暑さが予想される中でエネルギー市場とともにEUA価格も上昇傾向;UKA価格追従するもオークションが抑制要因

  • EUAの終値は前週比2.02ユーロ(2.3%)増の89.57ユーロ。取引レンジは3.89ユーロに縮小(前週は8.45ユーロ)。週最安値の85.85ユーロで買い需要高まったことで週初めの下落が回復。火曜に89.19ユーロまで上昇した後は87.10~89.74(週最高値)の比較的狭い範囲で取引された。
  • 日中ボラティリティはセッション当たり2.85ユーロに低下(前週は平均で3.60ユーロ)。
  • ノルウェーのガス供給量;ニーハムナのガス施設の停止は7月15日まで。Nroneのガス施設は再開したものの、7月4日までは容量以下で供給。
  • フランスでこのまま暑さと干ばつが続いた場合、この夏の原子力発電の出力低下は最大で8.2GWとなる見込み。
  • 今週からEUAの改定オークションカレンダーが適用される中、リパワーEU計画による増加分が日々の販売量に加わり、7月の供給量が増加。
  • ガス貯蔵量は前週の比較的穏やかな天候で3%増加し、現在は容量の78%。EUのLNG貯蔵量は1%増の49%。
  • マクロ:米国市場が7月4日に休業することから市場ボラティリティは低下する見込み。米国の雇用データは金曜に発表の予定。
  • テクニカルサポートレベルは89.22ユーロ、88.82ユーロ、87.10ユーロ。レジスタンスは89.70ユーロ、90.57ユーロ、92ユーロ。

イギリス政府がETS市場改革を完了したことでUKAは長期的に上昇傾向Redshaw社の見通し:強含み
  • 狭いレンジに収まった先週のUKA価格は1.4%上昇し、終値は54.05ポンド。月曜と火曜の下落が週後半に回復し、週の取引レンジは3.50ポンドに(6.80ポンドであった前週のレンジの半分強)。日中ボラティリティも低下。1日の平均取引レンジは1.68ポンドに縮小(前週は3.60ポンド)。
  • イギリスのETS市場改革のニュースを受け、UKA価格が今朝、63.51ポンドに急騰。
  • EUAに対するUKAの週平均スプレッドは-26.59ユーロに(前週は-24.63ユーロ)(チャートを参照)。
  • 風の強い比較的穏やかな天気により、イギリスのエネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの割合は35.1%に上昇(ガスは30.3%)。ガスの貯蔵量は5%増で現在は容量の47%。
  • イギリスのETS市場改革ネットゼロに向けた排出枠の調整、産業向け排出枠の拡大、長期的市場管理、無償排出枠の変更、対象部門の拡大、GHG除去技術の取り入れ等(「コンプレックス市場に関するその他の最新情報」を参照)。
  • キーサポートレベルは51.50ポンドと50.73ポンド、レジスタンスレベルは57.25ポンド、58ポンド、63.51ポンド。

炭素投資家が引き続きそのポジションを削減
  • KFA Global Carbon ETFの保有量はEUAとUKAの双方において約 4.7%減;NAV(Net Asset Value:純資産総額)は3.9%減の5億4900万米ドル。

技術的な短期見通し:
  • Futurestechの次期レベル:取引低調のまま金曜に88.62ユーロまで急落。

  • コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • イギリス政府が審議を受け、ETS市場改革の最新案を発表。

  • ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • N-GEOが26%増;ボランタリー炭素市場の基準管理団体が企業向けのクレーム規範の最終版を発表

  • 再生可能エネルギー市場に関する最新情報
    • イタリアが再生可能エネルギー容量の目標を131GWに上方修正
    技術的見通し―横ばいから強含み
    以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
    • 短期傾向:横ばいから強含み
    • 昨日(2023年7月2日)までの相場動向金曜に陽線が出現。今回は89ユーロ台への回復が維持され、終値は同日の最高値をわずかに下回る89.61ユーロとなった。
    • 推奨取引:先入観を持たないこと。再びロングポジションを推奨。
    夏の終わりまでフランスの原子力発電所が停止する懸念からエネルギー価格が上昇;供給潤沢な中で石炭価格は過去2ヵ月の最高値に

    • 右記の図(上)は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
      • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは2.3%増。ドイツ電力は2.1%増。ARA石炭は7.5%増。TTFガスは2.1%増。
    • 右記の図(下)は石炭とガスを燃料とする一年後の先物価格をもとにしたドイツの発電マージン。
      • Y1石炭のマージンは27.60/ユーロ/MWh 前後(15%減)、Y1ガスのマージンは20.67ユーロ/MWh 前後(16.55%減)。
      • 発電のメリットオーダーで引き続き石炭がガスより優位。

    コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
    イギリス政府が審議を受け、ETS市場改革の最新案を発表イギリスのETS当局がETS市場改革の審議について政府の見解を発表。今回のETS市場改革の目的は「イギリスのETSの発展を図り、意欲的な目標に向けて排出を確実に削減し、引き続きイギリスがカーボンプライシングを主導していることを世界に知らしめる」ことにある。これを達成するための具体的措置としては、ネットゼロに向けた排出枠の調整(2024年開始予定)、段階的移行の実施、2024~2027年にオークションにかける排出枠の追加(5.350万トン相当)、排出枠供給量の急減の阻止、市場調整猶予期間の設定等が挙げられる。さらに、産業向け排出枠を全体量の40%とし、企業を引き続き支援するとともに、脱炭素化に向けた準備期間を設ける。これにともない、無償排出枠の上限を引き上げ、カーボンリーケージのリスクに直面する部門を引き続き支援し、将来の無償排出枠を適宜決定する。また、今後の市場の課題に対処すべく、2,950万トン相当(全体量の3%超)の排出枠を市場管理向けに確保し、市場のレジリエンスと柔軟性を改善する。さらに、より広範な調整と対象の拡大も予定されている。航空部門については無償排出枠を撤廃し、2026年に完全オークション制に移行する。一方、ETSの対象を拡大し、2026年に国内海運部門、2028年に廃棄物とその燃焼によるエネルギー生産部門を取り込む。また、上流の石油・ガス生産によるCO2の排出も対象に含めるとともに、さまざまなCO2輸送モード間で条件の公平化を図る。バイオマスの持続可能性については基準を設け、協議と適切な監視・報告・検証システムを前提に温室効果ガス除去(GGR)技術の導入を検討する。 これらの措置は、いずれも企業を支援し、最低限のコストでネットゼロ・炭素削減目標を達成することを目的としている。

    ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報
    GER(Global Emission Reduction)は前週横ばい。:
    GEO(Global Emission Offset)は2%増。N-GEO(ネイチャーベースのGEO)は 26%増。

    ボランタリー炭素市場インテグリティ・イニシアチブ(VCMI)が企業向けのクレーム規範の最終版を発表ボランタリー炭素市場の基準管理団体が発表した規範の目的は、信頼性の高い気候主張を行うためのルールブックを企業に提供することにある。当のVCMIはこの規範により、企業がネットゼロへの移行に向けてカーボンクレジットを利用する方法に対し、市場の信頼性が高まることを期待している。

    VCMI主張に必要とされる手順は以下のとおり。

    • 年間排出インベントリの更新を含め、「基礎的基準」を遵守する。
    • VCMIが承認するカーボンクレジットを購入・無効化する。この場合、無効化したクレジットの総量が主張レベルに相当する。
    • VCMI シルバー (20%以上60%未満)
    • VCMI ゴールド (60%以上100%未満)
    • VCMI プラチナ(100%以上)
    以上により、各企業は関連の情報を開示して自らの主張を裏付け、VCMIの枠組にもとづいてこれを立証・保証しなければならない。
     
    再生可能エネルギー市場に関する最新情報
    第26週 AIB再生可能エネルギー(本年):

    仲値=6.5375ユーロ(0.0875ユーロ増/1.36%増)

    UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
    購入目安:24.00~26.00ポンド、売却目安:30.50~32.50ポンド

    UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
    CP23:8.40ポンド、CP24:6.75~6.90ポンド、CP25:6.40ポンド

    イタリアが再生可能エネルギー容量の目標を131GWに上昇修正 : イタリアが更新した気候・エネルギー計画によると、同国は2030年までに再生可能エネルギーにより、131GWの発電を目指す。今回、欧州員会に提出された目標は以前の目標(80GW)を上方修正したもので、その拡大幅は現在の容量(58GW)を上回る。2030年に向けた同計画の概要によると、太陽光発電容量は22GWから79GWに拡大され、これに2.1GWの洋上風力発電容量が加わる。これにともない、風力発電の総容量も現行の11.2GWから28.1GWに拡大される。一方、水力発電容量は現行の19.2GWのまま。計画ではあらゆる技術を導入し、再生可能エネルギー発電の総出力を2030年までに現行の119TWhから228TWhにほぼ倍増させる。 この目標が達成された場合、イタリアは2030までにそのエネルギー総消費量の40%を再生可能エネルギーで賄うことになる。これは前回の計画の13%増。EUの気候変動対策パッケージ「Fit for 55」とリパワーEU計画の目標に沿ったものとなる。イタリア政府は気候変動対策とエネルギー安全保障の公約にもとづき、現実的かつ持続可能な移行の必要性を強調している。しかし、計画の目的は容量の拡大にとどまらない。蓄電容量の拡大に向けた投資とグリーン電力の売買を奨励する法整備も含まれている。ガスは今後も同国のエネルギーシステムシステムにおいて重要な役割を果たすものと予想されるが(特に再生可能エネルギー発電量が少ない時に電力需要が増加した場合)、計画では隣国との系統接続を強化し、系統自体を改善することにより、同国の南部と需要の中心地である北部との間でグリーン電力の融通を図る。



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