EUAは強気な週、UKAはもっと強気な週。

  • EUA(European Union Allowance:EU排出枠)の終値は、前週比+2.8%の86.18ユーロ。取引レンジは7.35ユーロとレンジ幅拡大(前週は4.23ユーロ)。
  • EU Council(欧州連合理事会)の比較的安心できそうな結論に先駆けてEUAは序盤に上昇した。複合エネルギーがサポートとなり、強気な基調は継続したが、約90ユーロ付近が抵抗線となり、週末には、利益確定に売りに押され、価格は調整された。
  • 今週、ストライキにより、ノルウェーのガス輸出量の13%が影響を受ける。フランスの発電所の労働者のストライキは、継続(最大4GWの備蓄に影響)。
  • 7月11日から21日に行われるNord Streamのメンテナンス後、ロシアのガス供給の継続性は、欧州の冬のガス備蓄ニーズに対する重要なリスクであることに変わりはない。
  • ARA(Amsterdam, Rotterdam, Antwerp:アムステルダム、ロッテルダム、アントワープ)港発の利用可能な艀(はしけ)の不足により、石炭の入手が厳しくなる可能性がある。暑さによる川の水位低下もリスクである。ガスやバイオマスの供給不足が、石炭火力への依存度を高める事態を引き起こしている。このため、冬にかけて備蓄が圧迫される可能性がある。ロシア産石炭禁輸は、8月10日から始まる。
  • ECの採決は、価格を下支えし、長期的で強気な相場心理をもたらすと思われる。7月中旬よりトリローグ(EP(European Parliament:欧州議会)、EC(European Commission:欧州理事会)、EU Council)の協議が始まる。市場は、(現在EU議長国である)チェコがどのようにリードするかを注視している。
  • ユーロ圏の景気後退リスクは継続する。エネルギーの価格が高いことによる需要喪失や産業界への配給により、EUAの需要が減退する可能性がある。


オークション供給の不足が下支えとなる可能性 - Redshaw社の見通し:強気
  • UKA(United Kingdom Allowance:英国排出枠)の終値は、前週比+5.7%の85.70ポンド。取引レンジは、4.65ポンドとレンジ幅拡大(先週は2.15ポンド)。
  • UKAの対EUAの週間平均プレミアムは、9.95ユーロに縮小(先週は10.48ユーロ)。現在のプレミアムは、7.51ユーロ(チャート2参照)
  • UKAが先週の上昇分を上回った。UKAは、エネルギー市場全体からの追い風を受けて、直近のレンジを突破したEUAの上昇軌道をたどった。EUAとは対照的に、UKAは週末まで回復力を維持した。
  • 今週はオークションなし。次回は、320万トン分のオークションが7月13日に行われる。

投資家の関心は下降の一途をたどる
  • KFA Global Carbon ETF(投資家心理の指標)EUAの保有量は、約−1%の800万トン、UKAの保有量は、約−2%の58.2万トン、NAV(Net Asset Value:純資産総額)は、約12億米ドル。

テクニカルな短期的な見通し – 強気
  • 好ましい取引:押し目買いで、依然として長期保有が好ましい。

その他のコンプライアンスに関する最新情報
  • ドイツは、ガス危機の真っ只中にあるUniper社と救済交渉中。Putin大統領、サハリン2ガスプロジェクトのロシア法人への引渡を命じる大統領令に署名した。

ボランタリー炭素市場に関する最新情報
  • CET(CORSIA(=Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation:国際民間航空のためのカーボン・オフセット及び削減スキーム)Eligible Tokens)価格は前週比−2%。タイが世界初の国別カーボンオフセット協定に署名。

再生可能エネルギーに関する最新情報
  • EU GO(Guarantees of Origin:発電源証明)は、約+13%の2.0950ユーロ。EU閣僚、2030年の再生可能エネルギー40%目標を支持。デンマーク、2030年までのグリーン電力容量の大幅増強で合意。
テクニカルな見通し – 強気
以下の分析は、受賞歴のあるClive Lambert氏(Futurestechs社)によるものである。
  • 短期的な傾向:強気       
  • 昨日(2022年7月3日)までの相場動向:先週は木曜まで上げ相場であったが、金曜日(7月1日)に反落した。85.01ユーロまで弱含んだが、87.7ユーロで引けた。
  • 好ましい取引:押し目買い。

石炭とガスのマージンは主に電力料金の高騰により上昇。依然として石炭を優勢。
  • チャート5は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先渡の価格推移を示したものである。
    • 先週、Dec Y1 (一年先渡の12月価格)EUAは、+2%。ドイツ電力は、約+21%。ARA石炭は、−0.3%。TTFガスは、約+12%。
  • チャート6は、石炭とガスを燃料とする一年先渡価格(Y1)に基づく、ドイツの発電燃料マージンである。
    • Y1石炭の収益率は、約132ユーロ/MWh(今週+35%)。Y1ガスの収益率は、約55ユーロ/MWh(+89%)。
    • 発電燃料としての石炭は、引き続きガスよりも収益性が高い。

