北欧のガス供給停止が7月中旬まで延期されたことで炭素・エネルギー市場にさらなる圧力

  • EUAの上昇傾向は続いており、終値は前週比6.7%増の91.92ユーロ。取引レンジも10.37ユーロに拡大(前週は9.29ユーロ)。月曜から水曜にかけて市場への一時的圧力が高まり、価格は8ユーロ上昇。しかし、週の最高値95.25ユーロから下落すると、木曜と金曜に買い手枯渇の最初の兆候が現れた。
  • EUAの日中ボラティリティがわずかに減少し、平均取引レンジはセッション当たり3.69ユーロに縮小(前週は3.78ユーロ)。
  • ノルウェーのニーハムナのガス施設における技術的問題が解決していないため、供給停止がさらに3週間延長され、7月15日までとなった。
  • 次週の中央ヨーロッパは暑くなることが予想されるため、冷房需要が増加する見通し(「コンプライアンス市場に関するその他の最新情報」を参照)。
  • ガス貯蔵が補充され、現在のレベルは前週比2%増の74%。EUのLNG貯蔵量は5%減の56%。価格が3月の水準から58%も反発したことでLNGの購入が減速する見通し。
  • マクロ:スイス中央銀行が木曜に金利引き上げへ;ヨーロッパの製造データは金曜に発表の予定イギリスのデータについては盛りだくさんの週
  • サポートレベルは91.40ユーロ、90.50ユーロ、89.75ユーロ。レジスタンスは93.20ユーロ、95.00ユーロ、96.47ユーロ。

UKA価格がエネルギー市場で急回復、EUA価格はテクニカルなブレイクアウトに続いて4日連続で上昇Redshaw社の見通し:強含み
  • UKA価格が上昇を始め、終値は前週比10.8%増の59.15ユーロとなった。4日連続で急騰した後、金曜に一部で利食い売りが広がった。取引レンジは約3倍増して8.19ポンド(前週は3.20ポンド)、日中ボラティリティも平均で2.38ポンドに拡大(前週は1.49ポンド)
  • EUAに対するUKAの週平均スプレッドは-23.97ユーロに(前週は-22.39ユーロ)(チャートを参照)。
  • 週を通して風が弱く、暑かったため、冷房需要が高まり、再生可能エネルギーがエネルギーミックスに占める割合はイギリス全体で23.7%に減少(ガスの割合は42.4%)。ガス貯蔵量は容量の41%で不変。
  • イギリスのデータ::水曜のイギリスのインフレ・データの発表を受け、木曜にイングランド銀行が金利を決定する予定。
  • キーサポートレベルは58.30ポンド、57.15ポンド、55.45ポンド、レジスタンスレベルは60.25ポンド、63.00ポンド、64.60ポンド。
炭素投資家のポジションは不変
  • KFA Global Carbon ETFの保有量はEUAとUKAの双方で不変。炭素価格が上昇する中、NAV(Net Asset Value:純資産総額)は5.9%増の6億700万米ドル。
技術的な短期見通し:
  • Futurestechの次期レベル:大きな圧力が発生中。最近のセッションでは取引量が回復している。
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • 4週連続の暑さと過去最高の太陽光発電量に備えるドイツ;6基の新設原子炉の稼働と太陽光発電の拡充を計画するフランス

ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • GEOとN-GEOの契約が引き続き回復傾向;カーボンクレジットのバイヤー向けの優遇税制がリオデジャネイロで法令化
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • 米国が非納税者向けのクリーンエネルギー補助金制度を発表;EU立法府が電池のグリーン化に向けた法律を承認
技術的見通し―強含み
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
  • 短期傾向:強含み
  • 昨日(2023年6月18日)までの相場動向木曜の十字線に続いて金曜に陰線が出現。終値が92.00を下回ったとしても、日足に長いひげがあったことは強気筋には好材料。そこで今週は強気筋を支持し、「強気意見」の基準として89.36と88.66を採用。
  • 推奨取引:押し目買い
ノルウェーのガス供給停止の継続でエネルギー・炭素価格に圧力、しかし、週末に北欧の雨模様が予想されたことで上昇傾向が減速
  • 右記の図(上)は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは6.7%増。ドイツ電力は4.3%増。ARA石炭は7%増。
  • 右記の図(下)は石炭とガスを燃料とする一年後の先物価格をもとにしたドイツの発電マージン。
    • Y1石炭のマージンは31.48ユーロ/MWh 前後(今週37.2%増)、Y1ガスのマージンは24.45ユーロ/MWh 前後(今週48.45%増)。
    • 発電のメリットオーダーで引き続き石炭がガスより優位。

