EUA一定の値幅で変動。マクロ的展望の悪化にともないUKAは厳しい局面。
  • EUAの終値は68.05ユーロ。前週比0.9%減。4.49ユーロ幅で取り引き(前週は7.11ユーロ幅)。
  • EUAは不安定に終始。価格保ち合いの中、オークション後に価格が高騰したことで売り意欲が高まる。米国のインフレ等の変動要素にも関わらず、EUAは現行の値幅を維持した。
  • 市場はリパワーEU計画の資金調達方法が明らかとなることを期待。欧州議会の投票は11月9日。アナリストは妥協を予測している。今後4年間で半分をオークションの前倒しから、もう半分をイノベーション・ファンドから拠出して200億ユーロを調達する見通し。
  • マクロ的には弱含み。米国の9月のインフレ率は0.6%上昇。FRBが0.75%の利上げを維持する見通し高まる。ECBも10月27日に利上げを実施する見通し。
  • フランス・ドイツ間のエネルギー融通が工業を下支え(「その他のニュース」を参照)。ドイツ政府が消費者のガス料金を負担(「その他のニュース」を参照)。
  • 焦点はエネルギー市場への介入に向けたECの決断(プロポーザルは10月18日に提出)。具体的対策としては、ガス価格の一時的な上限規制やガス共同購入など。
  • ヨーロッパに予想される穏やかな天気が暖房用ガスの需要を抑える見込み。

オークションと厳しいマクロ的局面。市場展望:弱含み
  • UKAの終値は71ポンド。前週比4.7%減。4.90ポンド幅で取引(前週は3.19ポンド幅)。
  • EUAに対するUKAのプレミアムの週間平均は15.51ユーロに縮小(前週は16.75ユーロ)。図表2を参照。現在の全体のプレミアムは9.57ユーロ。
  • イングランド銀行がイギリスの財政不安定化のリスクを警告したため、UKAは弱含みで展開。下落傾向が買い意欲を刺激したものの、その勢いは週終わりまで持続せず。
  • マクロ的展望は悪化の一途。イギリス政府が法人税について方針を180度転換したことから、市場が一層不安定化するおそれ。
  • イギリス政府がCOVID下の活動レベルの除外を承認。これにより、事業者は2022年の活動レベルのデータから2020年の排出を除外できるようになった。
  • 再生可能エネルギーと原子力による発電を対象とした一時的上限価格規制が2023年に施行予定。値幅制限は当面なし。上限規制のリスクは再生可能エネルギーへの投資を抑制する要因。
  • 今週のオークション―10月19日に330万トン。

投資家の関心は週を通して現状のまま
  • KFAグローバルカーボンETF(投資家の関心の指標)におけるEUAは約600万トン、UKAは約433,000トン。ともに横ばい。NAVは約7億2,100万ドル。

技術的な短期見通し:弱含み
  • FuturesTechの次期レベル:弱含みの展望に向けては70ユーロが引き続き鍵。
  • 推奨される取引:買い戻し

コンプライアンス市場に関するその他のニュース
  • ドイツ政府が一般家庭と企業の12月分のガス料金を負担。ドイツとフランスがエネルギーの融通で合意。

ボランタリー炭素市場ニュース
  • GER(Global Emission Reduction)は前週比9%減。ICAOが国際航空の2050年ネットゼロ目標を採択し、CORSIAの排出ベースラインを設定。

再生可能エネルギーニュース
  • EUのGOが約9%上昇して5.08ユーロに。イギリスの農地の大部分から太陽光プロジェクトを排除することを各大臣が要望。
テクニカルな見通し‐弱含み
Futurestechs Limited.の受賞アナリスト、クライブ・ランバートによる分析。
  • 短期傾向:弱含み       
  • 昨日時点のローソク足チャート:金曜に関するかぎり、69.50ユーロの高値をもとに 70ユーロ台に持ちこむことはできず。したがって、新たな展開はなし。現状は行き詰まり。現在の「ハッピーゾーン」からの脱却を期待。
  • 推奨される取引:買い戻し

ガスと比較し、石炭は引き続き高利益。
  • 下記左の図はEUA、ドイツ電力、ARA石炭、TTF天然ガスの先物価格の推移。
    • 先週、Dec Y1 EUAは約3%下落。Y1ドイツ電力は約2%下落。Y1 ARA石炭は約4%上昇。Y1 TTFガスは約6%下落。
  • 下記右の図は石炭とガスを燃料源とするドイツの発電マージンの先物価格。
    • Y1石炭マージンは270ユーロ/MWh前後(前週比3%減)、Y1ガスマージンは108ユーロ/MWh前後(前週比12%増)
  • ガスと比較し、発電燃料としての石炭は引き続きコスト的に有利。       

