EUAの上昇基調続くも投機的ネットショートポジションが縮小してスクイーズの可能性は低下;UKAは8週連続で横ばいイギリスとヨーロッパの大半で春の訪れ

  • EUAの終値は前週比87セント増の59.38ユーロ。取引レンジは5.23ユーロに縮小(前週は9.38ユーロ)。弱気のモメンタムで週がスタートし、月曜に4.1%減。その後、価格は上下に変動。水曜に週最安値の55.87ユーロまで下落したが、木曜に強く反発し、58.80ユーロまで回復。そのまま強気のモメンタムは金曜も持続し、水曜の下落を相殺。最終的に1.5%増で引けた。
  • 日中平均ボラティリティは3.99ユーロから2.66ユーロに低下。
  • 天候:気温は引き続き平年以上。
  • ガスとLNGの貯蔵量はともに微減;ヨーロッパのガス貯蔵量は60%のレベル(先週は61%)、LNG貯蔵量は52%に減少(先週は53%)。全体的に貯蔵量は平年をかなり上回るレベル。
  • 取引ポジションのデータ:投資ファンドのネットショートポジションは350万トン減少(先週の-3,680万トンに対して今週は-3,340万トン)。グロスショートポジションは-6,800万トン。
  • EUAの追加オークションは水曜に開催。供給量は906,000トン。
  • 次のテクニカルなサポートレベルは58.27ユーロ、57.15ユーロ、56.16ユーロ。注目すべきレジスタンスレベルは60.38ユーロ、61.37ユーロ、62.49ユーロ。

ファンダメンタルズ不変でUKAは8週連続横ばい - 隔週オークションが近々開催Redshaw社の見通し:横ばい
  • UKAの終値は2.55ポンド増(7.3%増)の37.70ポンド。火曜午後に市場が動き始め、同日の取引終盤に36.65ポンドまで上昇。さらに木曜に強気が支配し、一時は直近の値幅を超える37.95ユーロまで上昇したが、その後売り意欲が高まり、直近の値幅の上限を下回る価格で引けた。金曜は再び横ばいとなり、最終的には直近の値幅の上限である37.70ユーロで取引終了。
  • 日中ボラティリティは1.25ポンドに低下(前週は1.57ポンド)、取引レンジは3.80ポンドに拡大(前週は3.26ポンド)。
  • イギリスのガス貯蔵量は再び微減。現在は容量の35%のレベル(先週は37%)。一方、気温は平年を上回る見込み。
  • EUAに対するUKAの週平均スプレッドはUKAの高騰を受けて-14.30ユーロに縮小(先週は-17.23ユーロ)。
  • 直近のテクニカルレベルは引き続き33.01~37.75ポンドの範囲。レジスタンスレベルは37.75ポンド、38ポンド、40ポンド。

Carbon ETFsのポジションが急減
  • KFA Global Carbon ETFのEUA保有量は12%減、UKA保有量も6%減。NAV(Net Asset Value:純資産総額)は6%減の2億9.500万ドル
EUAのテクニカルな短期見通し
  • 要約/推奨取引:先週の木曜は強気筋には絶好の日となった。ロングとショート、双方の余地あり。肝心なのは忍耐。
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • イギリス政府がガス火力発電所の新設を検討;排出集約型産業のグリーン転換に向けてドイツで10億ドル規模の補助金オークションが開催
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  • クレジット価格がわずかに上昇;グーグルが今後12ヵ月で3,500万ドル相当の炭素除去クレジットを購入することを発表
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • GO価格は引き続き下落;独エネルギー規制当局が1.8 GWの陸上風力発電の建設を承認
技術的見通し
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
  • 短期傾向:横ばい
  • 中期傾向:弱含み
  • 昨日(2024年3月17日)までの相場動向:57.25ユーロまで上昇して大きな陽線が出現。丸坊主のローソク足パターンによると、57.37ユーロが重要なサポートレベル。これがサポートレベルである内は強気の見通しを信用していいかもしれない。金曜に小さな陽線が出現するも、57.83ユーロと57.37ユーロの強固なサポートレベルは崩れず。これは62.60~62.80ユーロの強固なレジスタンスレベルに見直しの余地があることを示唆している。したがって、今週は若干強気の展開。
  • 推奨取引:先入観を持たないこと。ロングとショート、双方の余地あり。肝心なのは忍耐。
エネルギー・炭素市場がショートカバー、グリーン電力量の増減、紅海航路の迂回、アジアでのLNG需要の増加を背景に引き続き調整局面

