MSRのニュースやテクニカルブレイクでEUAがUKAを上回る

  • EUAの終値は83.98ユーロ、前週比約5%増。7.83ユーロ台の狭いレンジで取引された(前週は12.59ユーロ)。
  • EUAは、週初めは低迷したが、MSRからのEUAの売却が4年間にわたって均等に行われるというニュースを受けて、週半ばに回復した。その後、市場は81~82ユーロのレンジで推移し、81.90ユーロの抵抗線を突破すると、薄い出来高の中でさらに上昇した。来週のオークションの供給が減少すれば、価格をさらに下支えする可能性がある。
  • 市場は、6月6日から9日に行われるETS制度改革に関する本会議での採決を強く待ち望んでいる。主要な焦点は、ENVIが支持する67%排出削減目標が存続するかどうかになる。排出削減目標61%への回帰はEUAの重荷になる可能性がある。
  • ECは、ロシアのガス供給が停止した場合の危機管理計画を策定中であると発表した(「その他のコンプライアンス市場に関する最新情報」参照)。これには産業分野(最大の消費者であり、EUのガス需要の27%を占める、化学、窯業、食品、ガラス製品)への割り当ても含まれる。産業の生産が抑制されれば、EUAの需要の減少につながる。
  • ガス供給停止に対するさらなる防衛策として、ドイツは今後2年の冬に向け、30日から60日分の発電に必要な石炭備蓄を義務付ける法案が提出される予定である。石炭の消費量が増えれば(つまりCO2排出量が増えれば)、EUAの需要が高まることになる(「その他のコンプライアンス市場に関する最新情報」参照)。
  • スケジュールをチェック: Carbon Forward(カーボンフォワード) – 欧州最大の環境会議が2022年10月12日~14日、ロンドンで開催決定。
今週のオークションと祝日 - Redshaw社の見通し:中立

  • UKAは82.00ポンドで取引を終了、前週とほぼ変わらず。3.22ポンドの狭いレンジで取引された(前週は5.89ポンド)。
  • UKAとEUAの週間平均プレミアムの差は13.38ユーロに拡大(先週は12.97ユーロ)(チャート2を参照)。プレミアム合計は7.13ユーロとなった。
  • UKAも軟調なスタートとなったが、対照的に週半ばは取引が停滞し、価格も落ち着いた。EUAのオークションがなかったため、両市場とも上昇に転じ、若干の回復がみられた。英国では、ガス不足と冬の停電のリスクの高まりにより、石炭と原子力発電所の閉鎖が延期される可能性がある。
投資家の関心が再び低下

  • KFA Global Carbon ETF(投資家のための指標)EUAの保有量は約1%減の850万トン、UKAは約2%減の62.2万トン、NAVは約13億米ドル。
テクニカルな短期見通し - 強気

  • Futurestechs社の次目標:92.75ユーロ(86.78ユーロと88.00ユーロを超えた)
  • 好ましい取引:ロングに戻る。ディップ買い。
その他のコンプライアンスに関する最新情報

  • 欧州はロシアのガス供給が停止した場合の危機管理計画を策定。ドイツの石炭備蓄の義務付けが、需要を支える可能性がある。
ボランタリー炭素市場に関する最新情報

  • CET価格は、前週比4%の下落。Net Zero Marketsが、6月17日にACXとNodal ExchangeにてGER契約を開始すると発表。
再生可能エネルギーに関する最新情報

  • EUのGO、約2%増の1.8550ユーロ。EUがエネルギー多様化タスクフォース(energy diversification taskforce)を設立。世界の自然エネルギー市場はサプライチェーンの逼迫に直面。
テクニカルな見通し - 強気

以下の分析は、受賞歴のあるClive Lambert 氏(Futurestechs社)によるものである。
  • 短期的な傾向:強気
  • 昨日(2022年5月29日)のチャート:木曜日(5月26日)の上昇は、それまでのベアな考えを吹き飛ばすものであった。木曜日は、83.13ユーロの丸坊主で、陽線であった。金曜日(5月27日)は陰線だったが、ブルで継続する。
  • 好ましい取引:ロングに戻る。ディップ買い。