その他のコンプライアンス市場に関する最新情報
ドイツは、ガス危機の中でUniper社と救済交渉中。 伝えられたところによると、独Uniper社は、露Gazprom社から契約上合意されたガス量の40%しか受け取っていない。Uniper社のCEOであるKlaus-Dieter Maubach氏は、政府の救済策には、保証の可能性、クレジットファシリティ の引き上げ、あるいは国が資本参加する可能性も含まれていると述べた。スペイン、チェコ、ハンガリーを含むヨーロッパの他の国も、戦略的企業を支援するための行動を起こしている。ガス市場の逼迫が続き、大陸中の公益事業企業は高価なスポット市場での購入を余儀なくされている。また、消費者保護のための政府の価格上限も、熱供給事業者の財政をさらに圧迫している。ヨーロッパのガス購入者は、7月11日から21日に予定されているノルドストリームの定期メンテナンス後、ロシアからのガス供給が再開されるかどうかを注視している。

Putin大統領、サハリン2ガスプロジェクトのロシア法人への引渡を命令。 この全ての権利の引渡命令により、Shell社、三菱商事、三井物産などの外国国籍投資企業はこのプロジェクトを放棄せざるを得なくなる可能性がある。この命令は、既存の投資企業にステイクホルダーであり続けるかどうかを決定するための1ヶ月を与えている。しかし、手を引いたステークホルダーに十分な補償が行われない可能性がある。Gazprom社は、50%の株式を維持する。日本のエネルギー供給の脆弱性(および福島原発事故後の原子力発電供給不足)を考慮し、日本企業が参加することが予想される。関係者は、ロシアを拠点とする新企業の設立は、新たにコンソーシアムに参加する企業がロシアに税金を支払わなければならないことを意味する可能性があると示した。これらの関係者は、日本はサハリンとの関係を維持するために、これに耐える用意があると述べている。
ボランタリー炭素市場に関する最新情報
今週はCET価格が−2%:CETは、AirCarbon Exchangeで取引される(=CORSIA規格に基づくVER(Verified Emission Reduction:第三者認証排出削減量))。
ACX(AirCarbon Exchange)ネイチャーベース価格は横ばい。
タイが、スイスとのパリ協定第6条カーボンクレジット協定に署名。 タイとスイスの覚書によると、この協定により、スイスは排出される二酸化炭素をタイの気候変動プロジェクトを通じて、オフセットすることができるようになる。その見返りとして、タイはカーボンニュートラルと排出削減計画に関するスイスの専門知識を得ることができる。この覚書は、パリ協定第6条に基づく協力協定に該当する。この協定は、国同士がNDC(国が決定する貢献:Nationally Determined Contribution)に定められた削減目標を支援するために協力することを認める。タイは2050年までにカーボンニュートラルを達成し、2065年までに温室効果ガスの排出をゼロにすることを目標としている。また、タイは、クリーンエネルギーや電気自動車支援プロジェクトによるカーボンクレジットを国として他国に譲渡する最初の国となる見込みだ。
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
今年26週目のAIB(Association of Issuing Bodies)再生可能エネルギー:

仲値=2.0950ユーロ(+0.2650ユーロ)

EU閣僚、2030年の再生可能エネルギー40%目標を支持。 この新しい目標は、昨年Fit for 55で提案された32%から引き上げられるものだ。この高い目標は、EUの脱炭素化を加速させ、ロシアのエネルギーへの依存度を下げることが期待されている。また、EUのエネルギーは、各国政府に運輸セクターに関する2つのサブターゲットの選択肢を与えることに合意した。ひとつは、2030年までに運輸セクターの温室効果ガス排出量を13%削減に取り組むことだ。もうひとつは、2030年までに最終的な運輸用のエネルギー需要の占める再生可能エネルギーの割合を29%にすることだ。EPのエネルギー委員会は、7月13日に再生可能エネルギー改革の草案を採決する予定だ。EPとEU Councilの両方の官僚が、目標が法的拘束力を持つようになる前に、相互に受け入れ可能な妥協案に合意する必要がある。

デンマーク、2030年までのグリーン電力容量の大幅増強で合意。
この合意により、2030年までに洋上風力発電容量を5倍の12.9GWに拡大することを目指す。またこの合意により、陸上風力発電と太陽光発電の年間発電量を4倍の50TWhにすることが期待されている。また、この措置により、2035年までに家庭用暖房での天然ガスの使用が禁止され、地域熱供給事業者は熱生産からガスを段階的に削減することになる。デンマークはグリーン転換の真っ只中にあり、輸送や製造業の電化により、電力需要が現在の32TWh/年から2030年までに倍増する可能性がある。



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