EUAがUKAを上回りプレミアムがさらに縮小

  • EUAの終値は前週比約9%増の78.97ユーロ。取引レンジは8.10ユーロに大幅拡大(前週は5.46ユーロ)。 
  • 寒波の影響で週明けに価格が上昇するも、市場回復を前にEUの交渉が行き詰まったため、上昇傾向は失速。その後、市場が引けた。
  • EU ETSの改革を巡る三者会談は継続中。政策立案者は12月末までに結論を下す予定。
  • 市場は12月22日のオプション期限とクリスマス休暇中のオークションの休催(12月20日~1月6日)に向けて準備の態勢。
  • EU加盟国間で意見が対立する中、各国のエネルギー担当相はECの提案した「オランダのTTFガス価格の上限規制」に関する決定を12月13日まで先延ばし(12月15日のEU首脳サミット前に決定)。
  • ウクライナ経由のモルドバ向けガスをウクライナが抜き取っている疑いから、ガスプロムが供給を停止する可能性。  
  • G7による65~70米ドル/バレルの上限価格規制は「深刻な結果」をもたらすことになるだろうとプーチンが警告。EUの原油禁輸措置は12月5日に発動の見込み。
  • 予報によると12月は寒冷。そのため、ガスと石炭の貯蔵量がさらに低下し、EUAの需要が高まる見通し。

今週のオークション―ガスの供給に注視。Redshaw社の見通し:横ばい
  • UKAの終値は前週比約5%増の68.85ポンド。取引レンジは4.40ポンドに縮小(前週は6.95ポンド)。 
  • UKAの対EUAの週間平均プレミアムは2.66ユーロに縮小(前週は3.76ユーロ)。現在の全体のプレミアムは9.42ユーロ(チャート2を参照)。
  • 週明けの価格上昇に続き、市場回復に先立って一定の値幅で取引されるも、週末にかけて失速。
  • 天気とガスの供給が引き続き懸念事項。12月1日のIUK双方向ガスパイプライン(イギリス・ベルギー間)の再開にともなう供給は見込まれるものの、ヨーロッパがガスの輸出を制限した場合、「非常に寒い時期」に停電が発生する可能性をナショナル・グリッドの責任者が警告(「その他の最新情報」を参照)。
  • イギリス政府が一般消費者に省エネルギーを奨励する公共情報キャンペーンを展開。現在の産業向け支援が2023年3月以降も継続するか否かは依然として不明。
  • 今週のオークション―11月30日に330万トン。2022年の最終オークションは12月14日。2023年のオークションは1月11日から。

投資家の関心はさらに低下
  • KFA Global Carbon ETF(投資家心理の指標)のEUA保有量は550万トン。UKA保有量は396,000トン。ともに約1%減。NAV(Net Asset Value:純資産総額)は約7億1,100万米ドル。

技術的な短期見通し:横ばい
  • Futurestechの次期レベル:82.58ユーロ以上。85.80ユーロ、さらには99.22ユーロが視野。
    推奨される取引:双方向取引の余地あり。現時点ではロング。

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • ロシアが供給を削減する恐れからヨーロッパのガス価格が上昇。ナショナル・グリッドの責任者がイギリスでの停電の可能性を警告。

ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • GER(Global Emission Reduction)は前週比横ばい。Verraが発行する「バイオ炭によるカーボンクレジット」をGERに含めることにネットゼロ市場が同意。

再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • EUのGO(Guarantees of Origin:発電源証明)は約14%増の9.15ユーロ。市場は「グリーンへの移行」を実現可能。問題は時間を要すること。
テクニカルな見通し‐中立
Futurestechs Limited.の受賞アナリスト、クライブ・ランバートによる分析。
  • 短期傾向:横ばいから強含み       
  • 昨日(2022年11月27日)までの相場動向:木曜の上昇を受けて金曜は十字線。チャートから分かるように、金曜に陽線に到達(ヒット)。よく見られる200日移動平均線(SMA)。同じくチャートから分かるように、前回、この線に到達した際、終値がこれを12回上回ったが、その後、下落。
  • 推奨される取引:双方向取引の余地あり。現時点ではロング。
石炭とガスのマージンが再び増加するも引き続き石炭の方が発電用燃料としては高利益
  • 下記左の図はEUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは約9%増。ドイツ電力は約11%増、ARA石炭は約10%増、TTFガスは約6%増。
  • 下記右の図は石炭とガスを燃料とする一年後の先物価格をもとにしたドイツの発電マージン。
    • Y1石炭のマージンは201ユーロ/MWh前後(今週11%増)、Y1ガスのマージンは73ユーロ/MWh前後(今週19%増)。
    • 発電用燃料としての石炭は引き続きガスより収益性が高い。

