イギリスとEUの市場でボラティリティが低下;リパワーEU計画のオークションが7月にスタート;イギリスで国境炭素税の協議はじまる

  • 5日連続の上昇を受けてEUAの終値は前週から3.91ユーロ増加して(4.5%増)91.75ユーロ。取引レンジは6.17ユーロに縮小(前週は9.39ユーロ)。コンプライアンス購入、気温の低下、リパワーEU計画のニュースを受けて5日連続して反発。リパワーEU計画では当初、3,000万トン以上のオークションが見込まれていたが、2023年の予想量は1,650万トン。
  • 先週の中央ヨーロッパの天候が例年より寒冷だったことから、エネルギー市場の下支えでEUA価格が急騰。全体的に市場が沈静化したことでEUAの日中ボラティリティが著しく低下。平均取引レンジはセッション当たり2.34ユーロとなった(前週は4.46 ユーロ)注目すべきテクニカルレベルは90.71ユーロ、90ユーロおよび87.66ユーロ以下。上方のレジスタンスは92ユーロ、93.26ユーロ、94.14ユーロ。
  • ガスの消費量は不変:貯蔵レベルは容量の55%で、2021年・2022年と比較すると、この時期としては倍の量。要因は観測史上2番目の暖冬。
  • ヨーロッパのLNG価格が3週連続で過去20ヵ月の最安値近辺で停滞;フランス沖合のLNG船がストライキの影響で依然として荷揚げ待ち。
  • マクロ:EUと米国の株式市場で5日連続で株価が反発したことで銀行部門の緊張が緩和。EUと米国が製造データを月曜に発表の予定;市場が閉じている中、米国の雇用データは聖金曜日に発表の予定。

UKA価格が2ヵ月の低迷からわずかに反発;UKAのオークションと製造データが要注目。Redshaw社の見通し:横ばい
  • UKAの終値は前週から0.90ポンド増加して73.90ポンド;取引レンジは3.83ポンドに縮小(前週は4.95ポンド)。週の最高値は金曜の74.53ポンド。キーレベル;下落傾向では71.45ポンド、70.70ポンド、69ポンド。上昇傾向では引き続き76.40ポンド、78.60ポンド、80.03ポンド。
  • EUAに対するUKAの平均スプレッドは拡大-ディスカウントは-7.10ユーロ(前週は-5.59ユーロ)。(チャートを参照)
  • 温暖で湿潤な天候でイギリスのガス貯蔵量が再び増加;6%増で61%に。
  • 雨天と例年を下回る気温が予想される。
  • イギリスで国境炭素税の協議始まる(「その他のニュース」を参照)。
  • イギリスのデータ:月曜発表の製造データに続き、隔週のUKAオークションが水曜に開催。

炭素投資家;EUAのポジションが確立するも、UKAの保有量はオークションの低迷で減少。
  • KFA Global Carbon ETFの保有量はEUAで 6.7%増、UKAで1.8%減。NAV(Net Asset Value:純資産総額)は1.6%増の6億3,100万米ドル。

技術的な短期見通し:
  • Futurestechの次期レベル:トレンドサポートよりも低い価格レベルを模索?
  • 推奨取引:押し目買い

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • ストライキの影響でフランスの発電量が9.6GW相当減少。
  • イギリスで炭素国境調整メカニズム(CBAM)を巡る12週間の協議がスタート。

ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • GEOは前週比17.8%増で高止まり;カーボンクレジット市場のインテグリティの改善・管理に向け、IC-VCMが最終文書を発表。

再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • AIBのGOは6.5%減;イギリスのPPA市場が発電事業者の支配下に。
技術的見通し―横ばい
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
  • 短期傾向:強含み
  • 昨日(2023年4月2日)までの相場動向:一部はまずまずの上昇日というよりは十字線のようだったが、金曜に5回連続で陽線が再び出現。金曜も強気筋が優勢の日だったが、納得しているわけではない。94.14が見送られ、強気筋が一息つけるのを期待したいところ。
  • 推奨取引:押し目買い      
ヨーロッパの一部が降雪をともなう急な寒波に見舞われたことでエネルギーコンプレックスにおいて価格が一斉に上昇。
  • 右記の図(上)は図はEUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは4.5%増。ドイツ電力は13.0%増。ARA石炭は9.7%増。TTFガスは12.4%増。
  • 右記の図(中)は石炭とガスを燃料とする一年後の先物価格をもとにしたドイツの発電マージン。
    • Y1石炭のマージンは27.51ユーロ/MWh 前後(今週 41.7%増)、Y1ガスのマージンは27.82ユーロ/MWh 前後(今週48.77%増)
    • エネルギー市場全体の価格上昇により、 メリットオーダーでガスが石炭をわずかに上回った。

