取引低調ながらもEUA増。UKAに大きな逆風。
  • EUAの終値は73.26ユーロ。前週比11%増。8.20ユーロ幅で取り引き(前週は11.94ユーロ幅)。
  • 一連の買い戻しにより、一時的に大きく反発し、その後、価格は乱高下。ティメルマンスが EUAの上限価格規制の可能性を否定したことから、週半ばに若干上向いたものの、高値で売り意欲が高まり、利幅が減少。
  • エネルギー価格の上昇、電力配給制、需要の軟化が引き続き工業生産を圧迫。EUAの価格設定への影響が懸念される。
  • EUがガス以外の発電による電力に対して上限価格規制(180ユーロ/MWh)を導入へ。工業生産の減少に歯止めがかかる可能性はあるものの、5%のピーク需要カットも同時に提案されている(「その他のニュース」を参照)。
  • 市場は引き続き、リパワーEU計画が提案しているMSRの内容に注目。依然としてこれはEUA価格に対する大きなリスク。追加供給量は年間200億ユーロ相当、または今後4年間で2億5000万トンと推定される。一方、介入のリスクが市場センチメントを悪化させている模様。
  • マクロ的見通しは引き続き弱含み。アメリカが9月21日に0.75%の利上げを発表する予定。ECBも同様に0.75%の利上げを10月25日の会合で決定する見通し。
  • ウクライナ戦争勃発後、ノルウェーからヨーロッパへのガスの供給量は9%増加。現時点でヨーロッパ全土の需要量の20%相当。より長期のガス供給契約が締結される見込み。FSRU(オランダとドイツ)がガス供給を下支えしている。

オークションと弱含みのマクロ展望。市場展望:弱含み
  • UKAの終値は76.70ポンド。前週比約1%減。6.27ポンド幅で取引(前週は21.00ポンド幅)。
  • EUAに対するUKAのプレミアムの週間平均は19.10ユーロに減少(前週は26.77ユーロ)。図表2を参照。現在の全体のプレミアムは9.18ユーロ。
  • UKAはEUAの動向に追随し、週半ばに好転。その後、押し目買いによる下支えはあったものの、価格は下落した。
  • 企業向け電力料金が5倍以上に高騰したため(10月の契約更新後)、イギリスの工業生産が危機的状況に。公約された政府支援の発動は11月に延期される見込み。トラス首相が一般家庭向けと同等の支援を企業に提示(最低6ヵ月間)。超過利潤税の導入は見送り。9月23日に公表されるミニ予算案でその詳細が明らかに。
  • イギリスで不況の懸念が高まる中、9月22日に0.5%の利上げが実施される見込み。
  • 今週のオークションは9月21日。取引量は330万トン。余剰分追加後、約4%の増加(未割り当ての2022年航空排出枠)。

投資家の関心、一時停滞。
  • KFAグローバルカーボンETF(投資家の関心の指標)におけるEUAは約700万トン、UKAは約489,000トン。ともに横ばい。NAVは約8億3,900万ドル。

技術的な短期見通し:強含み
  • FuturesTechの次期レベル:70.02ユーロ、75.71ユーロがキーレベル(上下)
  • 推奨される取引:強気買いに依然としてメリットあり。

コンプライアンス市場に関するその他のニュース
  • EUがエネルギー企業を対象とした超過利潤税の導入を提案するも、ガスの上限価格規制は排除。冬季の電力需要に対応すべく、イギリスが3ヵ所で石炭火力発電所の稼働を延長。

ボランタリー炭素市場ニュース
  • GER(Global Emission Reduction)は前週比横ばい。アフリカ諸国政府、アフリカ大陸での炭素市場の開発に関心。

再生可能エネルギーニュース
  • EUのGOが約2%減少して3.68ユーロに。再生可能エネルギーへの移行で見込まれるコスト削減効果は2050年までに数兆ドル。2030年に向けた再生可能エネルギー導入目標45%を欧州議会が支持。
テクニカルな見通し‐強含み
Futurestechs Limited.の受賞アナリスト、クライブ・ランバートによる分析。
  • 短期傾向:強含み       
  • 昨日時点のローソク足チャート:昨日の弱含みは筋書き通りに回復せず。70ユーロに達したものの、まだ終わっていない。持ちこたえた価格が力強く支持。上げ相場で引き続きマークを維持する必要あり。
  • 推奨される取引 :強気買いに依然としてメリットあり。

石炭のマージン、引き続きガスに対して優勢。
  • 下記左の図はEUA、ドイツ電力、ARA石炭、TTF天然ガスの先物価格の推移。
    • 先週、Dec Y1 EUAは約11%上昇、Y1ドイツ電力は約2%下落、Y1 ARA石炭は約3%下落、Y1 TTFガスは約6%下落。
  • 下記右の図は石炭とガスを燃料源とするドイツの発電マージンの先物価格。
    • Y1石炭マージンは342ユーロ/MWh前後(前週比1%減)、Y1ガスマージンは152ユーロ/MWh前後(前週比15%増)。
    • ガスと比較し、発電燃料としての石炭は引き続き高利益。       