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
ロシアが供給を削減する恐れからヨーロッパのガス価格が上昇 ロシアが警告するところによると、早ければ11月末にもヨーロッパへのガス供給が制限される。これは、「モルドバ向けのガスをウクライナが抜き取っている」とするガスプロムの申し立てを受けたもの。ガスプロムは対抗措置として、残りひとつとなったパイプラインによる西ヨーロッパ向けの供給を制限する構え。この先、真冬で寒さが厳しくなる中、EUはガスの上限価格規制を計画している。一方、ガスの卸売価格が2週間に渡って275ユーロ/MWhに達した場合、または同卸売価格からの値上げ幅が10日間に渡って58ユーロ/MWh以上となった場合、ECはTTFの上限価格規制を前倒しすることを提案している。この規制が実施されると、EU加盟国はエネルギー需要抑制策をECに報告しなければならない。最終決定は12月15日のEC首脳会議に先立ち、12月13日に下される見込み。

ナショナル・グリッドの責任者がイギリスでの停電の可能性を警告 ヨーロッパがガスの輸出を制限した場合、「非常に寒い時期」の平日午後4~7時にイギリスの一般家庭で停電が発生する可能性がある。こうした中、イギリス政府は一般消費者に省エネルギーを奨励する公共情報キャンペーンを展開するが、これが産業に意味するところは明らかにされていない。一方、価格変動の抑制を目的としたガスの共同購入基準と新規のボランタリー・ヨーロッパLNG価格指標、および日計り取引サーキットブレーカー制度をEU各国のエネルギー担当相はまだ承認していない。因みにEUが目標とする2023年2月時点のガス貯蔵レベルは45%以上となっている(冬が予想より暖かい場合は55%)。
ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報
GER (Global Emission Reduction)は前週比横ばい。
AirCarbon ExchangeのCET(CORSIA Eligible Token)は前週比3%減。GNB(Global Nature-based Token)は横ばい。

ネットゼロ市場がVerraのバイオ炭によるカーボンクレジットをGERに含めることに同意 今年初めに発足したGERはカーボンクレジットをバスケットで取引するシステム。「長期」のカーボン除去クレジットに移行するためのメカニズムが組み込まれており、ネットゼロへの道筋を示すものとなっている。GERのバスケットは4部構成(下表参照)。そのうちのひとつが「炭素捕捉契約」(CCC)であり、バイオ炭によるクレジットがこれに該当する。2050年までにネットゼロを達成するには、「長期」カーボン除去クレジットによって各排出をオフセットする必要があるため、CCCにもとづくGERの割合は徐々に増加し、最終的には100%となる。ネットゼロ市場の監督委員会は、同市場の認証カーボン基準をもとにVerraが発行する「バイオ炭によるカーボンクレジット」をGERに含めることに同意した。この変更は2023年初めに施行される。
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
第47週 AIB再生可能エネルギー(本年):

仲値:9.15ユーロ(1.150ユーロ増)

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
作物:15.50~17.50ポンド、廃棄物:28.50~31.00ポンド

市場は「グリーンへの移行」を実現可能-問題は時間を要すること 再生可能エネルギーの導入は著しく拡大しているものの、「変革」と言えるほど急速には進んでいない。国際再生可能エネルギー機関は、2010年以降に急減した再生可能エネルギーの「均等化コスト」をプラス面として強調している。陸上と洋上の風力発電がこれに該当し、特に太陽光発電ではコストの減少が著しい。こうした再生可能エネルギーは現在、化石燃料の下限またはそれ以下のコストを達成しており、「変革」の可能性があるものと一般に考えられている。実際、発電における再生可能エネルギーのシェアは増加しているが(2021年のEUにおけるシェアは25%)、世界全体で見ると、まだ平均で13%に過ぎない。現在、再生可能エネルギーの拡大で世界をリードしているのは中国である。一方、すべての発電源による総排出量は減少していない。国際再生可能エネルギー機関によると、今後の気温上昇を1.5ºC以下に抑えるためには、低排出源を大幅に拡大し、衰退することのない化石燃料需要を3分の1に削減しなければならない。問題は、エネルギーの安全保障を高めることを前提として、どのようにこれを加速するかという点。本件に関し、次の5つの政策変更が必要と考えられている。1)科学研究への投資の拡大、2)新技術の応用に向けた補助金の増額、3)化石燃料への補助金(2021年実績は7,000億米ドル)の打ち切り(二酸化炭素の回収・貯留を除く)、4)カーボン・プライシングの適用拡大、5)特に開発途上国での財務リスクの回避。



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