EUA週後半に回復するも値動きは引き続き値幅の範囲内 ; UKAは週半ばの下落から回復
  • EUAの終値は前週比1.5%増の69.10ユーロ。取引レンジは3.43ユーロとレンジ幅縮小(前週は4.49ユーロ)。
  • EUAは概ね低いレベルで推移するも、価格が64~70ユーロのレンジに収まったことにより、上昇場面で売り意欲が高まる。
  • 市場は三者会談とリパワーEU計画による資金調達の結果に期待。
  • EUの緊急ガス計画は10月25日に決定の予定。天然ガス取引を対象とした一時的な動的価格コリドー、オランダTTF価格を補完する新規LNG価格指数、需要を抑制するための共同ガス購入メカニズム等の導入が具体策。
  • 供給の停滞により、ヨーロッパへのLNGの供給が途絶え、転売も不可となるリスクが浮上。スペインの6カ所のターミナル(大半はヨーロッパ内)の備蓄はフル状態。35隻のLNGタンカーが沖合で待機中。過剰供給は11月まで続く見込み。
  • ドイツに残っている3つの原子力発電所が稼働を延長し、2023年1~4月に5 TWhを発電する予定。これにより、ガスの需要が低下し、電力不足がある程度解消される見込み。
  • 今後の比較的暖かい気温により、暖房需要は抑えられる見通し。

オークションと政治不安。市場展望:弱含み
  • UKAの終値は前週比1.3%減の70.08ポンド。取引レンジは3.30ポンドとレンジ幅縮小(前週は4.90ポンド)。 
  • UKAの対EUAの週間平均プレミアムは12.49ユーロに縮小(前週は15.11ユーロ)。現在の全体のプレミアムは9.61ユーロ(チャート2を参照)。
  • UKAが EU市場の不安定な展開を反映。低調なオークションで下落傾向に拍車がかかり、週末に向けての回復も不調に終わった。
  • 市場はイギリスの新首相の声明に期待。初回投票は10月25日の予定(遅くとも10月28日前)。経済政策による再度の保証が引き続き鍵。
  • イギリスのガス備蓄量に限りがあることが懸念材料。セントリカの天然ガス貯蔵施設「ラフ」において、37億立方メートルの貯蔵容量の25%までをこの冬に再使用することが許可された。しかし、技術的問題(圧入井の故障)は未解決のまま。ガス貯蔵の収益性の限界が投資を抑制している(「その他のニュース」を参照)。
  • 今週はオークション無し。次回は11月2日に330万トン。

投資家の関心は再び上向き
  • KFAグローバルカーボンETF(投資家の関心の指標)のEUA保有量は約4%減の580万トン、UKA保有量も約4%減の416,000トン。NAV(Net Asset Value:純資産総額)は約6億7,600万米ドル。

技術的な短期見通し:横ばいから弱含み
  • FuturesTechの次期レベル:弱含みの展望に向けては70ユーロが引き続き鍵。
  • 推奨される取引:戻り売り

コンプライアンス市場に関するその他のニュース
  • 乱高下するガス価格に対抗してEUが新たな緊急一括法案を提示。国内の貯蔵天然ガスに限りがあることから、イギリスでこの冬に停電が懸念されている。

ボランタリー炭素市場ニュース
  • GER(Global Emission Reduction)は前週比7%減。世界の炭素回収能力2030年までに6倍増の見込み。

再生可能エネルギーニュース
  • EUのGOは約4%増の5.27ユーロ。再生可能エネルギーの増加によるガスのコスト回避でEUが100億ユーロを節減。イギリスの収益上限規制で再生可能エネルギーへの投資がEUで加速。
テクニカルな見通し‐弱含み
Futurestechs Limited.の受賞アナリスト、クライブ・ランバートによる分析。
  • 短期傾向:横ばいから弱含み       
  • 昨日(2022年10月23日)までの相場動向:金曜は陽線となり、69.10ユーロで引けた。これは当社のチャートにある緩やかな下降傾向と矛盾したため、今日は68.79ユーロとなっているこの線が取引開始後どう展開するかに注目。ここで陽線となるか陰線となるか、上げ相場で取引は活発化するか、これを市場は受け入れるか?
  • 推奨される取引:戻り売り

石炭とガスのマージン、ともに縮小するも、引き続き石炭が有利。
  • 右図上はEUA、ドイツ電力、ARA石炭、TTF天然ガスの先物価格の推移。
    • 先週、Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは約+1%。ドイツ電力は約-8%、ARA石炭は約-3%、TTFガスは約-5%。
  • 右図下は石炭とガスを燃料とする一年後の先物価格をもとにしたドイツの発電マージン。
    • Y1石炭のマージンは228ユーロ/MWh前後(今週15%減)、Y1ガスのマージンは80ユーロ/MWh前後(今週26%減)。
  • 発電用燃料としての石炭は引き続きガスより収益性が高い。       

