EUAはガス価格の高騰で月曜に直近2ヶ月の最高値に達するも、その後は一定の値幅での取引;UKAもガス価格の高騰と投機買いで200日移動平均を突破

  • EUAの終値は前週比2.53ユーロ(3.6%)増の72.37ユーロ。取引レンジは4.67ユーロに拡大(前週は4.01ユーロ)。週の値動きの大半は月曜に集中。反転前に直近2ヵ月の最高値を記録(4.32%増)。ガス価格の高騰でEUAも急上昇し、ショートスクイーズが発生。週末にかけ、イランとイスラエルの全面衝突の懸念がこれに拍車をかけた。しかし、火曜に反転し、72.95~73.00ユーロのサポート割れ。その後は休日によるEU全体の休業が影響し、一定の値幅での低調な取引に終始した。
  • 日中平均ボラティリティは2.20ユーロに上昇(前週は2.00ユーロ)
  • 天気:気温は引き続き平年以上。晴天と弱風で太陽光・風力発電量は増加の見通し。
  • ガス貯蔵量は89%に微増(先週は87%)。LNG貯蔵量も54%に増加(先週は50%)
  • 取引ポジションのデータ:投資ファンドの正味ショートポジションが-1,490万トンに減少(先週は-1,900万トン)8月9日取引終了時点のデータ
  • 次のテクニカルなサポートレベルは71.69ユーロ、70.85ユーロ、70.21ユーロ注目すべきレジスタンスレベルは72.95~73.06ユーロ、73.81ユーロ、74.65ユーロ。
隔週オークションの再開と弱いファンダメンタルズが強気のテクニカルシグナルを相殺 Redshaw社の見通し:横ばい
  • UKAの終値は3.33ポンド(8.9%)増の40.88ポンド。強気筋が価格を押し上げ、5日間中、4日で上昇。ガス価格の高騰を受け、月曜に76ペンス増を記録。強気筋の勢いは週末まで持続し、木曜に200日移動平均を突破し、過去最高の3.5%増を記録。金曜に週最高値の41.21ポンドに到達。
  • 日中平均ボラティリティは1.15ポンドに低下(前週は1.37ポンド)。取引レンジは3.28ポンドに拡大(前週は2.39ポンド)。
  • イギリスのガス貯蔵量は容量の63%に増加(前週は60%)。
  • 隔週オークション再開。水曜に276万トン分を販売。
  • 気温は平年並み。再生可能エネルギー発電量は週の大半で増加の見通し。
  • 取引ポジションのデータ:投資ファンドの正味ロングポジションが再び増加して560万トンに(前週は520万トン)。8月9日取引終了時点のデータ
  • 先週のEUAとUKAの平均スプレッドは-25.95ユーロに拡大(前週は-25.41ユーロ);UKAがEUAの上昇に追いついたのは週末。
  • 次の重要なサポートレベルは40.12ポンド、39.74ポンド、38.81ポンド。一方、レジスタンスレベルは41.17ポンド、41.70 ポンド、42.71ポンド。

Carbon ETFの排出枠ポジションは不変
  • KFA Global Carbon ETFの保有量は微増。NAV(Net Asset Value:純資産総額)も1.7%増。
EUAのテクニカルな短期見通し
  • 200日単純移動平均超えはさらに困難に;引き続き押し目買いを推奨。
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • 2024年第1四半期のEUの排出量は4%減;供給不安が高まる中、北西ヨーロッパ(NWE)着LNG価格が上昇
ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • Verraが生態系回復と森林再生に由来するカーボンクレジットを対象にラベルを新規発行。
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • 低調な取引でGO価格は9%下落;スコットランドとイングランドを結ぶ34億ポンドの「電力スーパーハイウェイ」にゴーサイン;ポーランドで洋上風力発電開発に50億ユーロを融資
技術的見通し
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
  • 短期傾向:強含み
  • 中期傾向:横ばいから強含み
  • 昨日(8月11日)までの動向:水曜に小さな陽線が出現したことで、当面は強気を支持。週明けは弱含みだったものの、木曜に70.48ユーロまで下落して買いが発生。金曜に71.50ユーロとなったところでさらに買いが入り、短期ながらも強気のセンチメントが持続した。強気でOK。ただし「過度な強気」は禁物。
  • 大局的見解:71.95ユーロに達したことで強気
ガス・石炭の好調が電力価格の上昇を抑制するも発電のスプレッドへの影響は限定的

  • 右記の図(上)は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Y1(期近12月物)を見ると、先週、 EUAは3.6%増。ドイツ電力は2.5%増。ARA石炭は1.6%増。TTFガスは1.4%増。
  • 右記の図(下)はドイツにおける発電のマージンの今後1年間の予想推移(燃料源は石炭とガス)。
    • Y1石炭のマージン(効率42%)は-0.78ユーロ/MWh 前後(先週は-0.63ユーロ/MWh 前後)。Y1石炭のマージン(効率59%)は3.06ユーロ/MWh 前後(先週は2.37ユーロ/MWh 前後)。
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報

