EUA価格のボラティリティが低下;UKA市場は引き続き一定値幅での取引、ファンダメンタルズは不変

  • EUAの終値は前週比0.24ユーロ減(0.3%減)の71.59ユーロ。取引レンジは5.92ユーロに縮小(前週は9.55ユーロ)。上昇傾向で週がスタート。その後、売り気配となり、重要な200日移動平均線のレジスタンス(約74.60ユーロ)超えはならず。火曜にも類似の上昇が見られたが、エネルギー市場の軟化で下げ相場に転じた週となった。水曜にも売りが続き、週最安値の69.58ユーロまで下落。しかし、ガス価格の反発とオークション量の不足が木曜と金曜の回復を後押し。木曜から金曜午前にかけてさらに上昇した結果、直近4ヵ月の最高値(75.50ユーロ)に到達した。しかし、金曜午後に大量に売られた結果、200日移動平均線を下回って下げ相場に転じ、強気の支配は続かなかった。
  • 日中平均ボラティリティは3.44ユーロに低下(前週は3.53ユーロ)
  • 天候:気温は引き続き平年並み。
  • ガス貯蔵量は65%に微増(先週は63%)。LNG貯蔵量は57%に微減(先週は58%)。
  • 追加で906,000トンが水曜にオークション。
  • 取引ポジションデータ:投資ファンドのネットショートポジションは 31%減の-1,270万トン(先週は-1,840万トン)。5月3日取引終了時点のデータ
  • テクニカルサポートレベルは71.27ユーロ、70.18ユーロ、69.50ユーロ。注目すべきレジスタンスレベルは72.44ユーロ、74.23ユーロ、75.50ユーロ。

直近の最高値の更新ならず。再生可能エネルギー発電量の低下が隔週オークションに大きく影響Redshaw社の見通し:横ばい
  • UKAの終値は1.25ポンド増(3.4%増)の38.40ポンド。火曜の緩やかな上昇傾向は水曜まで持続せず、2日間の取引における値動きはわずか。しかし、イングランド銀行がイギリス経済の回復を発表し、第1四半期の経済成長率が予想を上回ったことを受け、木曜と金曜に急騰。週高値の39.04ポンドに到達。しかし、市場全般が失速したことで金曜午後には直近の値幅に収まった。
  • 日中ボラティリティは1.29ポンドに低下(前週は1.38ポンド)。取引レンジは2.54ポンドに縮小(前週は3.69ポンド)。
  • 温暖な天気により、イギリスのガス貯蔵量は39%から40%に微増。今週の気温は先週より低いものの、引き続き平年を上回る模様。再生可能エネルギー発電量は平年のレベルを下回る見通し
  • EUAに対するUKAの週平均スプレッドは再び拡大:先週の-26.64ユーロに対し、今週は-28.31ユーロ。
  • 次の重要なサポートレベルは37.69ポンド、34.56ポンド、33.01ポンド。一方、レジスタンスレベルは38.80ポンド、39.91ポンド。

Carbon ETFの排出枠ポジションは不変。
  • KFA Global Carbon ETFのEUA保有量は不変。NAV(Net Asset Value:純資産総額)も3億2,400万ドルで不変。
EUAのテクニカルな短期見通し
  • 200日SMAが強気筋の懸念事項となっているものの、65.80ユーロのサポートレベルが維持される限り、望みあり。
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • 現在の化石燃料発電量がEUの電力需要に占める割合はわずか23%;イングランド銀行が政策金利を5.25%に据え置き
ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • カーボンクレジット価格は概ね横ばい;マイクロソフトが300万トン相当のCDRクレジットの購入を目的にオフテイク契約を締結;バイオ炭による炭素除去技術の更新に向けて Puro.earthが情報を収集
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • GO価格が再び急落;EnBWが2030年までに再生可能エネルギーと送電系統の拡充に400億ユーロを投資;ガスムとユミコアが35GWhの10年PPA契約を締結
技術的見通し
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
  • 短期傾向:強含み
  • 中期傾向:横ばいから強含み
  • 昨日(2024年5月12日)までの相場動向:買い圧力で価格が上昇しているが、200日移動平均という懸念事項あり(今日現在で74.38ユーロ)。直近の回復が今後も続くのであれば、今が売り時。金曜に75.50ユーロまで上昇。これは200日SMA超え!これを受け、売りが発生し、すぐに71.27ユーロまで下落。いやはや!チャンスを逃したか?期待を膨らませた強気筋にとっては大問題か…
  • 現時点での推奨取引:押し目買い-ただし、70.28ユーロが維持されている場合。
  • 移動平均:MACDの出番かもしれない。今は200日SMAが重要。
エネルギーコンプレックスはほぼ不変でも発電のスプレッドの改善はわずか