コンプライアンス市場に関するその他のニュース
ドイツ政府が一般家庭と企業の12月分のガス料金を負担 ドイツ政府が任命した専門家委員会がエネルギー価格の2段階上限規制を提案している。この案によると、政府は消費者の12月分のガス料金を負担することになる。その後、一般家庭は2023年3月から2024年4月まで、前年のガス使用量の最初の80%について0.12ユーロ/KWhを支払う。一方、企業は2023年1月から2024年4月まで、前年のガス使用量の最初の70%について0.07ユーロ/KWhを支払う。これにともなう政府負担は総額で約910億ユーロ。このうち、660億ユーロが消費者分(中小企業を含む)、250億ユーロが企業分となっている。

ドイツとフランスがエネルギーの融通で合意 先月、エネルギー連帯取引の一環として、ドイツが必要に応じてフランスに電気を供給することを公約した。一方、フランスはドイツにガスを供給する。フランスの送電系統運用者GRTgazは、まず日量31 GWhをドイツに供給する計画を明らかにした(最大で日量100 GWh)。ドイツは石炭の利用を拡大し、石炭火力発電所の稼働を延長している。再生可能エネルギーと原子力の利用が不十分な状況で石炭火力発電が増強された場合、この冬の化石燃料の燃焼が増加し、これがEUAの需要を下支えするとブルームバーグNEFのアナリストは見ている。
ボランタリー炭素市場ニュース
GER(Global Emission Reduction)は前週比9%減。
AirCarbon ExchangeのCET(CORSIA Eligible Token)は前週比3%減。GNT(Global Nature Token)は横ばい。

ICAOが国際航空の2050年ネットゼロ目標を採択し、CORSIAの排出ベースラインを設定 国際民間航空機関(ICAO)の加盟国が国際航空の2050年ネットゼロに向けて長期世界全体目標を採択した。同時に、CORSIA(国際民間航空のためのカーボン・オフセット及び削減スキーム)の第1回定期審査が行われ、国際航空のオフセット要件を計算するための排出ベースラインが設定された。具体的には、2019年と2020年の国際航空の排出の平均を取ってベースライン(2024~2035年)が設定されるが、2020年の排出はCOVIDに影響された異常値として計算から除外された。結果として、2019年の排出の85%という比較的高いベースラインが設定されることとなった。
再生可能エネルギーニュース
第41週 AIB再生可能エネルギー(本年):

仲値:5.0800ユーロ(0.4700ユーロ)

UK RGGO気配値:
作物:15.50~17.00ポンド、廃棄物:26.00~30.00ポンド(横ばい)

イギリスの農地の大部分から太陽光プロジェクトを排除することを各大臣が要望 新任のラニル・ジャヤウォーディナ環境大臣は、食料生産の発展・拡大を妨げるとして、農地への太陽光パネルの設置に反対の立場を示しており、「最適かつ最善の多目的(BMV)」区画というカテゴリーの再定義を検討している。現在、全国の区画は等級1~5に分類されており、BMVには等級1~3aの区画が含まれる。このうち、ソーラーファームの大半が計画・建設さるのは等級3aの区画だが、BMV区画での開発は避けるべきだと計画担当者は主張している。中・低カテゴリーの3b区画もBMVに含めると、イギリスの国土の約41%、または農地の約58%において太陽光発電が排除される。また、その大半が高地にある等級4・5区画は太陽光発電の開発には適していない。

原子力のGOの需要、低価格とEUの持続可能な財務開示規則の適用で高まる可能性 GOは主に再生可能エネルギーの消費の証明に用いられるが、一部の国には完全な財務開示スキームがあり、あらゆる種類のエネルギー(原子力を含む)の消費の証明にGOが適用されている。原子力を「EUの持続可能な財務開示規則」に含め、これを「グリーン」と認めれば、GOの需要は高まるとアナリストは見ている。2020年の原子力のGOは0.30/MWh前後で取り引きされており、これは北欧の水力を大幅に下回るが、それでも原子力のGOはニッチで非流動的な市場であるとグリーンファクトのアナリストは指摘している。さらに、原子力のGOの需要が高まった場合、これを満たせるのは完全な財務開示スキームを認めている国に限られる。



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