EUA一部で回復するもUKAには逆風

  • EUAの終値は前週比約1%減の75.79ユーロ。取引レンジは7.70ユーロに急拡大(前週は4.14ユーロ)。
  • EUAは上昇基調でスタートした後、リパワーEU計画の投票を前に圧力を受けたが、投票後に直ちに回復し、「金融投機は抑制されない見通し」というニュースがさらにこれを下支えした(下記コメントを参照)。
  • EU ETSの改革を巡る三者会談は11月22日に再開の予定。EUAを販売してリパワーEU計画の資金を調達する際のルールを決定することが第一の焦点。2027年1月1日から2030年12月31日の間にオークションにかけられるEU ETS排出枠を2025年末までに販売することを欧州議会が投票で支持。正確なオークション量はEUAの価格次第だが、目標は200億ユーロの資金を調達すること(「その他のニュース」を参照)。
  • EU各国の財務大臣は以前、オークションの前倒し販売(25%、2026年まで毎年同額で合計50億ユーロ)とイノベーション・ファンド(75%)でリパワーEU計画の資金を調達することを支持。
  • 欧州議会はまた、第29a条にもとづく厳格な価格統制に非公式に合意している。それによると、6ヵ月連続のEUAの平均価格は昨年と一昨年の平均価格の2.4倍以上(当初は3倍)でなければならず、自動的に7,500万トンの排出枠が放出される。
  • さらに欧州議会は EMSAによる市場監視を要求しているものの、金融投機の抑制は認めていない。これにより、価格設定における心理的抑制が解消される見通し。

今週はオークションの開催と財政声明の発表。Redshaw社の見通し:弱含み
  • UKAの終値は前週比約4%減の71.10ポンド。取引レンジは4.55ポンドに縮小(前週は5.60ポンド)。
  • UKAの対EUAの週間平均プレミアムは7.73ユーロに縮小(前週は8.76ユーロ)。現在の全体のプレミアムは9.58ユーロ(チャート2を参照)。
  • 比較的力強く静かにスタートしたものの、その傾向は長続きせず、価格の現状維持は困難となり、その後、一定の値幅で取引された。
  • イギリスは現在、ヨーロッパでエネルギーの純輸入国となっている(4月以降初めて)。風力発電も短期的には漸減傾向。
  • フランスでは現在、56基の原子炉の内、26基が休止中。今後の焦点は2022年末までに15基を再稼働させるというEDFの計画。これにともない、この冬、イギリスへの電力輸出が下支えされる見込み。
  • マクロ的懸念は払拭されず。経済は第3四半期に縮小。市場は11月17日の財政声明とインフレ展望に注視。
  • 今週のオークション―11月16日に330万トン。

投資家のポジションさらなる巻き返し
  • KFA Global Carbon ETF(投資家心理の指標)のEUA保有量は560万トン。UKA保有量は407,000トン。ともに約1%減。NAV(Net Asset Value:純資産総額)は約7億1,500万米ドル。

技術的な短期見通し:横ばいから強含み
  • Futurestechの次期レベル:82.58ユーロ以上。85.80ユーロが視野。その後99.22ユーロ。
    推奨される取引:双方向取引の余地あり。74.21~74,56ユーロでは買いポジション。強含み市況には77.27ユーロが鍵。

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • ドイツの大手化学会社が生産持続に向けて石炭を備蓄。欧州議会がオークションの前倒しを支持。

ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • GER(Global Emission Reduction)は前週比5%減。アフリカ・カーボンマーケット・イニシアチブ(ACMI)がCOP27で発足。

再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • EUのGO(Guarantees of Origin:発電源証明)は約14%増の7.40ユーロ。GOが7ユーロ/MWhを突破して高値更新。米国のグリーンエネルギー・インセンティブはWTOのルール違反とEUが非難。
テクニカルな見通し‐中立
Futurestechs Limited.の受賞アナリスト、クライブ・ランバートによる分析。
  • 短期傾向:横ばい       
  • 昨日(2022年11月13日)までの相場動向:76.54ユーロに上昇して金曜は陽線。週初めの減少を見事に挽回。77.27ユーロまで上昇して回復の基盤となるかが問題。
  • 推奨される取引:双方向取引の余地あり。74.21~74,56ユーロでは買いポジション。
電力価格の下落でマージン減少するも引き続きガスに対して石炭は優位
  • 下記左の図はEUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは約-1%。ドイツ電力は約-20%、ARA石炭は約-15%、TTFガスは約-13%。
  • 下記右の図は石炭とガスを燃料とする一年後の先物価格をもとにしたドイツの発電マージン。
    • Y1石炭のマージンは168ユーロ/MWh前後(今週26%減)、Y1ガスのマージンは44ユーロ/MWh前後(今週65%増)。
    • 発電用燃料としての石炭は引き続きガスより収益性が高い。

