温暖な天候と需要衰退で売り圧力高まる

  • EUAの終値は前週比4.5%減(4.25 ユーロ減)の89.86ユーロ;テクニカルなサポートレベルが下がり、週の大半を弱気が支配したことで取引レンジは7.22ユーロに拡大(前週は5.40ユーロ)。「Fit for 55」の承認を受けた強気センチメントはすぐに弱気に転じた。
  • EUAの日中ボラティリティはやや高まり、平均取引レンジはセッション当たり2.98ユーロに拡大(前週は2.77ユーロ)。
  • エネルギーミックスに変化。ガスと電力は減少したが、石炭は3%増。ヨーロッパの一部は一時的に寒くなり、気温は例年を最大で5℃下回る模様。太陽光・風力発電量は平均以下。;ストライキが続く中、原子力発電量の2023年目標値は下方修正されないことをEDFが発表(全国規模のストライキを5月1日に決行することを労組が請)。
  • ガスの貯蔵量は1%増の57%。EUのLNG貯蔵量も5%増の64%。引き続き大量のガスがヨーロッパに供給される中でアメリカ産LNGの輸入量は過去最高レベル。アジアの需要は低迷。EUのLNG価格は過去22ヵ月の最安値。
  • 「Fit for 55」政策パッケージを欧州議会が承認(「その他のニュース」を参照)。
  • マクロ:EUのインフレ率は5.8%で不変。;米国のGDPデータは木曜、EUのGDPデータは金曜に発表の予定。; 米国とEUの金利はいずれも5月の第1週に決定される見通し。
  • テクニカルなサポートレベルは89.25ユーロ、88.35ユーロおよび87.56ユーロ以下。レジスタンスは90.71ユーロ、91.10 ユーロ、92.00ユーロ。

再び低調なオークションでUKAの売り圧力高まるRedshaw社の見通し:弱含み
  • UKAが急落し、63.25ポンドで引けた(10%超下落)。;取引レンジは約2倍に拡大して8.21ポンドに(前週は4.93ポンド)。週の最安値となる62.38ポンドでのオークションを受けて売り圧力が高まった。キーレベル:下落傾向では62.38ポンド、61.70ポンド、55.70ポンド。レジスタンスは67.40ユーロ、69.50ユーロ。
  • EUAに対するUKAの週平均スプレッドは3週連続で記録を更新する-16.72ユーロに(前週は-13.72ユーロ)。(チャートを参照)
  • イギリスのガス貯蔵量は3%減の62%。
  • 肌寒い週明け。気温は2℃まで下がったものの、週末には19℃まで上昇。
  • イギリスのインフレ率は予想を0.3%上回り、現在は前年比10.1%。

炭素投資家のポジションは不変
  • KFA Global Carbon ETFのEUA/UKA保有量は不変。EUAとUKAが急落したことでNAV(Net Asset Value:純資産総額)は3.7%減の6億3,000万米ドルに。

技術的な短期見通し:
  • Futurestechの次期レベル:週足チャートに再び陰線が出現。トレンドサポートは88.52ユーロと予想。
  • 推奨取引:確信があるなら90.36ユーロでの売りにはメリットあり。

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • 中核となるEU気候法を欧州議会が承認。;3月のイタリアの電力消費量が前年同月比5%減。

ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • GEOとN-GEOの価格はともに前週比減。;G7がネットゼロへの移行に向けた炭素市場の役割を強調。

再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • GO価格は3.5%減。;エンジーがベルギーで380MWの電力貯蔵施設を計画。;オランダが再生可能エネルギー発電を拡大。
技術的見通し―横ばい
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
  • 短期傾向:横ばい
  • 昨日(2023年4月22日)までの相場動向:昨日は下げ相場で93.33ユーロとなった後、92.00ユーロ前後の売りとなり、これが良いサポートになったものの、一部で逆取引が行われる前に94.18ユーロまで下落。しかし、92ユーロ超えとなるにはバイヤーの反応は今ひとつだったことから、まだ相場は下がるだろう。つまり、トレンドサポートへの復帰?今日のこのラインは88.52ユーロ。したがって、これが次の力強いサポート。そこに到達したら、あるいはそこに到達した時に何が起こるかに注目。
  • 推奨取引:双方向取引の余地あり。確信があるなら90.36ユーロでの売りにはメリットあり。
気温の上昇と再生可能エネルギー発電量の低下が相反してエネルギーコンプレックスは混沌
  • 右記の図(上)は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは 4.5%減。ドイツ電力は1.4%減。ARA石炭は3.3%増。TTFガスは 3%減。
  • 右記の図(中)は石炭とガスを燃料とする一年後の先物価格をもとにしたドイツの発電マージン。
    • Y1石炭のマージンは26.66/ユーロ/MWh 前後(今週4.4%減)、Y1ガスのマージンは20.78ユーロ/MWh 前後(今週11.61%増)。
    • 発電のメリットオーダーで引き続き石炭がガスより優位。

