市場全般の好調が排出枠価格を後押し。EUAとUKAがともに200日移動平均超え。強気筋には重要な週。

  • EUAの終値は前週比5.27ユーロ増(7.5%増)の75.78ユーロ。取引レンジは7.10ユーロに大幅拡大(前週は3.15ユーロ)。再生可能エネルギー予想量が下方修正されたことを受けて上昇傾向で週がスタート。月曜と火曜に高騰し、200日移動平均(MA)に加え、上昇を抑えていた75ユーロのレジスタンスを突破。水曜と木曜にさらに上昇し、週最高値の78.10ユーロに達したが、ここで売り意欲が強まり、日中最高値を下回る結果となった。金曜には下方圧力を受け、200日移動平均割れ。しかし、その後の買い戻しにより、最終的には200日移動平均と75.50ユーロのサポートレベルを上回って引けた。
  • 日中平均ボラティリティは2.99ユーロに上昇(前週は2.44ユーロ)。
  • 天候:気温は上昇する見通し。風は弱め。
  • 天気:気温は平年をやや上回る見通し。週の一部で風力発電量は低下するものの、太陽光発電量は最大に達する見込み。
  • ガス貯蔵量は1%増の68%(先週は67%)。LNG貯蔵量も51%に増加(先週は49%)。
  • 取引ポジションデータ:投資ファンドがネットショートポジションを積み増し;6週連続の削減。ネットショートポジションは-1,400万トンに増加(前週は-1,170万トン)。5月17日取引終了時点のデータ。
  • 次のテクニカルサポートレベルは75.75ユーロ、75ユーロ、73.85ユーロ、73.26ユーロ。注目すべき重要なレジスタンスレベルは76.56ユーロ、78.09ユーロ、81.25ユーロ。

隔週オークションと風力発電量の増加で価格に下方圧力;投機家の買い意欲と200日移動平均が反発の鍵Redshaw社の見通し:横ばい
  • UKAは強い上げ基調。前週比12ポンド増(15.3%増)の46.11ポンドで引けた。週明けに200日移動平均を突破し、月曜に2.63ポンド増(6.6%増)の42.62ポンドに到達。その後数日は狭い値幅での取引となったものの、風力発電量の低下がUKA価格をに押し上げた。その結果、週前半の上昇がさらに加速し、前週比15%増を記録。
  • 日中ボラティリティは1.76ポンドに上昇(前週は1.16ポンド)。取引レンジは6.31ポンドに大幅拡大(前週は3.10ポンド)。
  • イギリスのガス貯蔵量は不変(42%)。今週の気温は平年をやや上回る模様。再生可能エネルギー発電量も同様。
  • 先週のUKA価格の好調を受け、EUAに対するUKAの週平均スプレッドは前週から3.9%縮小;前週の-25.07ユーロに対し、先週は-24.09ユーロ。
  • 次の重要なサポートレベルは44.75ポンド、43.60ポンド、40.27ンド、39.90~40.00ポンド。一方、レジスタンスレベルは48.00ポンドと49.15ポンド。

Carbon ETFの排出枠ポジションは不変。
  • KFA Global Carbon ETFの保有量は不変。NAV(Net Asset Value:純資産総額)は5.2%増。
EUAのテクニカルな短期見通し
  • 昨日は陽線が出現。今日は78.10ユーロを望む状況でスタート。
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • 欧州セメント協会が生産に伴う排出を37%削減する意向;UK ETSが廃棄物部門に対してスコープの拡大を検討
ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • AO500クレジット価格がさらに7%上昇;大手テクノロジー企業が2030年までに2,000万トン相当のネイチャーベースの炭素除去クレジットを購入することを確約
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • GO価格がわずかに回復;リカレント・エナジーが太陽光発電とBESSの拡大に向けてEUで最大13億ユーロを投資;ボレアリスとブルゲンラント・エナジーがPPA10年契約を締結
技術的見通し
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
  • 短期傾向:強含み
  • 中期傾向:横ばいから強含み
  • 昨日(2024年5月27日)までの相場動向先週、以前からの目標であった78.10ユーロが突破されたことで売り手が出現。木曜と金曜は十字線。しかし金曜には押し目買いの目安となる長い下影線が出現。そして昨日は陽線が出現。今日は78.10ユーロを望む状況でスタート。次の目標は81.25ユーロ。強気筋に追従。
  • 概要/考察フィボナッチ・リトレースメントで78.09ユーロと特定されたレジスタンスレベルに達したことで売りが再び発生。
  • 推奨取引:押し目買い
エネルギー・コンプレックスは変動し、発電のスプレッドはほぼ不変。

  • 右記の図(上)は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは7.5%増。ドイツ電力は6.4%増。ARA石炭は5.7%増。TTFガスは5.7%増。
  • 右記の図(下)はドイツにおける発電のマージンの今後1年間の予想推移(燃料源は石炭とガス)。
    • Y1石炭のマージン(効率42%)は-2.50ユーロ/MWh 前後、Y1ガスのマージン(効率59%)は8.27ユーロ/MWh 前後
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報

