炭素価格は堅調に推移

  • EUA(European Union Allowance:EU排出枠)の終値は、前週比+8.2%の85.12ユーロ。取引レンジは7.35ユーロとレンジ幅拡大(前週は4.63ユーロ)。
  • 夏季休暇による8月中のオークション取引量の半減は、月初からEUAの価格の促進を裏付けた。価格は上昇を続けたが、上昇の勢いが鈍化したため、トレーダーは利益を確保した。
  • ロシアからのガス供給が全面的に停止するリスクが高まっている(現在の供給量は20%程度)。Gazprom社は、NS(Nord Stream:ノルドストリーム)のタービン1基の返却拒否は、制裁違反だとしている。2基目のタービンは、7月26日にメンテナンスに回された。3基目も修理の予定だ。
  • ベルギーとオランダの連系線を経由した欧州への英国のガス輸出も、「有害汚染物質」の可能性が報告され、脅威にさらされている。
  • 豪州のLNG輸出は(豪州国内の需要優先のため)10月から抑制される可能性があるが、アジアのLNG需要は冬にかけて増加する。フリーポートの生産量が10月から増加することから、米国の供給量に注目。
  • 欧州が冬季のガス貯蓄量の基準を満たさない可能性があるとの懸念が高まっている。ロシアのガス供給が途絶えた場合、景気後退のリスクも実質的に増加するだろう。
  • (9月までの予想されている)暑く乾燥した天候が、発電や原子力発電所の冷却、ノルウェーの水力発電(つまり、その輸出)に支障をきたしている。河川の水位が低いため、港から工場までの石炭運搬する艀(はしけ)に影響がある。港の在庫補充も制限されている。自動車や鉄道輸送への代替の可能性に注目する。
  • 欧州の発電用ディーゼルへの依存度が高まる。7月のロシアからの輸入は前月比22%増。ロシアへの石油制裁の野望を弱める。

今週のオークションは、上値を抑える可能性 − Redshaw社の見通し:中立
  • UKA(United Kingdom Allowance:英国排出枠)の終値は、前週比+4.8%の82.10ポンド。取引レンジは3.89ポンドとレンジ幅拡大(先週は2.99ポンド)。
  • UKAの対EUAの週間平均プレミアムは、12.85ユーロにわずかに縮小(先週は14.47ユーロ)。現在のプレミアムは、8.00ユーロ(チャート2参照)。
  • UKAは上昇を続け、80ポンドに到達し、維持した。イングランド銀行の0.5%利上げのニュースで調整が入ったが、長くは続かず、さらに引けにかけて上昇した。
  • ヒンクリーポイントB原子力発電所(英国電力需要の約3%)は、現在閉鎖中。不足分は、より排出量の多いガス発電でまかなわれる可能性が高い。
  • 今週8月10日に320万トンのオークション予定。

投資家の関心はさらに低下
  • KFA Global Carbon ETF(投資家心理の指標)EUAの保有量は、約−1%の730万トン。UKAの保有量は、約−2%の53.1万トン。NAV(Net Asset Value:純資産総額)は、約10億米ドル。

テクニカルな短期的な見通し – 強気
  • 好ましい取引:押し目買い

その他のコンプライアンス市場(法的な取り組み)に関する最新情報
  • Gazprom社は、タービンへの制裁が欧州へのガス供給を制限していると非難している。Uniper社は、ライン川が干上がることにより、ドイツの石炭火力発電量が減少する可能性があると警告している。

ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • CET(CORSIA(=Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation:国際民間航空のためのカーボン・オフセット及び削減スキーム)Eligible Tokens)価格は前週比+22%。山火事により、100年留保の森林のカーボンオフセットがほぼ消失。

再生可能エネルギーに関する最新情報
  • EU GO(Guarantees of Origin:発電源証明)は、約+4%の2.68ユーロ。英国のバイオマス事業が政府補助金3,700万ポンドを獲得。Truss氏とSunak氏は、太陽光発電所への土地利用を非難。
テクニカルな見通し – 強気
以下の分析は、受賞歴のあるClive Lambert氏(Futurestechs社)によるものである。
  • 短期的な傾向:強気       
  • 昨日(2022年8月7日)までの相場動向:先週より相場の上昇を予想する強気な見方がより多くあった。実際、市場のゆがみが全て陽線への回帰が見え、日足で見た限りでは全て陽線であり、懸念された。
  • 好ましい取引:押し目買い

石炭価格の下落により、石炭の収益率は、ガスの収益率をさらに上回ったままである
  • チャート5は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先渡の価格推移を示したものである。
    • 先週、Dec Y1(一年先渡の12月価格)EUAは、約+8%。ドイツ電力は、約+12%。ARA石炭は、約−19%。TTFガスは、約+10%。
  • チャート6は、石炭とガスを燃料とする一年先渡価格(Y1)に基づく、ドイツの発電燃料マージンである。
    • Y1石炭の収益率は、約249ユーロ/MWh(今週+27%)。Y1ガスの収益率は、約67ユーロ/MWh(+27%)。
    • 発電用燃料としての石炭は、引き続きガスよりも収益性が高い。       