コンプライアンス市場に関するその他のニュース
乱高下するガス価格に対抗してEUが新たな緊急一括法案を提示 EU首脳がエネルギー価格を抑えるため、緊急一括法案を新たに提示した。具体的には、天然ガス取引を対象とした一時的な動的価格コリドーの導入、天然ガスの共同購入、天然ガス価格の新基準の設定等が提案されている。また、天然ガスの需要を抑制し、発電用天然ガスの価格を制限するメカニズムも検討されている(ポルトガルとスペインでは既に試行済み)。一方、ECが提案した緊急の上限価格規制により、オランダTTF価格の高騰が抑えられる見通しだが、その実施には特定の条件(未公表)の遵守が前提となる。なお、好条件を提示する他の国にガスが売られることを恐れ、ドイツは上限価格規制には消極的である。

貯蔵天然ガスの不足でこの冬イギリスで停電の可能性 イギリスの天然ガス貯蔵量は現在フル状態にあるが、これは同国の年間需要量の2%程度に過ぎない。一方、ヨーロッパの93%という水準は全体の年間需要量の20%以上に相当する。イギリスで最大の天然ガス貯蔵施設「ラフ」は収益の低下と施設の老朽化で2017年に閉鎖されたが、その37億立方メートルの貯蔵容量の25%までをこの冬に再使用することがセントリカに許可された。しかし、技術的問題が残る中、奨励金も不足しており、そもそもガス貯蔵自体が低収益事業となって久しい。このため、イギリス政府は事業者に対し、収益が基準を下回った場合は需要家が不足分を負担し、超えた場合は一定額を需要家に還元する「キャップ・アンド・フロア制度」の導入を検討している。
ボランタリー炭素市場ニュース
GER(Global Emission Reduction)は前週比7%減。
AirCarbon ExchangeのCET(CORSIA Eligible Token)は前週比13%減。GNT(Global Nature Token)は横ばい。

世界の炭素回収能力2030年までに6倍増の見込み 現在回収されているCO2の量は年間4,300万トン。これは全世界の排出量の0.1%に相当する。ブルームバーグNEF(BNEF)によると、世界の炭素回収能力は2030年までに6倍増し、年間2億7,900万トン(全世界の排出量の0.6%)が回収される見込み。しかし、2050年までにネットゼロを達成し、気温上昇を2℃以下に抑えるためには2030年時点で10~20億トンのCO2を回収しなければならない。 一方、米国のインフレ抑制法の一環として発表された税額控除の拡大等の政府支援の復活を考慮すると、これは控えめな予測だとBNEFは指摘している。すなわち、このインフレ抑制法により、エタノールや石油化学部門のプロジェクトに加え、ボランタリー市場での高度なカーボンオフセットを可能にする直接空気回収技術(DAC)関連のプロジェクトが奨励されるとBNEFは見ている。
再生可能エネルギーニュース
第42週 AIB再生可能エネルギー(本年):

仲値:5.2700ユーロ(0.1900ユーロ)

UK RGGO気配値:
作物:15.50~17.00ポンド、廃棄物:26.00~30.00ポンド(横ばい)

再生可能エネルギーの増加によるガスのコスト回避でEUが100億ユーロを節減 シンクタンクであるE3GとEmberの調査によると、今年3月から9月のEUのエネルギー需要に占めるクリーン電力の割合は約24%。6ヵ月間の実績としては過去最高となった。この期間の風力・太陽光発電容量の増加分だけで80億立方メートル相当(または110億ユーロ分)の天然ガスの輸入が回避されたことになる。また、同調査によると、EU27ヵ国の風力・太陽光発電の総設備容量は、今年3月から9月に輸入された700億立方メートル相当の天然ガスに匹敵する。なお、前年比約49%増となったポーランドを含め、19ヵ国で風力・太陽光発電容量が過去最高となり、再生可能電力が約21%減の水力発電と約19%減の原子力発電を部分的に補う形となった。両部門で発電容量が減少した原因は、ヨーロッパの広域で発生した干ばつによる河川と貯水池の水位の低下にある。

イギリスの収益上限規制で再生可能エネルギーへの投資がEUで加速 RWEの陸上再生可能エネルギー部門の責任者によると、低炭素発電事業者への収益上限規制の内容が不透明なことから、投資対象が今後イギリスからEUに移行する可能性がある。具体的には、イギリスの上限規制がEUの180ユーロ/MWhを下回った場合(100~160ポンド/MWh)、投資家はイギリスよりもEUを選択することになる。今後、上限規制の導入時期が明らかとなるまで、イギリスでの投資は抑制される可能性が高い。また、アナリストによると、上限規制と電力の先物価格の不透明性が電力購入契約(PPA)の締結を困難にしている。



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