EUAに対するUKAのディスカウントがさらに拡大して排出枠価格が反転

  • EUAの終値は前週比3.97ユーロ増(4.7%増)の88.93ユーロ。取引レンジは5.62ユーロに縮小(前週は7.60ユーロ)。200日移動平均を超えて強気が優勢となったことで木曜に90.12ユーロの最高値に到達。しかし、価格上昇で売り意欲がやや高まり、週末までに1ユーロ以上下落。次の強気のターゲットは90ユーロのテクニカルレジスタンス。これを反転のシグナルととらえるべき。
  • EUAの日中ボラティリティが前週比40%近く低下し、平均取引レンジはセッション当たり2.13ユーロに縮小(前週は3.58 ユーロ)。
  • 供給潤沢でガス価格は1.8%、石炭価格は7.2%下落;電力価格は前週に記録された過去20ヵ月の最安値からわずかに反発し、1.5%増。
  • ガス貯蔵量は2%増加して現在は容量の63%。EUのLNG貯蔵量は4%減の60%(前週は64%)。
  • EUAのオークション量は下落;販売量は559万トン(前週は1,180万トン)。
  • マクロ:先週の水曜に発表された米国とドイツのインフレデータに改善はほとんど見られない。米国では予想された4.90%を0.1%下回り、ドイツでは0.2%減の7.6%となった。
  • サポートレベルは87.20ユーロ、86.30ユーロ、85.40ユーロ。レジスタンスは90ユーロ、90.85ユーロ、92.00ユーロ。

UKAは週明け出足好調も金曜に下落して1.60ポンド減。Redshaw社の見通し:弱含み
  • UKAは5週連続で下落して58.50ポンドに。
  • 2.3%減で週の取引レンジは2.59ポンドに縮小(前週は4.72ポンド)。日中ボラティリティは引き続き低調。平均取引レンジはセッション当たり1.51ポンド(前週は1.43ポンド)。キーレベル:下落傾向では57.53ポンド、53.90ポンド、53.00ポンド。レジスタンスは59.00ポンド、60.25ポンド、60.95ポンド以上。
  • EUAに対するUKAの週平均スプレッドは-19.73ユーロに(前週は-17.54ユーロ)(チャートを参照)
  • 温暖な曇天が続いて太陽光・風力発電量がエネルギーミックスの23%に低下。その結果、ガス貯蔵量は2%減の43%。
  • 週を通して温暖な天気の見通し。風力発電量は低下。
  • イギリスのデータ::予想どおりイングランド銀行が木曜に金利を0.25%引き上げ。0.1%増という予想に対し、3月のGDPは前月比0.3%減。

投資家がEUAエクスポージャーを削減
  • KFA Global Carbon ETFの保有量はEUAに対して 8%減;NAV(Net Asset Value:純資産総額)は 反発して1.7%増の6億1.400万米ドル。

技術的な短期見通し:
  • Futurestechの次期レベル:強気筋が200日SMAラインの維持に懸命。

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • 2022年のヨーロッパの電力取引量は31%減- Propsex;ヨーロッパのLNG価格は過去23ヵ月の最安値。

ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • GEOとN-GEOはともに前週比減;VCMIが主催国向けのツールキットの提供を開始。

再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • バイデン政権下の環境保護庁(EPA)が発電所の排出の規制を提案 ; Savannah Energyとニジェールが200MW級の太陽光発電所の建設で合意。
技術的見通し―横ばい
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
  • EUAのテクニカルな見通し:横ばいから強含み
  • 短期傾向:横ばいから強含み 昨日(2023年5月14日)までの相場動向木曜に90.12ユーロまで上昇したが持続せず、同日午後の取引では87.67ユーロまで下落。その時点で遅れてバイヤーが出現。またしても89.08ユーロを見送ることができず、金曜も同様の状況。89.75ユーロに値上がりしたところで一部で売り手が出現。先週は強気筋が相場の引き上げに成功したが、それで十分だったか?89.08ユーロ以下となるまでは断じて否。つまり十分ではない。
  • 推奨取引:現時点では双方向取引の余地あり。ロングの余地あり。
石炭とガスに引き続き圧力が加わる中でエネルギーミックスは混沌、電力価格はわずかに回復。
  • 右記の図(上)は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは4.7%増。ドイツ電力は1.5%増。ARA石炭は 7.2%減。TTFガスは1.8%減。
  • 右記の図(中)は石炭とガスを燃料とする一年後の先物価格をもとにしたドイツの発電マージン。
    • Y1石炭のマージンは34.43ユーロ/MWh 前後(今週7.4%増)、Y1ガスのマージンは22.42ユーロ/MWh 前後(今週11.93%増)。
    • 発電のメリットオーダーでは引き続き石炭がガスより優位。

