供給不足と祝日を背景に炭素価格が上昇

  • EUAの終値は、87.09ユーロ。前週比約4%上昇、取引レンジ5.55ユーロと縮小(前週は7.83ユーロ)。
  • EUAは、週初に軟調に推移した後、(1.50ユーロの狭い取引レンジではあるが)いくぶん回復した。その後、オークションの供給不足が支援材料となり、週明けに価格が上昇した。
  • 市場は、ETS改革に関する今後の本会議での採決を強く待ち望んでいる(6月6~9日)。最初の兆候では、排出枠とCBAMをめぐる分裂を示唆しており、CBAMと金融投機に対するより厳格なアプローチをめぐる分裂が予想される。
  • 報道によると、2030年の排出量削減率は63%とされている(「その他のコンプライアンス市場に関する最新情報」を参照)これはENVIの目標値である67%を下回るが、当初の「Fit for 55」での61%は上回っている。
  • 市場にとって重要な焦点は、炭素市場における金融投機にどの程度の抑制を設けることができるかである。
  • EUAの価格統制メカニズムも同様に注意深く監視される。
  • CBAM対象セクターの無償排出枠の廃止のタイミングと期限にも注目が集まる。WTOのコンプライアンスは依然として不明であり、輸出リベートの有無も明確でない。
  • 市場は、引き続きロシアやその他のガス供給を評価している。これまでの削減量は約200BCM(2021年の欧州ガス需要の約5%)に相当し、ガス貯蔵所の補充率は上昇している。しかし、東南アジアからのLNGは、(季節的な需要により)競争が激化 する見込み。
  • アジア、インド、北西ヨーロッパからの石炭需要は引き続き堅調。
  • スケジュールをチェック:Carbon Forward – 欧州最大の環境カンファレンスが、2022年10月12日~14日、ロンドンで開催。
今週はオークションなし - 見通し:強気

  • 6月1日のUKAの終値は、83.25ポンド。前週比約2.2%上昇、取引レンジは2.90ポンドと縮小(前週は3.22ポンド)。
  • UKA対EUAの週間平均プレミアムは12.64ユーロに縮小(先週は13.88ユーロ)(チャート2を参照)プレミアム合計は、現在7.19ユーロ。
  • 週明けは出来高が少なく、レンジ取引となった。その後上昇が見られたが、2日間の祝日を前にしたオークションの供給により、上昇の動きは弱まった。
  • 次回は、320万トン分のオークションが6月15日に行われる。
投資家の関心は引き続き薄れつつある

  • KFA Global Carbon ETF(投資家のための指標)EUAの保有量は約3%減の830万トン、UKAは62.2万トンで横ばい、NAVは約13億米ドル。
テクニカルな短期見通し - 強気

  • Futurestechs社による次目標:92.75ユーロ、88.64ユーロを見送った後は98.49ユーロ
  • 好ましい取引:ロングサイドに戻る。ディップ買い。
その他のコンプライアンスに関する最新情報

  • 緑の党(欧州)が、ロシアの化石燃料段階的廃止のためのEUA販売を批判。EU議員団、ETS改革の野心的な目標を撤回した。
ボランタリー炭素市場に関する最新情報

  • CET価格は前週比1%上昇。デジタル化されたモニタリングや報告、検証プラットフォームにより、ボランタリーカーボン市場に効率性を提供へ。
再生可能エネルギーに関する最新情報

  • EU GOs(原産地保証)は、約6%上昇し1.96ユーロに。超過利潤税とは何か、英国はそれをいつ使ったのか?G7諸国は、海外での化石燃料開発への資金提供を停止へ。
テクニカルな見通し - 強気

以下の分析は、受賞歴のあるClive Lambert 氏(Futurestechs社)によるものである。
  • 水曜日(2022年6月1日)は陽線、木曜日(6月2日)は十字線、金曜日(6月3日)は狭いレンジで僅かに陽線となった。本日は弱含みで開始し金曜日の85.99ユーロのテスト中。この結果はどうなるのか?強気の見通し。ディップ買い。
  • 好ましい取引:ロングサイドに戻る。ディップ買い。

石炭マージンは依然リード、ガスマージンは勢いを増している

  • チャート5は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭、TTF天然ガスの価格推移を示したものである。
    • 先週、Dec Y1 EUAは、約0.4%上昇。Y1ドイツ電力は、約0.7%上昇。Y1 ARA石炭は約0.3%上昇。TTFガスは約0.4%上昇。
  •  
  • チャート6は、石炭とガスを燃料とするドイツの発電燃料マージンである。
    • 石炭マージンは約88ユーロ/MWh(今週4%増)、ガスマージンは約45ユーロ/MWh(14%増)である。
    • 発電燃料としての石炭は、ガスよりも収益性が高い。