欧州セメント協会が生産に伴う排出を37%削減する意向:欧州セメント協会(CEMBUREAU)が改定したネットゼロ・ロードマップによると、同協会は2030年までにセメント生産によるCO2の排出を37%、バリューチェーンにともなうCO2の排出を50%削減する意向。これは2020年5月に発表されたカーボンニュートラル・ロードマップの削減目標を7%上回っている。さらに、2040年までにセメント生産によるCO2の排出を78%、バリューチェーンにともなうCO2の排出を93%削減することを目指している。そして最終的に2050年までにヨーロッパのセメント産業においてネットゼロ、バリューチェーンにおいてカーボンネガティブを達成する構えだ。

また、こうした目標の達成に必須の重要な政策手段として、炭素国境調整メカニズム(CBAM)の施行、脱炭素投資の拡大、脱炭素エネルギー・インフラ・原材料の確保、低炭素・循環型製品の市場開拓を挙げている。

UK ETSが廃棄物部門に対してスコープの拡大を検討:英国エネルギー安全保障ネットゼロ省が先週の木曜、廃棄物部門による焼却とエネルギー生産にUK ETSを適用すべく、協議を開いて意見を募った。

具体的には2028年の適用に向けた計画が協議された。2年の段階的導入期間が2026年に始まり、この期間に排出量の監視・報告・検証が義務付けられる。また、脱炭素技術の採用に向けたインセンティブ等、同部門を対象に他の脱炭素手法も検討される。

協議は2024年7月18日まで行われる予定。
ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報

大手テクノロジー企業が2030年までに2,000万トン相当のネイチャーベースの炭素除去クレジットを購入することを確約:グーグル・メタ・マイクロソフト・セールスフォースが「Symbiosis Coalition」(炭素除去連合)の結成を発表した。これはボランタリー炭素市場で取引されるネイチャーベースの炭素除去クレジットを対象とした事前買取制度(AMC)。同連合で2030年までに2,000万トン相当のクレジットを購入する。

さらに、長期のオフテイク契約の締結を推し進める意向。世界の気候目標の支援、財務の透明性の実証、生物多様性の増進、先住民および地域社会の公正な関与と便益につながるプロジェクトが対象となる。

プロジェクトの選定に際しては、追加性に関する柔軟なベースラインや炭素リーケージへの確固たる対策、耐久性のある長期的活動の方向性の有無が問われる。4社はそれぞれの削減公約に加え、共同の提案依頼(RFP)にもとづく削減公約の達成に向け、同クレジットを購入することができる。最初のRFPは主に植林・森林再生・緑化(ARR)プロジェクトを対象としている。
 
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
本年第21週AIB再生可能エネルギー:

2024年AIB GO仲値=0.95ユーロ(23%増)

風力発電量の低下でAIB GOが前週の安値から回復。さらに、最新の予報によると、今週も中央ヨーロッパ全体で風は弱め。しかし、風力発電量が低下しても、最大量に達しつつある安定した太陽光発電が大半を補填する見通し。

一方、ヨーロッパ全土の気温は平年を1~3℃上回っており、週後半に猛暑となれば、冷房需要の増加で直近の電力価格が上昇する可能性もある。

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:14.50~16.50ポンド、売却目安:17.00~19.00ポンド

UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP22: 15.75~16.00ポンド; CP23: 8.80~9.10ポンド

リカレントが太陽光発電とBESSの拡大に向けてEUで最大13億ユーロを投資: カナディアン・ソーラーの子会社であるリカレント・エナジーが13億ユーロのフレキシブル•クレジットライン(FCL)を獲得し、ヨーロッパの複数国で太陽光発電とバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)のプロジェクト開発を支援する。

リカレント・エナジーは木曜に10の銀行との融資契約を発表した。6億7,400万ユーロでスタートするクレジットラインを将来的には13億ユーロまで拡大する予定。有効期間は3年で延長も可能。ファンドはユーロまたはポンドで引き出せる。契約先の銀行はBanco Santander CIB、ING、HSBC等。

卸売電力市場または長期契約(PPA等)を対象とするプロジェクトの双方にクレジットラインが提供される。具体的にはスペイン・イタリア・イギリス・オランダ・フランス・ドイツで太陽光発電とBESSのプロジェクト開発を支援する。

その第一段階として、主にスペインとイギリス全土で合計1GW近い太陽光発電容量を確保する計画。

ボレアリスとブルゲンラント・エナジーがPPA10年契約を締結: オーストリアの石油化学企業ボレアリスがニッケルスドルフの風力・太陽光発電施設から電力を調達する。同施設を操業しているのはブルゲンラント・エナジーの子会社。

10年の買電契約(PPA)を締結した両社は年間を通して約70GWhの電力を取引する。これはボレアリスが地元で消費する電力量の55%強に相当する。

契約にもとづいて生産される電力は2026年1月からボレアリスのシュウェハト工場に供給される。



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