コンプライアンス市場に関するその他のニュース
EUがエネルギー企業を対象とした超過利潤税の導入を提案するも、ガスの上限価格規制は見送り。 ECが市場介入計画を公表。1,400億ユーロを超える予算で高騰するエネルギー価格から消費者を保護する。具体的には、非ガス発電業者の収益を制限し(2023年3月まで180ユーロ/MWh)、化石燃料生産者に課税する。EU諸国はECのこの提案を協議し、最終案に合意しなければならないが、9月30日のEUエネルギー相会議で合意に至るものと各国の外交官は見ている。なお、この計画にはロシアのガス価格を制限する措置は含まれていない。クレムリンがエネルギーの供給を完全停止する恐れがある中、冬季の供給を確保する上でガス価格の上限を包括的に規制すべきか否かについてはEU諸国の間で意見が分かれている。一方、ガス価格の引き下げに向けてノルウェーと交渉に入ったECは、ピーク時の電力需要の5%削減を各国に義務付けることを提案している。

冬季の電力需要に対応すべく、イギリスが3ヵ所で石炭火力発電所の稼働を延長。 ヨーロッパが天然ガスの不足に直面する中、クワシ・クワーテン財務大臣が石炭火力発電業者に段階的廃止の延長を要請。ラトクリフ石炭火力発電所1号基(発電容量500MW)は9月末に閉鎖される予定だったが、ユニパ―はあと2年、同基を稼働させる。EDFも今月閉鎖予定だったウェスト・バートンの発電施設を2023年3月まで稼働させる意向。バイオマス火力発電に注力するドラックスも同社最後の2基の石炭火力発電施設について同様の方針を発表している。 
ボランタリー炭素市場ニュース
GER (Global Emission Reduction)は前週比横ばい。
AirCarbon ExchangeのCET(CORSIA Eligible Token)は前週比3%減。GNT(Global Nature Token)は横ばい。

アフリカ諸国政府、アフリカ大陸での炭素市場の開発に関心。 アフリカには炭素を大量に吸収できる潜在能力があることから、アフリカ各国政府は成長する炭素市場に事業機会を見出している。「カーボンオフセットはアフリカにその自然資産の価値を活かす機会を与えるものだ」と、国連アフリカ経済委員会で気候部門を統括するジャン・ポール・アダムは述べている。カーボンクレジット計画の多くがアフリカをベースとしているにも関わらず、アフリカ大陸は炭素市場にほとんど参入できていない。2002年から2020年にかけて発行されたカーボンクレジットにおいてアフリカが占める割合は14%に過ぎないが、ガボンは2021年、森林保護によって炭素排出の削減を目指す「中央アフリカ森林イニシアチブ」から利益を得た最初のアフリカ国家となった(現在までに総額1,700万ドル)。 
再生可能エネルギーニュース
第37週 AIB再生可能エネルギー(本年):

仲値:3.6750ユーロ(0.0900ユーロ減)

UK RGGO気配値:
作物:15.50~17.00ポンド、廃棄物:26.00~30.00ポンド(横ばい)

再生可能エネルギーへの移行で見込まれるコスト削減効果は2050年までに数兆ドル。 2030年に向けた再生可能エネルギー導入目標45%を欧州議会が支持。オックスフォード大学の研究報告によると、化石燃料から再生可能エネルギーへの移行で見込まれるコスト削減効果は全世界で2050年までに12兆ドル。技術的進歩により、太陽光・風力発電のコストは年間約10%近く削減されていると同報告書は述べている。また、「イギリスで2050年までにネットゼロを達成するためのコストは1兆ポンド超」としたフィリップ・ハモンド前財務大臣の試算は過大であり、これが投資を抑制した可能性があるとも指摘している。

2030年に向けた再生可能エネルギー導入目標45%を欧州議会が支持。 欧州議会は9月14日、2030年時点のEUのエネルギーミックスに占める再生可能エネルギーの比率を45%とする案を投票で可決した。これにともない、EU27ヵ国で協議が行われ、今年中に決議が条文化される。この45%という目標は、6月に加盟国間で承認された40%を上回る比率。同目標が承認された場合、EUは現行の22%を2倍以上に拡大しなければならず、そのためには国境を越えた発電プロジェクトを各国で2件以上実施する必要がある。一方、欧州議会議員は一次木質バイオマスへの補助金の廃止を投票で可決し、EU目標において再生可能エネルギーと見なす木材の比率を「段階的に削減」することを求めている。



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