EUAはレンジ内推移、UKAは遅行

  • EUAsの終値は78.60ユーロ。前週比ほぼ横ばい。5.55ユーロの狭い範囲で取引された。 (前週は6.49ユーロ)。
  • 静かな市場の開始後、EUAは勢いを増し上値抵抗線の約80ユーロをかろうじて越えた。週半ば、オプション期限切れと戦争激化の懸念から価格圧力が生じた。薄商いの中、価格は週後半の押し目買いの下支えによりなんとか持ち直した。
  • ESMAの最終報告書はEU ETSに「大きな欠陥はない」としたが、カーボン・デリバィブにおけるポジション制限と、集中監視の強化を提案。
  • Pan Europeの天気予報によると今後1週間は寒さが増す(雨風が強くなることもある)見込み。これがエネルギーコンプレックスを支え、ガスストックの更なる引き下げを促進するものと思われる。
  • ドイツによるロシア産ガスの依存は2024年まで継続と予測される。ロシアは「非友好国」によるガス代の支払いにルーブルを要求。
  • EU首脳は購買力を高める為に、天然ガス・液化天然ガス(LNG)・水素の共同購入を確立し、域内競合を制限する事に合意した。
  • 復活を遂げる炭素。2021年の欧州の石炭火力発電は、前年同期比18%増加した。石炭火力は、メリットオーダーでも上位を維持している。ドイツは、以前から計画していた石炭火力フェーズアウトの時期を再検討し、現在は「理想的には」計画を維持することを目標としている。ドイツの石炭火力発電所の廃炉も、さらなる通告があるまではこれらの計画を停止する可能性があるとしている。
  • コンプライアンス・シーズン終了を控え、押し目買いが継続の見込み。日和見主義のバイヤーは、将来予測を下回る水準で今後何年か分をカバーすることを期待している。
  • スケジュールをチェック:Carbon Forward – 欧州最大の環境カンファレンスが、2022年10月12日~14日、ロンドンで開催。
今週は寒波 、オークションは開催されず– Redshaw社の見通し: 強気 

  • UKAは76.35ポンドで取引を終了、前週比約5%減、9.55ポンドのレンジで取引された(前週は5.69ポンド)
  • UKAとEUAのプレミアムの差の週間平均は13.10ユーロに縮小(先週は17.99ユーロ)。プレミアムの総額は6.20(チャート2参照)。
  • UKA は週初めから EUA を下回った。これは、オークションの強さと一部の押し目買いによって週半ばに逆転した。週の後半には価格は回復したが、終値では下落した。
  • コンプライアンス買いと予見不可能なCCMの介入が UKAの需要を後押ししている。UK ETSの協議に注目すべき(「その他のニュース」参照)
  • 次回は、320万トン分のオークションが4月6日に行われる。
投資家の関心が再び高まっている
     
  • KFA Global Carbon ETF(投資家のための指標)EUAの保有量は1.5%増の約980万トン、UKAの保有量は1.7%増の70.4万トンにとどまり、NAVは約13億米ドル。
テクニカルな短期見通し – 強気

  • Futurestechs社の次目標: 81.50ユーロを超えるブルを支持。
  • 好ましい取引:ディップ買い。
その他のコンプライアンスに関する最新情報

  • 英国は2024年のETSの上限調整を検討。ドイツ政府は石炭火力閉鎖の一時停止を望んでいる
ボランタリー炭素市場に関する最新情報

  • CET価格は前週比2%上昇。Occidental Petroleum社が世界最大のDAC(Direct Air Capture:直接空気回収)プロジェクトの建設に着手。
再生可能エネルギーに関する最新情報

  • EU GOs (原産地保証)は1.64ユーロでほぼ横ばい。フィンランドでは風力発電がエネルギー自給に不可欠との見方。
テクニカルな見通し - 強気

以下の分析は、受賞歴のあるClive Lambert 氏(Futurestechs社)によるものである。
  • 昨日(2022年3月27日)のチャート: 先週一番の動きは水曜日(3月23日)の売りがであったが、ブルとしてはどちらにせよ好都合であり、結局週間チャートでは同時線で終了した。 81.50ユーロ越えの動きでこの難局を解決するために、ブルを支持する。
  • 好ましい取引:ディップ買い。

