急な寒波がエネルギー・炭素市場を圧迫;価格が全面的に反転

  • EUAの終値は前週比約6.9%増の85.09 ユーロ。取引レンジは7.93ユーロに拡大(前週は5.57ユーロ)。
  • ガスと石炭の価格にともない、電力価格が年初来の安値から反発し、カーボンクレジット価格も上昇。
  • 寒冷な天候と再生可能エネルギー発電の低迷がガス市場に影響しているが、ヨーロッパのエネルギー貯蔵レベルは80%を維持している(前週は82%)。これは前年同月比で70%増。LNGの備蓄量は現在63%。
  • LNG価格が引き続生き圧力を受けており、フリーポートのLNGプラントが承認待ちで再開が遅れているにも関わらず、LNGは過去17ヵ月の最安値で取引されている。
  • 発電ミックスにおいて引き続きガスが石炭に追いつきつつある。前週24ユーロ/MWh だったマージン差は今週13ユーロ/MWhまで縮小。

寒冷な天候が価格を下支え;水曜に2023年2回目のオークション開催Redshaw社の見通し:弱含み
  • UKAの終値は前週比1.4%増の68.05 ポンド。取引レンジは4.18ポンドで安定(前週は4.01 ポンド)
  • UKAの対EUA週間平均ディスカウントは-5.51 ユーロ(前週は-3.46ユーロ)(チャートを参照)。
  • イギリスとヨーロッパ全土が寒波に見舞われる中、前週下落したUKAが部分的に回復。
  • 寒冷な気候と再生可能エネルギー発電の低迷により、エネルギー市場と並行してUKA価格が上昇。
  • イギリスのガス備蓄量は今週10%減で現在は88%の水準(LNGは49%で不変)。
  • インフレデータによると、価格は0.2%減で2022年は10.5%となった;イギリス株式市場は史上最高値近辺で推移;2月2日のイングランド銀行の会合が要注目。果たして直近の展開は利上げを緩和する材料として十分か。

投資家のEUA/UKA保有量、2週連続で変わらず
  • KFA Global Carbon ETF(投資家心理の指標)のEUA保有量とUKA保有量はともに横ばい。CCAとRGGIへの投資が延長されたことでNAV(Net Asset Value:純資産総額)は6億1,300万米ドルに増加。

技術的な短期見通し:横ばいから強含み
  • Futurestechの次期レベル:81.92と79.66 が水曜に残されたバキューム。83.10というその日のVPOC(Volume Price of Control)が下支えとなった。
  • 推奨される取引ロング

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • 穏やかな天候を受けてフランスの電力価格30%減の見通し。
  • 法的問題が残る中、EUの共同ガス購入プラットフォームをECが推進。

ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • GER(Global Emission Reduction)は前週比横ばい;管理団体IC-VCMが第3四半期までに認証カーボンクレジットを指定する意向。

再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • EUのGO(Guarantees of Origin:発電源証明)は約3.99%増の8.125ユーロ。北アイルランドの公共団体が洋上風力発電で100万世帯に電力を供給する計画を発表。
    太陽光発電はイギリスの投資家にとって「莫大」な利益(SSE)。
技術的見通し―横ばいから強含み
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
  • 短期傾向:横ばいから強含み
  • 昨日(2023年1月22日)までの相場動向:昨日の強気の開催でキーレベルが数多く取り戻された。特に「ダブル底」の買い信号となった82.58など。それにともなう大きな陽線は81.55で丸坊主。82.58 または81.55のいずれか一方がプルバックのサポートとしてホールドするのが理想的。水曜の上昇の後、これらのサポートレベルのいずれも懸念材料とはならず、金曜の指値は85.30。
  • 推奨される取引:もう一度ロングサイドで取引する時。
エネルギー需要が増加する中で市場が反発;ガスのマージンが急増。
  • 右記の図はEUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは約2.6%増。ドイツ電力は約11.2%減。ARA石炭は約1.6%減。TTFガスは約8.6%減。
  • 下記右の図は石炭とガスを燃料とする一年後の先物価格をもとにしたドイツの発電マージン。
    • Y1石炭のマージンは57.69/ユーロ/MWh 前後(今週5.1%増)、Y1ガスのマージンは44.86ユーロ/MWh 前後(今週43.64%増)
    • 寒波で電力価格が急騰し、ガスのマージンも40%以上増加。