2024年第1四半期のEUの排出量は4%減:2024年第1四半期のEUの温室効果ガス排出量は推定8億9,400万トン(CO2換算)。これは昨年同時期の9億3,100万トンを4%下回る量。

EU統計局(Eurostat)が先週金曜に発表したところによると、この減少に最も貢献しているのは12.6%の削減を達成した電力・ガス供給部門。これに続くのが4.4%減の一般家庭部門、2.9%減の製造部門、0.9%減の輸送・貯蔵部門、0.6%減の農業・林業・漁業部門、0.2%減の建設部門となっている。EU20ヵ国中、最も削減量が多かったのはブルガリア(15.2%減)で、ドイツ(6.7%減)とベルギー(6%減)がこれに次いでいる。さらに注目すべき点として、同期間に削減を達成した12ヵ国でGDPが成長している。

供給不安が高まる中、北西ヨーロッパ(NWE)着LNG価格が上昇:ガスの供給不安が高まる中、この冬の北西ヨーロッパ(NWE)着LNG価格がここ数ヵ月の最高値に達している。NWE LNG(Spark)の2024年12月先物は8月15日、13.835ドル/MMBtuに上昇。2023年12月1日以来の最高値となった。ロシア国境に近いスジャでの最近の戦闘により、ガス市場全般で懸念が高まっている。スジャはロシアからウクライナに送られるガスの重要な中継地点。ガスのインフラが損傷すると、ヨーロッパ向けのガスの供給が1日当たり約4,000万立法メートル減少する。

また、中東情勢が緊迫化すれば、LNG価格はさらに上昇すると予想する市場関係者も増えている。8月19日時点のヨーロッパのガス貯蔵量は高いレベルにあるが(容量の89%)、冬が近づくにつれ、暖房需要の増加で貯蔵レベルが下がるため、供給が逼迫する恐れがある。

ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報

Verraが生態系回復と森林再生に由来するカーボンクレジットを対象にラベルを新規発行:Verraが生態系回復と森林再生プロジェクトに由来するカーボンクレジットを認定すべく、新規マーケットラベル「ABACUS」を発行する。対象となるのはVerraの認証炭素基準(VCS)プログラムとVCSに基づく新規植林・再植林・植生回復(ARR)手法(VM0047)の要件を満たすプロジェクト。このABACUSラベルは、ボランタリー炭素市場インテグリティ協議会(ICVCM)のコアカーボン原則(CCP)ラベル等、市場全体で実施されている既存のインテグリティ保証制度を補完する追加的措置とされている。

しかし、この新規ラベルの導入により、企業バイヤーに対して市場がより複雑化する可能性がある。
 
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
本年第33週AIB再生可能エネルギー:

2024年AIB GO仲値=0.90ユーロ(9%減)

ヨーロッパのグリーン電力証書価格(GO)は取引低調な週に9%下落。市場流動性の低さもあり、取引量も前月比で減少している。そのため、前週比の変動は引き続き著しい。

取引は休日中の低迷後に通常に復帰すると予想されるが、価格は今月末まで概ね横ばいの見通し。

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:7.00~7.50ポンド、売却目安:10.00~10.50ポンド

UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP23:8.20~9.00ポンド - CP24:7.25~8.00ポンド

スコットランドとイングランドを結ぶ34億ポンドの「電力スーパーハイウェイ」にゴーサイン: Ofgemが8月13日、スコットランドのアバディーンシャーとイングランドのヨークシャーを結ぶ総延長500kmの海底・地下ケーブルの建設に34億ポンドを投資することを承認した。これにより、ナショナル・グリッドとSSENトランスミッションの合弁会社であるEastern Green Link 2(EGL2)が2GWの送電ケーブルを建設する。建設は年内に始まり、完成予定は2029年。EGL2はネットワークの輻輳を緩和することにより、イギリス全土で再生可能エネルギーの流れを拡充する計画。同送電ケーブルが完成すると、洋上風力発電の余剰分が解放され、風力発電を抑制する必要性が低減される。現在は輻輳問題により、風力発電を大幅に制限することで系統の安定性を確保している。

ポーランドで洋上風力発電開発に50億ユーロを融資: ボーランドの国有資産省とポーランド開発銀行(BGK)が8月13日、バルト海での洋上風力発電所の建設に50億ユーロを共同融資することを発表した。資金はEUの復興基金から調達される。

この融資に欧州委員会の承認は不要。発電容量300MW以上のプロジェックトが対象となる。融資契約の締結期限は2026年8月31日。返済期限は最長で2053年に設定されている。

これにより、ポーランドはEU全体の再生可能エネルギー導入目標と歩調を合わせ、自身の2030年目標の達成に向けて一歩前進することになる。

具体的にはオーステッド・オーレン(ノースランド・パワーと提携)・PGE(国営エネルギー・グループ)等の企業が最大で5.9GW相当の風力発電容量を2030年までに開発する予定。



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