石炭のマージンは20.63/ユーロ/MWh 前後(今週25%減)、Y1ガスのマージンは19.16ユーロ/MWh 前後(今週31.13%減)。
    • 発電のメリットオーダーでは引き続き石炭とガスは互角。

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
EUのガス貯蔵目標である90%は10月までに達成できる見込み-TSOs(montelnews.com): 欧州ガス系統運用者ネットワーク(ENTSOG)によると、ロシアからのパイプラインによる供給がなくても、EUは他の供給源を確保することで10月までにガス貯蔵容量の90%以上を満たせる見込み。 4月1日時点でのEUのガス貯蔵量は625 TWh相当。これは容量の55%に相当し、2022年4月のレベルの倍以上。モデリングによると、ロシアからの供給がなくても、EUはこの夏、ガス需要量の34%をLNGの輸入から、33%をノルウェーから、17%を域内生産から調達できる見込み。さらにモンテルによると、10%をアルジェリアから、4%をカスピ海地域から、2%をリビアから調達する計画。

特定の航空機投資を対象としたグリーンラベルの導入をEUが検討 EUは特定の航空機投資が環境的に持続可能であることをラベルで認証する意向だが、この計画が批判されている。EU委員会の意向は、航空機のリースと製造、さらに旅客機と貨物機への特定の投資をグリーンラベルで認証することにより、資金の流れを気候変動目標に最も貢献している部門に向けることにある。この計画によると、CO2を排出しない航空機、またはCO2の排出がICAOの基準を下回る航空機にグリーンラベルが付与される。また、2028年以降、「グリーン」航空機は持続可能な燃料で航行することになっている。しかし、このグリーンラベルは一部の気候活動家の抵抗に遭っている。活動団体のTransport & Environment に属するFaig Abbasovは、「石油を燃料とする航空機やガスで航行する船を持続可能とするなら、この分類にはほとんど期待できない」と述べている。EU委員会はガスと原子力への一部の投資を巡り、すでに2件の訴訟を抱えている。

ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報
GER(Global Emission Reduction)は今週横ばい。
GEO(Global Emission Offset)は1%減。N-GEO(ネイチャーベースのGEO)は 9%減。

Calyx GlobalがREDD+の審査結果とプロジェクト改革に向けた提言を発表 2023年に入ってREDD+(森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減)について情報開示を続ける中、カーボンプロジェクトとカーボンクレジットの格付け機関である Calyx Globalが「REDDのグリーン化」と題する報告書を発表した。Calyx Globalはこの報告書で、これまでに関わった73件のプロジェクから得た知見をもとにREDD+プロジェクトを改善するための現実的な提言を行っている。具体的には、基準管理団体(Verra等)または市場管理団体(IC-VCM等)による改革を待たずに自ら変革に乗り出すことをプロジェクト開発者に要請している。報告書の提言は以下のとおり。  
      
  • プロジェクト実施前にカーボンファイナンスを「事前検討」する。
  • より正当化しやすいベースラインを選択する。
  • 予測にともなう不確実性を透明性をもって報告する。
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
第14週 AIB再生可能エネルギー(本年):

仲値=7.60ユーロ(0.4 ユーロ増/5.56%増)

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:21.00~23.00ポンド、売却目安:32.00~34.00ポンド

UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP23:8.15~8.35ポンド; CP24:7.15~7.30ポンド;CP25:6.70~6.90ポンド

EDF Renewablesがニューヨーク州で太陽光発電施設の建設認可を申請 EDF Renewablesの米国支社がニューヨーク州のカントンで240MW規模の太陽光発電施設を建設する計画を発表した。計画の第1段階として、4,200ヘクタールの土地に太陽光パネルを設置し、年間61,000世帯に電力を供給する。建設が認可されれば、操業開始は2025年の予定。このプロジェクトは、EDFによる北米での再生可能エネルギー開発の一環で、2025年までに940MWを太陽光エネルギーで発電し、60MWの蓄電容量を確保する計画。
 
エンジーがフランスで500MW規模の洋上風力発電施設を建設へ(montelnews.com): フランスの電気・ガス事業者エンジーのジョイントベンチャーであるOcean Windsが最終的に投資を決定。フランス南西部沖で500MWの洋上風力発電施設を建設する計画。先週木曜の発表によると、操業開始は2025年前半に予定されている。プロジェクトはユー島沖11キロ、ノワールムティエ島沖16キロの海域に建設され、約80万世帯に電力が供給される。フランスは洋上風力発電の設備容量を2023年中に2.4GW、2028年までに約5GWに拡大する計画。
 




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