  • 右記の図(上)は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは1.5%増。ドイツ電力は1.9%増。ARA石炭は0.3%増。TTFガスは0.9%増。
  • 右記の図(下)はドイツにおける発電のマージンの今後1年間の予想推移(燃料源は石炭とガス)。
    • ○ Y1石炭のマージン(効率42%)は-4.96ユーロ/MWh 前後、Y1ガスのマージン(効率59%)は7.17ユーロ/MWh 前後。
    • 石炭価格の上昇でCDSが低迷する一方でCCSはさらに発展
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イギリス政府がガス火力発電所の新設を検討:イギリス政府による第2回の電力市場レビュー(REMA)によると、ガス火力発電所新設の可能性が浮上している。同レビューでは、ガス火力発電容量を一定規模確保することにより、エネルギーシステムの安全性と信頼性を高め、停電のリスクを低減する必要性が強調されている。さらに、ガス火力発電を対象とした現行の規制を強化し、新設の際はネットゼロへの対応または水素燃料への将来的な転換を義務付ける政府の意向も説明されている。結果的にイギリス政府はガス火力発電所の新設を2030年に向けて許可したことになる。これは「2035年までにネットゼロを達成」するとした当初の公約と整合していない。こうしたガス火力発電の拡大の背景にはエネルギーの安全保障を目指す政府方針がある。特にロシアによるウクライナ侵攻後はガス価格が前例のないほど高騰し、これが過去最大の生活危機をもたらした。スナク首相は今回のレビューを支持しており、デイリー・テレグラフ紙の記事によると、再生可能エネルギー源(風力・太陽光等)を確実かつ安価にバックアップすべく、「ガス火力発電所の新設は必須」と訴えている。なお、新設の時期と立地に関する詳細は明らかにされていない。

排出集約型産業のグリーン転換に向けてドイツで10億ドル規模の補助金オークションが開催:ドイツで総額40億ユーロの「気候契約」基金の第1回入札が実施される。このプログラムにより、双方向の差額契約にもとづき、EU ETSの対象となる排出集約型産業の大規模なグリーン転換プロジェクトを対象に15年に渡って現金による助成金が毎年支給される。

具体的には、クリーンな工程と従来の化石燃料による工程との差額コストをオフセットすることにより、排出抑制が困難な部門(製紙・製鉄・化学・セメント産業等)のグリーン転換コストの低減を図る。これにより、2045年までに約3億5,000万トンのCO2の排出が削減される見込み。ただし、このプログラムの適用を受けるためには、ETSのベンチマークにもとづき、排出を3年間で60%、15年間で90%削減しなければならない。
ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報

グーグルが今後12ヵ月で3,500万ドル相当の炭素除去クレジットを購入することを発表:ビッグ・テックのグーグルが最低でも3,500万ドル相当の二酸化炭素除去(CDR)クレジットの購入に向け、今後12ヵ月を対象とした契約を締結した。

ちなみに米国エネルギー省(DOE)は昨年9月、CDRクレジット購入初期価格プログラムを発表している。資金総額は3,500万ドル。これをCDRクレジットの購入に充て、CDR部門における革新と技術開発を支援する。DOEはこのプログラムと並行して先週の金曜、ボランタリー二酸化炭素除去購入チャレンジも立ち上げており、前回の3,500万ドルのプログラムに続いてこれに参加することを企業に奨励している。このチャレンジはCDRクレジットのサプライヤーとバイヤーをつなぎ、同クレジットを購入する際のリーダーボードとなることが期待されている。グーグルは同チャレンジに参加する最初の企業。DOEの資金に匹敵する3,500万ドルを用意する。

 
 
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
本年第11週AIB再生可能エネルギー:

2024年AIB GO仲値=1.72ユーロ

期近のAIB GO価格は引き続き下落。先週さらに8%減。供給増とイタリアのオークションでの最低入札価格の引き下げにより、2024年のGO価格は直近2年半の最安値まで下落。1,380万トンの余剰を抱えるイタリアでの次回のGOオークションでは2023年の生産月に応じ、最低入札価格が0.15~1.05ユーロ/MWhに設定されている。アナリストは満期日に関わらず、水曜のオークション終了まで、価格に下方圧力が加わると見ている。2023年のGOを2024年に消化することを認めるイタリアでの規制変更も取引動向に大きく影響している。北欧地域を見ると、降雨・積雪量ともに豊富なことから、水力発電量は増加の見通し。そのため、供給過多により、水力発電事業者には厳しい市況となるだろう。

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:16.00~17.50ポンド、売却目安:18.00~20.00ポンド

UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP22:15ポンド; CP23:17ポンド; CP24:15ポンド; CP25:13ポンド

独エネルギー規制当局が1.8 GWの陸上風力発電の建設を承認: ドイツが同国の再生可能エネルギー関連の最新の入札において、1.8 GWの陸上風力発電の建設を承認した。支給される補助金は平均でMWh当たり73.40ユーロ。数年続いている陸上風力発電の入札不振が今回の補助金の大幅増額につながった。

入札結果を公表した独エネルギー規制当局の連邦ネットワーク庁によると、入札総量は2023年に過去最高の6,500 MW相当に達している。これは、各年の提供量が3,700 MWに満たなかった2018~2022年の水準の75%増に相当する。連邦ネットワーク庁のクラウス・ミュラー長官によると、ドイツは「正しい方向」に向かっているとのこと。ドイツは陸上風力発電容量を2030年までに61.2 GW増の115 GWとする大目標を掲げている。



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