EUA下落、UKAはかろうじて堅調

  • EUAの終値は77.91ユーロ。前週比14%減。13.05ユーロ幅で取引(前週は11.49ユーロ幅)。
  • 週初日に急落したEUAが8月中旬の増加分を相殺。週半ばの取引による下支えはあったものの、その効果は長続きせず、終値は再び下落した。
  • ガスプロムがノルドストリームの供給を無期限停止(G7が提案した原油価格上限設定への対抗措置である可能性)。これにともない、エネルギー配給制が前倒しされ、工業生産が減少することでEUAの需要の低下が見込まれる。
  • EUのエネルギー担当大臣が9月9日に会合の予定。EUAへの影響を探る市場。ドイツが非ガス発電事業者に超過利潤税を課し、増税(5ユーロ/CO2)を延期することを発表。
  • ロシアのLNGが中国(国内需要が緩和中)からヨーロッパに再輸出されており、これがヨーロッパのガス備蓄に貢献し、11月1日時点の目標量の80%以上(現在は82%)が確保されているようだが、冬季需要が低下する気配はなく、ノルドストリームの停止も持続する見通し。
  • ヨーロッパの電力需要は今後も石炭火力発電と石油火力発電に依存し、これがEUAの需要を下支えするものと予想される。
  • マクロ経済問題にともなう工業生産のさらなる減少もEUAの需要に影響する見通し。
  • EUのETS改革に向けた公式の三者会談が10月に延期の見通し。一方、EUの優先事項は計画エネルギー市場の改革。 
  • 今週のオークションは3日間のみのため、EUA価格が下支えされる見込み。

新首相の任命に注目集まる。市場展望:弱含み
  • UKAの終値は96.50ポンド。前週比1%減。6.08ポンド幅で取引(前週は6.00ポンド幅)
  • EUAに対するUKAのプレミアムの週間平均は30.75ユーロに拡大(前週は22.08ユーロ)。図表2を参照。現在の全体のプレミアムは8.76ユーロ。
  • EUAと同様、UKAも週初日に下落(EUAよりは堅調)。その後、弱含みの低調な取引が終了する前に価格は一時的に強く反発。
  • 固定価格の長期電力契約の多くが間もなく失効する中、イギリスの産業が冬季の操業停止を警告。停電で損害を被る一部の産業では恒久的な操業停止につながるリスクも。
  • トラス氏、9月5日に新首相に就任の予定。産業界への支援、電力市場への介入の可能性、その他の気候政策に市場の関心が集まる。
  • 今週のオークション‐9月7日に320万トンを予定

投資家の関心、再び後退
  • KFAグローバルカーボンETF(投資家のための指標)におけるEUAが約2%減少して7百万トンに。UKAも約2%減少して499,000トンに。NAVは約9億1,400万ドル。

技術的な短期見通し:弱含み
  • FuturesTechの次期予想水準:75.49ユーロおよび70.02ユーロは主要水準以下。
  • 推奨される取引:戻り売り

コンプライアンス市場に関するその他のニュース
  • 電力市場への緊急介入をEUが検討。中国がヨーロッパにLNGを販売。ロシアのLNGの焼却処分と石油制裁。 

ボランタリー炭素市場ニュース
  • GER(Global Emission Reduction)は前週比3%減。ブラジルがCerrado biome由来のカーボンクレジットを初めて発行。

再生可能エネルギーニュース
  • EUのGOが約17%増加して3.91ユーロに。ドイツがバルト海の再生可能エネルギー島との連携を確保。イギリスの太陽光発電計画の直近5年の非認可率、過去最高。
テクニカルな見通し‐強含み
Futurestechs Limited.の受賞アナリスト、クライブ・ランバートによる分析。
  • 短期傾向:弱含み       
  • 昨日時点のローソク足チャート:先週、91.15ユーロに回復しなかったことを下落相場が大いに歓迎。押し目価格は77.45ユーロ(価格抵抗線ベースとして今日始まったレベル)。弱含みの展開で75.49ユーロを注視(7月終わりの低調/反発)。これは高いレベル!
  • 推奨される取引 :戻り売り

電力価格の下落(ガス価格の下落と連動)がマージンを圧迫するも、以前として石炭が優勢。
  • 下記左の図はEUA、ドイツ電力、ARA石炭、TTF天然ガスの先物価格の推移。
    • 先週、Dec Y1 EUAは約14%下落、Y1ドイツ電力は約47%下落、Y1 ARA石炭は約2%上昇、Y1 TTFガスは約42%下落。
  • 下記右の図は石炭とガスを燃料源とするドイツの発電マージンの先物価格。
    • Y1石炭マージンは330ユーロ/MWh前後(前週比48%減)、ガスマージンは148ユーロ/MWh前後(前週比32%増)
    • ガスと比較し、発電燃料としての石炭は引き続きコスト的に有利。       