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
中核となるEU気候法を欧州議会が承認EU ETSに向けた法案を欧州議会が大筋で承認し、法令化に向けて一歩前進。この法案が可決されると、EU ETSの対象となる発電事業者と大量排出元はその排出量を2030年までに62%削減しなければならない。また、法案の修正にともない、炭素国境調整メカニズム(CBAM)が導入され、全航空機が同メカニズムの対象となり、さらには船舶による排出も今後規制されることになる。2027年には並行炭素市場も立ち上がり、自動車と建物暖房に使用する化石燃料も規制の対象となる。しかし、貧困世帯に過度な負担を強いるおそれがあることから、政治的反発が高まる可能性も指摘されている。欧州議会議員はこうしたシナリオを回避する構え。具体的には、総額867億ユーロの社会的気候変動基金を設け、貧困世帯に及ぶ物価高の影響を緩和すべく、各国政府を支援する計画。同基金の運営開始は2026年に予定されている。今回の欧州議会による承認を受け、欧州理事会がこれを批准すれば法律として施行される。

3月のイタリアの電力消費量が前年同月比5%減(montelnews.com): イタリアの送電事業者(TSO Terna)が確認したところによると、同国の3月の電力消費量は26.2TWh 。前年同月比で5%減少している。また、今年第1四半期の電力消費量は77.4TWh。これも前年同時期と比較して約4%減。最新のデータによると、クリーンエネルギーは現在、同国の発電ミックスの33.5%を占めている(2022年実績は28.4%)。再生可能エネルギー発電量が増加した結果、化石燃料の国内生産量は3月に18%、第1四半期に14%減少している(ともに2022年比)。

ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報
GER(Global Emission Reduction)は今週横ばい。
GEO(Global Emission Offset)は9%減。N-GEO(ネイチャーベースのGEO)は1%減。

G7がネットゼロへの移行に向けた炭素市場の役割を強調。 G7気候・エネルギー・環境大臣会合において炭素市場の継続的開発が共同声明として発表された。しかし、それが大幅な排出削減の手段に取って代わるものではない点も強調されている。また、環境的整合性を持ってカーボンクレジット市場を運営することを目的に「高品質炭素市場原則」も同時に発表された。最初に発表された原則は3ページから成る非常に簡素なもので、需要面・供給面・市場一貫性に関する高度な原則が盛り込まれている。声明では、パリ協定第6条を遵守する重要性に加え、その実施に向けた国家戦略の策定において主催国を支援することの必要性も強調されている。G7としては、「パリ協定第6条実施パートナーシップ」等のさまざまなイニシアチブによって国際調整を共同で推進する意向。  
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
第16週 AIB再生可能エネルギー(本年):

仲値= 7.31ユーロ(0.265ユーロ減/3.5%減)

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:23.00~24.00ポンド、売却目安:33.00~35.00ポンド

UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP23:8.30~8.60ポンド; CP24:9.75~10.25ポンド;CP25:9.75~10.25ポンド

エンジーがベルギーで380MWの電力貯蔵施設を計画 (montelnews.com): フランスの電気・ガス事業者エンジーのベルギー部門がベルギーでグリッドスケールの電池プロジェクトを計画している。その電力貯蔵総量は380MW。まず、同社がドロゲンボスで操業している唯一の電力貯蔵施設の容量を現在の6MWから80MWに拡大し、続いてカロ(100MW)とビルボールデ(200MW)で施設を新たに建設する。エンジーはすでに同プロジェクトを認可申請済み。認可されれば、建設自体は20~30ヵ月で完了し、2025年には操業を開始するとのこと。エンジーによると、現在のベルギーの電力貯蔵総量は150MWと推定されるが、このプロジェクトにより、同国のグリッドスケールの総量は3倍に拡大する。
 
北海での風力発電施設の建設でオランダが再生可能エネルギー発電を拡大 他のヨーロッパ諸国に後れを取ってきたオランダの電力インフラが北海での風力発電プロジェクトで大きく変わろうとしている。同国は再生可能エネルギー生産を大幅に拡大することで温室効果ガスの排出削減を目指す。オランダにおける再生可能エネルギーのシェアは2020年から2023年の間に11%から16%に増加している。同国で加速するエネルギー転換の背景には2030年の洋上風力発電量を21GWに拡大する政府目標がある。一方、オランダ中央統計局(CBS)のデータによると、2022年の同国の温室効果ガスの排出量は2021年比で9%減、1990年比で30%減少している。オランダは今回の計画により、「2030年までに55%削減」という目標を確実に達成しようとしている。
 




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