その他のコンプライアンス市場ニュース

EU議員団、ETS改革の野心を後退させる
6月6日から9日にかけての欧州議会本会議で、EUの議員団は2030年の排出量削減目標を63%にすることを推し進めるようである。これは、ENVIが支持する67%や当初の「Fit for 55」の61%と比べると大きな差である。EU ETSの報告者も兼任しているPeter Liese氏は、この問題は、政党間の意見の相違の大きなポイントになっていると述べた。S&D(社会民主進歩同盟)は、2024年に2億相当の一時的な削減(リベース)を行うことを要求している。欧州人民党(EPP)と欧州刷新(Renew Europe)は、2024年に8,000万、2026年に4,000万の削減案を求めている(EUがロシアのエネルギー依存に対する段階的廃止を行う際に、石炭の高燃焼を可能にするため)。また、当初提案された2024年に1億1,700万ドルの削減というものもある。採決後、欧州議会はEU理事会と交渉し、拘束力を持つ最終的な改革に合意する必要がある。

緑の党、ロシアの化石燃料段階的廃止のためのEUA売却を批判
ドイツの緑の党所属のMichael Bloss議員は、EUAの売却をし、200億ユーロ調達することは、価値破壊となる可能性があると述べた。さらに、この動きはEUAの価格と関連する加盟国の収益を下げることになると付け加えた。また、200億ユーロの支出計画にも異論を唱えた。100億ユーロはLNGやその他のパイプラインのインフラに、15~20億ユーロは、石油に代わる燃料供給の確保に充当される。オランダのMark Rutte首相も、この計画を批判している。同首相は、EUAの売却による資金が排出量の増加につながりかねず、ETSの信頼性を損なうと述べた。さらに、エネルギーの自立は気候変動対策と両立させる必要があると述べた。欧州議会は、夏休み明けにこれらのETS資金を利用した計画について議論を始める予定である。

ボランタリー炭素市場のニュース

今週はCET価格が1%上昇:CET(CORSIA Eligible Token)が、Air Carbon Exchangeで取引される

ACXネイチャーベース価格は前週比2%上昇。

DMRV(デジタル化されたモニタリングや報告、検証プラットフォーム)により、カーボンクレジットの発行と検証プロセスの効率化を実現

Verra、Gold StandardなどのカーボンクレジットスタンダードやSustainCERTなどの認証機関は、時間とコストの効率化を主な利点として挙げ、DMRVを市場に投入することに積極的に取り組んでいる。 SustainCERTは、100%手動のプロセスから80%デジタル化したプロセスへの移行を進めているカーボンクレジットの認証機関である。SustainCERTのCEOであるMarion Verles氏は、「手作業による検証では、一人の担当者が1年に100~150のプロジェクトを検証できるのに対し、DMRVでは一人が1日に10プロジェクトを検証できる」と主張している。
再生可能エネルギー市場に関するニュース

今年の第22週目AIB再生可能エネルギー:

仲値 = 1.96 ユーロ (+ 0.105 ユーロ)

超過利潤税とは何か、英国はそれをいつ使ったのか?
英国は最近、エネルギー料金の高騰に直面する消費者への150億ポンドの支援策の財源として、石油・ガス生産者に25%の超課税を課すと発表した。これまでにも、銀行セクター(1981年)、北海の油田・ガス田企業(1981年)、公益事業企業(1997年)に対して、このような一時的な課税が適用されたことがある。スペインは昨年9月、消費者の光熱費抑制を支援する緊急措置を導入した。イタリアも同様の案を導入している。

G7は、海外での化石燃料開発への資金提供を停止。
この合意は今年末に発効し、化石燃料からクリーンエネルギープロジェクトに約330億米ドルを移行が可能である。この決定は、英国、米国、カナダ、イタリア、フランス、ドイツ(主催国)、日本、各国のエネルギー・環境担当大臣によるサミットでなされた(日本は当初、COP26の前に提案されていた誓約案に反対していた)。この動きは、ロシアからのエネルギー供給廃止に向けた取り組みの高まりに触発されたものと思われる。現在進行中の化石燃料プロジェクトは、この規則の対象にはならない。英紙ガーディアンは、このプロジェクトには最大で200の「carbon bomb(炭素爆弾)」が含まれると想定している。また、この計画には、化石燃料プロジェクトに対する国内の公的セクターの融資も含まれていない。海外プロジェクトに対する過去のG7からの融資も、依然として障害となっている。 Verra、Gold StandardなどのカーボンクレジットスタンダードやSustainCERTなどの認証機関は、時間とコストの効率化を主な利点として挙げ、DMRVを市場に投入することに積極的に取り組んでいる。 SustainCERTは、100%手動のプロセスから80%デジタル化したプロセスへの移行を進めているカーボンクレジットの認証機関である。SustainCERTのCEOであるMarion Verles氏は、「手作業による検証では、一人の担当者が1年に100~150のプロジェクトを検証できるのに対し、DMRVでは一人が1日に10プロジェクトを検証できる」と主張している。



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