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
4週連続の暑さと過去最高の太陽光発電量に備えるドイツドイツは向こう4週間暑くなる模様。これにより、冷房需要が増加する一方、太陽光発電量が過去最高に達する可能性がある。しかし、風力発電量は低迷し、雨はほとんど降らない見通し。予報によると、次週の気温は平均で例年を3℃上回るが、7月10日から始まる週には一段落し、例年と比較した上昇分はを0.9℃程度となる見込み。これにともない、冷房需要は過去40年の最高量に達する可能性がある。太陽光発電量は月曜と火曜に25~28GW、水曜に30GW超でピークに達し、その後は週末に向けて再び減少すると予想されている。風力発電量は週半ばまで2~9GWと非常に低いレベルで増減し、降水量も例年を下回り、次週は最も乾燥する見込み。

6基の新設原子炉の稼働と太陽光発電の拡充を計画するフランス公文書によると、フランス政府が新規計画の検討に入った。少なくとも6基の原子炉を新設し、現在100GWの太陽光発電容量を2050年までに140GWに拡充する。さらに、45GW相当の洋上風力発電に加え、少なくとも年間1.2GW相当の陸上風力発電を開発し、現行の計画にしたがい、2030年までに風力発電容量を30GWまで拡充する。原子力発電については、2030年目標を361TWhと定め、2050年までに8~14基のヨーロッパ型加圧水型炉の建設を目指す。また、既存の原子炉を50年を超えて稼働させることも検討している。新エネルギーのロードマップを巡る協議は7月中に終了し、法案の提出は9月になる予定。

ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報
GER(Global Emission Reduction)は前週8%減:
GEO(Global Emission Offset)は 17%増。N-GEO(ネイチャーベースのGEO)も21%増。

カーボンクレジットを購入する企業向けの優遇税制がリオデジャネイロで法令化リオデジャネイロのエドゥアルド・パエス市長がカーボンクレジットを購入する企業向けに総額で年間6,000万レアル(1,230万米ドル)の税還付を行う法律に署名した。世界の炭素市場を見ると、市レベルでは最大規模の財政的インセンティブになるが、これは暫定措置に過ぎず、2030年には終了する。リオデジャネイロ市政府は二酸化炭素排出を2024年までに5%、2030年までに20%削減する計画(ともに2017年比)。今回の優遇税制は国家または地方政府が実施するボランタリー炭素市場(VCM)関連の一連の措置では最新のもの。それぞれがその管轄内でカーボンクレジット関連のプロジェクトに関する法律を検討・施行することになっている。なお、ルーラ大統領はボルソナロ前大統領のプロポーザルを見直す意向であることから、より広範なVCM関連法令の方向性は見えていない。  
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
第24週 AIB再生可能エネルギー(本年):

仲値= 6.40ユーロ(0.2250ユーロ減/3.4%減)

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:24.00~26.00ポンド、売却目安:30.50~32.50ポンド

UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP23:8.40ポンド、CP24:6.75~6.90ポンド、CP25:6.40ポンド

米国が非納税者向けのクリーンエネルギー補助金制度を発表 バイデン大統領の気候変動関連法にともなう補助金の支給に関し、米国財務省が非営利組織・先住民族・地方政府を対象とした規定を発表した。インフレ抑制法(IRA)では、米国での脱炭素化の促進に向け、数十億ドル規模の税額控除が行われている。これらのインセンティブは今後、免税者にも適用され、税額控除に代わり、現金が支給される(direct pay)。 クリーンエネルギー担当のジョン・ポデスタ大統領上級顧問はこの措置を「ゲームチェンジャー」と歓迎している。IRAによる税額控除の対象は、再生可能エネルギー施設、クリーンカー、水素、二酸化炭素の回収・貯留、クリーンエネルギー機器の製造等に関するイニシアチブ。さらに、企業はクリーンエネルギーの税額控除分を第三者に譲渡できるため、プロジェクト開発者にとっては資本へのアクセスが容易となる。そのため、民間部門による投資の拡大が期待されている。今回の財務省による発表は、企業が気候変動関連法を最大限に活用するための包括的ガイドラインの一環。  
 
EU立法府が電池のグリーン化に向けた法律を承認 EU議会が電池の耐久性・持続可能性・性能を改善するための法律を承認。続いて欧州理事会がこれを正式に承認すれば、EUで販売されるすべての電池の設計・製造・廃棄物管理に同法律が適用される。電気自動車の普及により、ヨーロッパでの電池需要は急増することが予想されている。EUの推定によると、EU市民が乗る電気自動車は2030年には3,000万台に達する。今回の規制の目的は、リサイクル材料を使った排出の少ない「よりグリーンな電池」で需要を満たすことにある。また、軽車両(電動スクーター・電動自転車等)用電池や充電式工業用電池についてはカーボンフットプリントの公表と表示が義務付けられる。さらに、リサイクルを目的とした携帯用電池の回収に向け、EU各国には目標が課される。これらの措置は製品のライフサイクル全体を対象としているため、循環型経済の構築に向けた重要な一歩と考えられている。
 




会員登録・ログインでコメントの閲覧ができます。

法人様向けの有料プログラム

有料サービスに申し込む

コメント投稿や閲覧が可能

無料会員に登録する

既に会員のかた

ログインする