石炭マージンは依然として優勢、ガスマージンは引き続き回復傾向

  • チャート5は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭、TTF天然ガスの価格推移を示したものである。
    • 先週は、Dec Y1 EUAが約5%上昇、Y1 ドイツ電力が約4%上昇、Y1 ARA石炭は約14%下落したが、Y1 TTFガスは約5%上昇した。
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  • チャート6は、石炭とガスを燃料とするドイツの発電燃料マージンである。
    • Y1 石炭マージンは約85ユーロ/MWh(今週は26%増)、Y1 ガスマージンは約40ユーロ/MWh(22%増)である。
    • 発電用燃料としての石炭は、引き続きガスよりも収益性が高い。
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その他のコンプライアンス市場ニュース

欧州、ロシアのガス供給停止に対する緊急時対応策を策定
Gazprom社(露)は、ポーランド、ブルガリア、フィンランドへのガス供給を停止しており、欧州の広範囲にわたって更に供給が停止される可能性があるとの懸念がある。このリスクに備えるため、ECは米国とノルウェーからのガス供給を可能にする計画の概要を発表した。また、LNGの供給能力を高めることも意図している。ECは、夏までにエジプト、イスラエルとの二国間協定を締結と、アルジェリアとのエネルギー協議を再開する予定である。供給が停止された場合、ECは産業界へのガス供給を制限する一方で、食品、安全保障、健康・安全製品などの重要なサプライチェーンの保護を保証する。

ドイツの石炭備蓄の義務付けが需要を支える可能性がある。
ドイツは、2022年11月1日から2023年2月1日と、2023年11月1日から2024年2月1日の期間に適用される、30日または60日間フル稼働で発電できるレベルの石炭備蓄を事業者に義務づける法律の草案を提出している。この規制は、トン単位で具体的な在庫量の目標を定めてはいない。Argus社は、30日から60日間、100%フル稼働を維持するために必要な石炭の量を400~800万トンと見積もっている。ドイツには現在16GWの潜在的な発電設備がある。11月までにフル稼働が実現する場合、石炭生産量を約84%増やす必要がある。規制案では、供給を確保するため、石炭を発電所の敷地内に貯蔵しなければならないと定めている。しかし、10日以内の輸送が保証される場合は例外となる。この場合、一部の事業者はARAの港(アムステルダム、ロッテルダム、アントワープ)で石炭を保管することを選択する可能性がある。
ボランタリー炭素市場のニュース

今週はCET価格が4%下落:CET(CORSIA Eligible Token)がAirCarbon Exchangeで取引される(CORSIA規格に基づくVER)。

ACXのネイチャーベース価格は、前週比横ばい。
Net Zero Markets社は、ACXとNodal ExchangeでのGERが6月17日に発売されると発表
GER(Global Emission Reduction)は、1つの商品でボランタリーカーボン市場の大部分をカバーするハイブリッドオフセットで、バスケット方式とオフセット事業者のためのネットゼロへの段階的な道筋を備える。 GERは、オフセット事業者が使用する様々なカーボンクレジットのカテゴリーを4つのサブコントラクト(sub-contracts)で構成している。待望のGERの発売により、オフセット事業者にネットゼロへの移行が容易になる、ネ ットゼロに準拠した商品が提供されることになる。
再生可能エネルギー市場に関するニュース
今年の第21週目AIB再生可能エネルギー:
仲値= 1.8550 EUR (+ 0.0400 EUR)
EU、エネルギー多様化タスクフォースを設立
欧州委員会は、EU加盟国がエネルギー供給を多様化し、ロシアの化石燃料への依存度を減らすことを支援するタスクフォースを設置した。タスクフォースの役割は、「REPowerEU」戦略を実行することである。この戦略は、2030年までに年間250億〜500億m³のロシア産ガスを年間2,000万トンの再生可能な水素に置き換えることを提案している。「REPowerEU」に必要な1,130億ユーロの投資のうち、少なくとも4分の1が水素インフラに当てられることになった。水素製造の増加は、差金決済取引(CfD)などの政策的手段によって支援される。

世界の再生可能エネルギー市場は、サプライチェーンの逼迫に直面
中国からのサプライチェーンの遅れと、鉄鋼やその他の原材料の高騰が、再生可能エネルギーの設備拡張の進展を遅らせている。風力タービンブレード用の鉄鋼のコストは、パンデミック開始以来、少なくとも約50%程度上昇している。風力タービンブレードの納期は最大で1年長くなっている。また、中国における長期間のロックダウンは、ソーラーパネルの供給を妨げている。世界経済フォーラムは、(開発者が2022年に完成を予定している)メガソーラープロジェクトのうち最大56%が、サプライチェーンの問題により遅れる可能性があると推定している。再生可能エネルギー発電設備の早期導入が現実的に可能かどうかは、まだ明らかでではない。



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