コンプライアンス市場に関するその他のニュース
EUが電力市場への緊急介入を検討。 ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長が電力市場への緊急介入を警告している。アナリストによると、具体的には次の方法のいずれか、または両方の導入が予想される。1)電力価格上限規制(6月にスペインとポルトガルで導入済み)、2)電力市場の2分割(発電コストベース)と消費者による加重平均価格の支払い。これらに加え、「pay as cleared」から「pay as bid」方式への電力市場システムの変更も選択肢となり、補助金スキームの導入も考えられるが、電力価格上限規制または超過利潤税(あるいはその両方)の可能性が最も高いとアナリストは見ている。ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、エネルギー価格の上限規制に関する欧州委員会の考えを9月14日の声明の中で説明する予定。 

中国がヨーロッパにLNGを販売。ロシアのLNGの焼却処分と石油制裁。 中国経済の減速により(コロナ禍にともなう制限が一因)、ロシアのLNGが中国からヨーロッパに再輸出されている。これが持続すれば、ノルドストリームの供給が中断する中、結果的にヨーロッパは強力に支援されることになる。一方、ロシア・フィンランド国境のノルドストリームの入口で「異常に大規模」な炎が衛星画像から確認されており、LNGの輸出が制限される中、生産を止めずにこれを燃焼させる戦略と考えられる。ロシアの国内備蓄は満タン状態と予想されるが、G7はロシアの原油に25~30ドル/バレルという上限価格を設定する構えだ(ロシアの生産コストは3~4ドル/バレル)。ただし、これはEU加盟国の全会一致が条件となるだろう。こうした動きがノルドストリームの供給停止につながった可能性がある。
ボランタリー炭素市場ニュース
GER(Global Emission Reduction)は前週比3%減。
AirCarbon ExchangeのCET(CORSIA Eligible Token)は前週比6%減。GNT(Global Nature Token)は前週比1%増。

ブラジルがCerrado biome由来のカーボンクレジットを初めて発行。 ブラジルのアルミニウム製造会社Companhia Brasileira de Aluminioとプロジェクト開発主体のReservas VotorantimがCerrado biome(広大な熱帯生態系)由来のカーボンクレジットを中南米で初めて発行する。Reservas Votorantimは11,500ヘクタールの土地を認証しており、これは年間で推定5万カーボンクレジットに相当する。 10~18ドル/トンとされるアマゾン由来のクレジット価値を基準にすると、クレジットの初回提供分(316,000)から得られる収益は少なくとも500万ドルと両社は見ている。しかし、Reservas VotorantimのDavid Canassa取締役によると、大豆栽培に代え、森林保護をCerradoの農民に奨励するには40ドル/トンがクレジットの採算ラインとなる。
再生可能エネルギーニュース
第35週 AIB再生可能エネルギー(本年):

仲値:3.9100ユーロ(0.5800ユーロ増)

UK RGGO気配値:
作物:15.50~17.00ポンド、廃棄物:26.00~30.00ポンド

ドイツがバルト海の再生可能エネルギー島との連携を確保。 デンマーク領ボルンホルム島の沖合で計画されている洋上風力発電拠点と本土との連携がドイツで承認された。ロシアのエネルギーへの依存度を下げることが狙い。2030年までにバルト海の複数の洋上風力発電所を同拠点と連携させ、全体で3GW 以上を発電する。これはドイツ国内の450万世帯の電力需要に相当し、ドイツ本土とは470 kmの電力ケーブルで接続される。ボルンホルム・エネルギー島はデンマークの大規模計画の一環であり、国内の洋上風力発電量を2030年までに5倍増させる計画。 

イギリスの太陽光発電計画の直近5年の非認可率、過去最高。 計画立案・開発のコンサルタント会社Turleyによると、イングランド・ウェールズ・スコットランドの23カ所で計画されている風力発電施設の建設が2021年1月から2022年7月にかけて認可されていない。これらのプロジェクトで生産される再生可能エネルギーは147,000世帯の年間電力需要に相当し、電気料金が毎年1億ポンド削減される見込みだった。こうした不認可は2021年初頭から急増している。なお、2017年~2020年の間に認可されなかったプロジェクトは4件のみ。保守党の首相候補による最近のコメントからも、不認可案件は今後さらに増加するのではないかとの懸念が広がっている。一方、シンクタンクのGreen Allianceのアナリストによると、認可されなかったプロジェクトはいずれも出力30MW以上の大規模風力発電施設であり、これが不認可の原因と考えられる。小規模の風力発電計画は比較的認可されやすい。



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