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
ストライキの影響でフランスの発電量が9.6GW相当減少(montelnews.com):エンジー等の電力事業者が金曜に発表したところによると、年金改革を巡るストライキにより、フランスの発電量が9.6GW相当減少する可能性がある。その内訳をみると、水力発電で約6.5GW、原子力発電で約1.6GW、石炭・ガス火力発電で約1.6GW減少する見込み。全国労働組合はストライキ4月11日に、デモを4月6日に全国規模で決行することを呼びかけている。年金支給開始年齢を現在の62歳から64歳に引き上げる改革の撤回を政府に求める構えだ。EDFは争議が4月6日の21:00(CET)まで続く可能性を危惧している。原子力と再生可能エネルギーによる発電量が減少すれば、炭素集約的な発電量が増加するため、結果的にEUAの需要は高まる。

イギリスで炭素国境調整メカニズム(CBAM)を巡る12週間の協議がスタート イギリスで国境炭素税を巡る協議がはじまった。ネットゼロの達成に向けてカーボンリーケージのリスクを回避することが狙い。現在、カーボンリーケージ(炭素コストの安い国へ生産と排出を移転すること)の防止策として、EU ETSで実施されているメカニズムと類似した炭素国境調整メカニズム(CBAM)や最低製品基準、需要重視の政策等が提案されている。このCBAMによると、イギリス向けの炭素集約型製品を生産する際に排出される炭素について企業はそのコストを負担しなければならない。今後はネットゼロにともなう排出上限規制で排出枠が減少するため、イギリス政府はカーボンリーケージを防止すべく、最終的には現在の無償割当制度を廃止しなければならない。

ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報
GER(Global Emission Reduction)は今週横ばい。
GEO(Global Emission Offset)は 17.8%増。N-GEO(ネイチャーベースのGEO)は1.5%減。

ボランタリー炭素市場インテグリティ協議会が信頼性の高いコア炭素原則(CCPs)に向けたガイダンスを発表 IETAが主催したリスボンでの欧州気候サミット(ECS 2023)において先週、満を持してCCPsとその評価枠組が発表された。IC-VCMはこれにより、カーボンクレジット関連のプロジェクトについて、透明性・情報開示・社会的セーフガードの保証に向けて基準を設定する意向。最初の評価は今年の第3四半期に完了するが、VCMの質とインテグリティに関する新たな基準が設けられることにより、市場の発展の下地が整うことを市場関係者の多くは期待している。IC-VCMはプロジェクトに追加適用されるラベルも明らかにしている。その目的は、当該のクレジットについて、対応的調整、気候変動対応への貢献、あるいは国定の持続可能な開発目標(SDGs)への貢献の有無を明示することにある。

再生可能エネルギー市場に関する最新情報
第13週 AIB再生可能エネルギー(本年):

仲値=7.20ユーロ(0.5050 ユーロ減/6.55%減)

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:21.00~23.00ポンド、売却目安:32.00~34.00ポンド

UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP23:8.15~8.35ポンド; CP24:7.15~7.30ポンド;CP25:6.70~6.90ポンド

イギリスのPPA市場が発電事業者の支配下に 最近のモンテルの報告によると、イギリスのPPA市場において企業間で需要が急増している。買電契約を提供する発電事業者が減る中、最近の卸売電力価格のボラティリティに備えようとする組織は増えている。そのため、PPA市場は売り手市場となっており、契約交渉では発電者側が優位に立っている。供給逼迫の一因は計画認可申請を遅らせている官僚業務にあり、結果的に企業に供給される電力が制限されている。しかし、電力価格の下落にともない、売り手側の支配は頭打ちになることが予想されている。ガス・石炭火力発電による電力の価格が再び下落すれば、持続可能性の義務化で購買意欲を維持しようとしても、風力・太陽光発電に対するインセンティブは企業間で低下するため、PPA需要も低下するだろう。
 




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