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
欧州議会がオークションの前倒しを支持 欧州議会が暫定投票において、2027年1月1日から2030年12月31日の間にオークションにかけられるEU ETS排出枠を2025年末までに販売することを提案している(収益が200億ドルに達するまで)。これは、MSRからの排出枠を2026年末まで販売することで200億ユーロの調達を目指す欧州委員会の立場と異なる。いずれも目的は、リパワーEU計画の資金を確保し、ロシアの天然ガスへの依存から脱却することにある。欧州議会の交渉担当は次の段階として、EUの閣僚会議および欧州委員会と協議に入り、最終的なルールでの合意を目指す。ここで合意に至れば、新規ルールは公表の翌日からEU全加盟国に直接適用される。

ドイツの大手化学会社が生産持続に向けて石炭を備蓄 ドイツ最大の化学会社のひとつであるエボニックが今年末に閉鎖予定だった自社石炭火力発電所の稼働を延長する。この稼働延長の背景には、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて天然ガスの輸入が減少し、電力不足が懸念されている現状がある。同社はすでに2022年~2023年の冬に向け、工場の稼働に必要な石炭を十分に備蓄している。また、液化石油ガス(LPG)等の他の燃料を使用する用意もできている。さらに同社は、国内工場のすべてを調査し、ガスを他のエネルギー源で代替する方法も模索している。実際、小規模な工場はすでにガスに代えて石油を使い始めており、こうした対策により、同社は天然ガスの使用量を40%削減しているという。
ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報
GER (Global Emission Reduction)は今週5%減。
AirCarbon ExchangeのCET(CORSIA Eligible Token)は前週比3%減。GNB(Global Nature-based Token)は横ばい。

アフリカ・カーボンマーケット・イニシアチブ(ACMI)がCOP27で発足 カーボンクレジットの発行と雇用の創出に向け、Global Energy Alliance for People and Planet(人々と地球のためのグローバル・エネルギー同盟)、Sustainable Energy for All(万人のための持続可能なエネルギー)およびUN Economic Commission for Africa(国連アフリカ経済委員会)との協力の元、アフリカ・カーボンマーケット・イニシアチブ(ACMI)がCOP27で発足した。このACMIにより、2030年までに二酸化炭素3億トン分のクレジットが毎年発行される。まず、すでにクレジットを発行しているプロジェクト(料理用高効率コンロや自然ベースのソリューション等)を中心に展開し、その後、ブルーカーボンや技術ベースの排出削減等の初期段階のプロジェクトを拡充する。このレベルの発行量では60億米ドルの収入と3,000万人分の雇用が見込まれる。また、ACMIでは、得られた収入が透明性を持って公平に地域社会に配分される「信頼性の高いクレジット」が保証されている。
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
第45週 AIB再生可能エネルギー(本年):

仲値:7.40ユーロ(0.935ユーロ増)

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
作物:15.50~17.50ポンド、廃棄物:28.50~31.00ポンド

GOが7ユーロ/MWhを突破して高値更新 今週の北欧の水力発電のCal 22価格は7.10~7.15/MWhで推移した。この上昇傾向と現在も続く供給懸念は2023年に持ち越され、その後もさらに続くとアナリストは見ている。一方、最近の価格高騰で需要が減退すると考えているアナリストもいる。水力発電量はほぼ通常レベルまで回復しているが、今年前半の干ばつによる落ち込みが尾を引いている。このように、発電量は回復しているものの、バイヤーは引き続き必要量の確保に苦労しており、これが価格高騰につながっている模様。

米国のグリーンエネルギー・インセンティブはWTOのルール違反とEUが非難 EUは米国のインフレ抑制法に対する初の公式見解として、米国の企業・消費者を対象とする総額3,690億米ドルの補助金と税控除は「米国等の国は輸入品を差別してはならない」とするWTOの条約に違反しているとその文書で明言している。欧州委員会がコメントしたところによると、同法は米国のみならず、最も関係の深いその貿易相手国にも経済的損害を与え、非効率化と市場のひずみをもたらすほか、グリーンへの移行に関わる主要技術や情報を巡り、有害な補助金競争を世界規模で引き起こす可能性がある。そのため、米国代表とEU委員会の当局者からなる特別委員会が設けられ、EUのこの懸念について協議が行われた。



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