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
2022年のヨーロッパの電力取引量は31%減- Propsex | Montel (montelnews.com): 2022年のヨーロッパの電力取引量は31%減の 5,696TWh。これはProspex Researchが2000年にデータを追跡するようになってから最大の落ち込み。証拠金が上昇する中で市場の流動性が低下し、ロシア産ガスの供給削減で電力価格が高騰したことが原因と考えらえる。しかし、取引総額は平均スポット価格と比較して58%増加し、過去最高の13億ユーロに達した。最大のマーケットは全体の45%を占めるドイツ。北欧諸国が14%でこれに次ぐ。店頭取引が全体に占める割合は56%で、クレジットを巡る懸念が高まる中、その内の78%は取引所で売買されている。また、先物取引が23%、現物取引が21%となっている。

ヨーロッパのLNG価格は過去23ヵ月の最安値(montelnews.com): 北西ヨーロッパのLNG価格が過去23ヵ月の最安値を記録。Spark Commoditiesによると、需要の低迷と潤沢な供給により、前週は3%減となった。6月の価格は2021年6月以来の最安値を記録し、7週連続で下落。6月分のアジアのLNG価格も需要の低迷で下落し、バイヤーは現在、最適化プログラムの一環として転売を始めている。今後は不要なLNGがアジア市場に溢れる可能性があるため、一部のバイヤーがこれをヨーロッパに再輸出し、ヨーロッパの価格がさらに下落することも考えられる。

ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報
GER(Global Emission Reduction)は今週横ばい
GEO(Global Emission Offset)は9%減。N-GEO(ネイチャーベースのGEO)は11.3%減。

VCMIが主催国向けのツールキットを提供開始 需要サイドのグローバルな管理団体であるボランタリー炭素市場インテグリティ・イニシアチブ(VCMI)が先週、炭素市場への参加を検討している国の政府を対象に新たなツールキットの提供を始めた。 2021年6月から2022年11月の間に選ばれた主催国向けにVCMアクセス戦略プログラムが最初に提供するのは「CMアクセス戦略ツールキット」Climate Focusおよび国連開発計画(UNDP)との協力のもとに開発されたこのツールキットは、主催国・地域にVCMへの参加を奨励し、カーボンファイナンスから得られる利益を最大化することを目的としている。VCMIの事務局長であるMark Kenberは次のように述べている。「現在のところ、ボランタリー炭素市場との効果的な関り方に関し、明確な戦略を持ち合わせている国はほとんどない。今回提供する主催国向けのVCMアクセス戦略ツールキットは、信頼性の高いVCMへのアクセスを支援し、正しい意思決定を導き、カーボンファイナンスがもたらす数多くの環境・社会・経済的利益を保証するものだ」  
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
第19週 AIB再生可能エネルギー(本年):

仲値=7.45ユーロ(0.20ユーロ減/2.61%減)

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:24.00~25.50ポンド、売却目安:32.50~34.50ポンド

UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP23:8.30~8.60ポンド、CP24:9.75~10.25ポンド、CP25:9.75~10.25ポンド

バイデン政権下の環境保護庁(EPA)が発電所の排出の規制を提案 バイデン政権は2022年5月11日、米国の電力産業による温室効果ガスの排出を削減する計画を明らかにしている。具体的には、米国内のCO2排出量の4分の1以上を占める発電所からの排出の削減に加え、水素等の低排出燃料や炭素回収装置(CCS)の使用を電力会社に奨励している。環境保護庁の試算では、この計画により、2028~2042年の間に石炭・ガス火力発電所からの排出が6億1,700万トン削減される。また、2035年までに発電部門でネットゼロを達成すべく、電力会社にはCCS技術の導入が求められており、基準に満たない場合は操業を停止しなければならない。この提案は意見聴取を含む法制化プロセスを経た後に最終決定される。
 
Savannah Energyとニジェールが200MW級の太陽光発電所の建設で合意 アフリカを重視する石油・ガス生産者Savannah Energyがナイジェリアに2つの太陽光発電所(総発電容量200MW)を建設する計画を発表。まず、Kadunaで100MW級を立ち上げ、その後、同様に100MW級をKanoに建設する。これらの発電所により、安価なエネルギーを生産し、系統の発電量を20%上乗せすることで年間26万トン相当の炭素の排出を削減する。しかし、エクソンモービルとの4億700万米ドルの取引から得た資産と権益を巡り、同社は現在チャド政府と係争中。同政府の申し立てによると、契約の最終条件が当初提示されたものと異なっている。
 




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