その他のコンプライアンス市場に関する最新情報
Gazprom社は、タービンへの制裁が欧州へのガス供給を制限していると非難している。 Gazprom社は、懲罰的制裁により必要不可欠なタービンの返還が妨げられており、NS1経由でのガス供給を制限することを余儀なくされていると主張している。ドイツ首相のOlaf Scholz氏は、Gazprom社が備品の引き渡しを受けなかったことが遅延の唯一の原因であると反論している。欧州当局は、ロシアがガスを兵器化していると非難している。Gazprom社は代替のパイプラインルートを利用することができるのに、それを拒否していると欧州当局は主張している。Gazprom社は、タービンをロシアに返却するとカナダ当局から制裁違反や制裁迂回とされるリスクがあり、今後のタービンの修理ができなくなる可能性があると主張している。カナダとEC(European Commission:欧州委員会)は、タービンに対する制裁がペナルティなしに回避できるかどうか、まだ確認していない。

Uniper社は、ライン川が干上がることにより、ドイツの石炭火力発電量が減少する可能性があると警告している。 ライン川の水位は、20年間で最低レベルにまで低下した。このため、港から工場までの石炭輸送に影響が出た。独 Uniper社は、結果的に石炭の供給が制限されると、2つの主要な石炭火力発電所の出力が低下する可能性があると警告している。ライン川沿いのマンハイム市とカールスルーエ市にある(Grosskraftwerk Mannheim社とEnBW社が運営している)他のドイツの発電所も同様に石炭の調達に苦労しているが、発電量にはまだ影響がない。暑い気候は、(冷却機能に制限がかかってしまうため)フランスの原子力発電所にも影響を与えている。
ボランタリー炭素市場に関する最新情報
今週はCET価格が+22%:CETは、AirCarbon Exchangeで取引される(=CORSIA規格に基づくVER(Verified Emission Reduction:第三者認証排出削減量))。
ACX(AirCarbon Exchange)ネイチャーベース価格は、先週比+1%。

山火事により、100年留保の森林のカーボンオフセットがほぼ消失。 森林由来のスキームのようなオフセットプロジェクトは、カーボンクレジットの一部を創出メカニズムとして機能する「バッファー(buffer)」と呼ばれるプールにカーボンクレジットの一部を提供する。バッファーのクレジットは、木に吸収された二酸化炭素が放出されると取り消される。CarbonPlanの調査によると、火災によって、カリフォルニア州ETS(Emissions Trading System:排出量取引制度)に登録されている6つの森林プロジェクトが、2015年以降570万から680万トンの二酸化炭素を放出していたことがわかった。これは、100年以上にわたる火災のリスクに対して、すべての森林プロジェクトを保証するために用意された約600万トンのクレジットの少なくとも95%に相当する。本日現在、これらの火災に関連したバッファプールからの取り消しは、これを担当するCARB (カリフォルニア州大気資源局:California Air Resources Board)によって確認されていない。
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
今年31週目のAIB(Association of Issuing Bodies)再生可能エネルギー:

仲値=2.6800ユーロ(+0.0950ユーロ)

英国RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証書)の指標価格:
購入目安:15.00から17.00ポンド 売却目安:25.00から27.50ポンド

英国のバイオマス事業が政府補助金3,700万ポンドを獲得。 英国政府は、英国での持続可能なバイオマスの生産を拡大するため、Biomass Feedstocks Innovation Programmeのフェーズ2の下で政府資金3,200万ポンドを投入することを発表した。さらに500万ポンドは、バイオマスや廃棄物から水素を生成する革新的な新技術の支援に充てられる予定だ。この資金は、エレファントグラスの成長促進、ノース・ヨークシャー海岸での海藻の養殖、柳の収穫量向上などを含めた、さまざまなプロジェクトを支援する。大規模なエネルギーをバイオマスが供給できることは、2020年の英国総発電量の12.6%を占めたことから、すでに証明されている。

Truss氏とSunak氏は、太陽光発電所への土地利用を非難。 英国の両首相候補は、保守党の約73%が地上設置型太陽光発電 所を含む太陽光発電を支持しているにもかかわらず、太陽光発電を非難している。事業者団体であるSolar Energy UKは、同候補者らの意見は懸念すべきものであり、英国の世論とはかけ離れていると述べている。Truss氏とSunak氏は、ロシアのウクライナ侵攻による食糧安全保障の懸念から、食糧生産のための土地保全を主張している。しかし、BEIS(Department for Business, Energy and Industrial Strategy:ビジネス・エネルギー・産業戦略省)の最近の調査では、約80%以上の国民が地元地域に地上設置型の太陽光発電所を設置することに反対していないことも判明している。また、Solar Energy UKは、現在計画されている全ての太陽光発電所が建設されたとしても、英国の農地の約0.4%以下で、英国全体の土地面積の約0.28%以下にしかならないと言及している。また、太陽光発電は、野生生物への避難所や家畜を放牧するためのエリアの提供など、追加の利点もあると主張した。



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