石炭は主導的地位を固め、ガスのマージンはマイナス圏に転落

  • チャート5は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭、TTF天然ガスの価格推移を示したものである。
    • 先週のスポット価格は、EUAが0.5%上昇したのに対して、ガスが3.6%減、石炭が1.4%減。
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  • チャート6は、石炭とガスを燃料とするドイツの発電燃料マージンである。
    • Y1の石炭のマージンは約43ユーロ/MWh(今週20%上昇)、これに対しY1ガスのマージンは-0.4ユーロ/MWhと赤字。
    • 発電燃料としての石炭は、依然としてガスよりも収益性が高い。


その他のコンプライアンス市場ニュース

英国、2024年のETSの上限調整を視野に
英国政府は、ETSの変更に関する協議を開始した(2023年末に完了し、2026年までに実施される予定)。計画では、2021年から30年にかけて、UK ETSの排出枠上限を8.87億万~9.36億万の範囲に引き下げるというものである(現在の13.7億万から30~35%削減することを意味する)。これには、上限の毎年の引き下げだけでなく、2024年には「大胆な変更」もあり得る。無償排出枠は、全体の供給上限に対する割合として設定される可能性がある。CBAMは示唆されていない。価格コリドールもない。オークションの最低価格(ARP)は、段階的に廃止または代替される可能性がある。UK ETSは、2020年代半ばまでに船舶に、2020年代半ばから後半までに廃棄物焼却および廃棄物発電に拡大する可能性がある。航空会社は2026年、2028年もしくは2031年に、オークション方式に完全に移行する可能性がある。上流の石油・ガスによるCO2排出、メタンの直接放出、コールドフレアリング(cold flaring,)、メタンスリップ(methane slip)、漏洩排出(fugitive emissions)も含まれる可能性がある。持続可能性の基準は、バイオマス火力発電に適用される可能性がある。また、燃焼装置に関する現在の20MWの基準も引き上げられる可能性がある。

ドイツ政府は石炭休止の一時停止を望んでいる。ドイツ政府は、短期的にガス発電を減らすための措置の一環として、石炭火力発電所の待機時間を長くすることを目標としている。10月末までに約2.4GWの石炭火力発電所の閉鎖が予定されていたが、政府はさらなる通告があるまではこれらの計画を一時停止する可能性があると述べた。また、政府は“理想的には”2030年までに石炭を完全に廃止するという目標を堅持するとしている。

ボランタリー炭素市場のニュース

今週はCET価格が2%上昇:CET(CORSIA Eligible Token)が、Air Carbon Exchangeで取引される

ACXネイチャーベース価格は前週比7%下落。

Occidental Petroleum社が世界最大のDAC(Direct Air Capture:直接空気回収)の建設に着手

この施設には10億米ドルが投じられる予定で、大気中から年間100万トンのCO2を除去することを目標としている。このプロジェクトは、現在世界中で稼働している19のDAC全てを合わせたものの100倍の規模である。今月、Airbus社は、OccidentalのDACプラントから創出されるカーボンクレジットを購入する長期契約を開示した。Occidental Petroleum社は、2025年までに3つの炭素隔離の拠点を、2035年までにさらに69の小規模DAC施設を開発する計画もある。経営陣は、低炭素化事業の黒字化の予想時期についてコメントしていない。DACは今のところ、大規模な商業化には至っていない。
再生可能エネルギー市場に関する最新情報

今年の第12週目AIB再生可能エネルギー:

仲値 = 1.6400ユーロ(+0.0025ユーロ)

フィンランドでは、風力発電がエネルギーの自立に不可欠と考えられている。
ウクライナ侵攻後、ロシアからの化石燃料の輸入を減らすというEUの発表を受けて、フィンランド政府は自国のエネルギー自給率を高めることを決定した。フィンランドが風力発電を優先させたのは、グリーン水素製造というコベネフィットがあるからだ。2022年12月現在、フィンランドには合計962基の風力タービンがあり、総発電容量は3,257MWに達している。現在、フィンランドでは330以上の風力発電プロジェクトが建設中で、これによりさらに2,000MWの発電容量が追加される予定である。プロジェクトの大半はポフヤンマー(英名:Ostrobothnia)に位置しているが、フィンランド中央部や東部でも徐々に風力発電所の計画・建設が進んでいる。フィンランド風力発電協会(FWPA:The Finnish Wind Power Association)は、建設の障壁となっているのが計画と許認可のプロセスであると指摘している。行政裁判所のリソースを増やし、訴えを迅速に処理することが、フィンランドで風力発電をより早く普及させるカギとなるだろう。



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