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
穏やかな天候を受けてフランスの電力価格30%減の見通し。再生可能エネルギーのコンサルタント会社Volueによると、穏やかな天候の中で原子力発電も回復していることから、フランスの電力価格は今後2ヵ月で30%近く下落する見通し。気象モデルによると、今後3ヵ月でヨーロッパ全土の気温が例年を上回る確率は60~70%と推定されている。Volueの予測によると、来月の平均スポット価格は、最新の2月のベースロード取引価格を約38ユーロ下回る135.11ユーロ/MWh となる見込み。3月の平均スポット価格はさらに下がって111.74/MWhと予測されている。一方、REMITのデータを基に供給面を見ると、今年の国内の原子力発電量は46.1 GW(発電容量の75%)となる見込み。

法的問題が残る中、EUの共同ガス購入プラットフォームを欧州委員会(EC)が推進(montelnews.com): 入札手順を巡る法的問題が残る中、ECが共同ガス購入プラットフォームの設立に向け、新会社を立ち上げる計画を発表した。同プラットフォームを早急に設立し、ヨーロッパの総ガス需要量を今春にも明らかにしたい意向。新たなツールとして設立されるこのプラットフォームの目的は、エネルギーの安全保障に加え、今夏に向けてEUのガス貯蔵を確保することにある。2022年12月にEU非常事態宣言が新たに採択されたことを受け、ガス需要の15%(約135億立法メートル)以上の量を備蓄し、国際的にオファーを募ることで価格高騰から消費者を保護することがエネルギー事業者に義務付けられる。

ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報
GER(Global Emission Reduction)は今週1%増。
AirCarbon ExchangeのCET(CORSIA Eligible Token)とGNB(Global Nature-based Token)はともに横ばい。

ボランタリー炭素市場の管理団体IC-VCMがカーボンクレジットを対象としたコア炭素原則の認証スタンプの適用スケジュールを更新 ボランタリー炭素市場インテグリティ協議会(IC-VCM)が公聴会で得た5,000を超えるコメントを基にコア炭素原則(CCP)をこの3月に決定する。複数のステイクホルダーから成るIC-VCMは、高品質のカーボンクレジットの基準を新たに設定し、CCP関連書類と併せ、カーボンクレジット・プログラムの評価枠組を発表する意向。「CCP認定」プログラムの第一弾は第3四半期に発表される予定。これにともない、「CCP認定」が当該のカーボンクレジットに付与される。現行の REDD+ カーボンクレジットの一部について非常に批判的な記事が先週の英ガーディアン紙に掲載されたが、そうした中、IC-VCMの業務に加え、ボランタリー炭素市場のインテグリティを確保する試みは一層注目されることになるだろう。最大の管理団体であるVerraも本件に関する見解を表明している。

再生可能エネルギー市場に関する最新情報
第3週 AIB再生可能エネルギー(本年):

仲値=8.215 ユーロ(0.315 ユーロ増/3.99%増)

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:17.50~20.50ポンド、売却目安:29.50~32.00ポンド

北アイルランドの公共団体が洋上風力発電で100万世帯に電力を供給する計画を発表: 北アイルランド経済省とクラウン・エステートは北アイルランド(NI)での再生可能エネルギー容量を拡大すべく、風力発電施設を建設する。両者は現在、浮体式洋上風力タービンをアイルランド海に設置し、2030年から1GW相当を発電する計画を策定している。これにより、100万世帯に電力が供給される。この計画は、再生可能エネルギーミックスの多様化を通して低炭素電力の生産とエネルギー供給の長期的確保を目指す北アイルランドの公約の一環と位置づけられている。
 
太陽光発電はイギリスの投資家にとって「莫大」な利益(SSE): イギリスの公益事業であるスコティッシュ・アンド・サザン・エナジー(SSE)のディレクターが先週木曜にウェビナーで語ったところによると、今や太陽光はイギリスで最もコスト競争力のあるエネルギー源のひとつとなっており、投資家に「莫大」な利益をもたらす可能性を秘めている。SSEの太陽光発電・電池部門を統括するリチャード・ケイブ-ビグレーが言うように、「世界の総容量が倍になる毎にユニットのコストを20%以上削減できる」ことから、今後の投資拡大が見込める。市場参加者によると、イギリスが低炭素経済に移行する上で太陽光発電は中心的役割を果たすものと期待されており、特に蓄電池と併用すれば電力網への安定供給も図れる。イギリスは太陽光発電設備容量の2030年目標を50 GW、2035年目標を70GWと定めている。最新の産業データによると、現在の太陽光発電設備容量は約15.5 GWとなっている。
 




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