  • 右記の図(上)は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、EUAは0.3%減。ドイツ電力は0.9%増。ARA石炭は0.7%増。TTFガスは0.6%増。
  • 右記の図(下)はドイツにおける発電のマージンの今後1年間の予想推移(燃料源は石炭とガス)。
    • Y1石炭のマージン(効率42%)は-2.05ユーロ/MWh 前後、Y1ガスのマージン(効率59%)は9.01ユーロ/MWh 前後。双方ともスプレッドの改善はわずか
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現在の化石燃料発電量がEUの電力需要に占める割合はわずか23%:。化石燃料発電量がEUの月間電力需要に占める割合がついに4分の1を下回った。

4月のEUのエネルギー需要に占める割合を見ると、再生可能エネルギーは54%。これに対し、ガスは12.1%、石炭は8.6%に過ぎない。同月の石炭火力発電量は過去最低、ガス火力発電量は昨年同月対比22%減。

この減少を牽引しているのはドイツとイタリアで、それぞれ4月に26%減、24%減となっている。因みにEUの化石燃料発電量の割合が過去最低だったのは2023年5月の27%。

EUAの最大の需要先は発電事業者であるため、増加を続ける再生可能エネルギー発電量がEUA価格を押し下げている。

イングランド銀行が政策金利を5.25%に据え置き:イングランド銀行(BoE)が政策金利を5.25%に据え置いた。2023年8月以来据え置かれている現在の政策金利は過去15年の最高水準に達している。

高金利は高インフレに対処するための政策であり、経済の引き締めを目的としているが、一方で投資と商品需要を抑制するため、産業の排出枠需要に影響する。

月間消費者物価指数(CPI)目標が連続で達成されていることから、投機家は早ければ6月の金利引き下げを予想しているが、大勢は9月と見ている。

ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報

マイクロソフトが300万トン相当のCRRクレジットの購入を目的にオフテイク契約を締結:マイクロソフトとブラジルのカーボンオフセット・デベロッパー「re.green」が300万トン相当のCO2除去(CDR)の取引に関するオフテイク契約を締結した。その由来はブラジルの森林再生プロジェクト。同契約によると、re.greenは今後15年間に渡り、マイクロソフトにカーボンクレジットを供給する。すでに16,000ヘクタールを超える土地で森林再生が進んでおり、マイクロソフト向けにre.greenは今後さらに3,000ヘクタールの土地を購入する。

マイクロソフトはすでにMombakと契約し、2032年までに合計で150万トン相当の植林・森林再生・再緑化(ARR)クレジットを購入する計画だが、ネイチャーベースの炭素除去クレジットのオフテイクでは今回の契約はこれに次ぐもの。

バイオ炭による炭素除去技術の更新に向けて Puro.earthが情報を収集:6月に3週間に渡って開かれる公開協議に先立ち、フィンランドの基準管理団体 Puro.earthがバイオ炭技法の変更に関する意見を募っている。

提案されている変更は欧州委員会のCRCFバイオ炭技法に沿った内容となっている。変更内容は2024年末までに発表される予定。

 
 
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
本年第19週AIB再生可能エネルギー:

2024年AIB GO仲値=0.94ユーロ(11%減)

ヨーロッパのGO価格が続落し、1ユーロ台に突入。供給の過剰に加え、先週の祝日で低下した産業活動と昨年から持ち越されている証明書が価格下落の要因。

一方、アナリストは今年後半に予想される反発を再三強調している。分析によると、EU指令が需要を喚起し、通年で7%増も期待できるとのこと。

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:14.50~16.50ポンド、売却目安:17.00~19.00ポンド

UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP22: 11.99~12.46ポンド; CP23: 9.00~9.15ポンド

EnBWが2030年までに再生可能エネルギーと送電系統の拡充に400億ユーロを投資: ドイツのエネルギー会社EnBWが総額400億ユーロの投資計画を発表。2030年に向けて再生可能エネルギーの生産と電力・ガスの供給容量を大幅に拡充する。

同社は発電所を水素対応とし、風力・太陽光発電量の不足時にこれをバックアップとして利用する意向を明らかにしている。

ガスムとユミコアが35GWhの10年PPA契約を締結: 先ごろの発表によると、ベルギーの材料製造会社ユミコアがフィンランドの国営エネルギー会社ガスムの陸上風力発電施設から今後10年に渡り、年間35GWhの再生可能電力を調達する。

ユミコアはこの再生可能電力をフィンランドにある同社のコッコラ工場で使用し、コバルトの精製とEV用電池の正極活物質前駆体の生産を行う。

今回のPPA契約は両社間の既存のPPA契約(45GWhを10年間)を延長したもの。



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