EUAは改革に向けた決定待ち。UKAは高値から下落。

  • EUAの終値は前週比約0.1%増の87.73ユーロ。取引レンジは4.15ユーロに大幅縮小(前週は11.88ユーロ)。
  • 突然の寒波の影響について見解が分かれる中、今週の炭素・エネルギー市場は混沌の様相。
  • ヨーロッパが予想以上に上手く寒波に対処していることから、石炭備蓄量は過去2ヵ月で最高の水準。ガスの貯蔵レベルも90%を維持。
  • 市場ポジショニングにより、12月22日のオプション期限(12月14日)と12月22日の先物期限(12月19日)を前に値動きが引き続き活発化する見込み(クリスマス休暇中のオークション休催期間12月20日~1月6日を含む)。
  • EU各国のエネルギー担当相はECの提案した「オランダのTTFガス価格の上限規制」を12月13日に決定する見通し(12月15日のEU首脳サミット前)。
  • 市場はEU ETSの改革を巡る三者会談の結果待ち。CBAM、リパワーEU計画、EU ETS、社会気候基金について週を通して討議が行われるが、現時点で意見は分かれたまま。 最終的な発表は12月18日の予定。
  • 3中央銀行による会議が行われている中、市場はさらに変動する見込み。

2022年最後のオークション - 米国・イギリス間の取引でガス供給が強化。 Redshaw社の見通し:横ばい
  • UKAの終値は前週比5.4%減の75.00ポンド。取引レンジは7.05 ポンドに縮小(前週は11.55ポンド)。
  • UKAの対EUAの週間平均プレミアムは1.81ユーロ(前週は0.92ユーロ)。(チャートを参照)。
  • 月曜に80ポンドが試みられた後、売り手が高値に誘われた結果、相場は再び75ポンドまで下落。
  • 寒波は12月末まで続く見込み。電力市場に影響が予想される。
  • イギリスのガス貯蔵量は引き続き100%(ヨーロッパで最高)の水準にあるが、LNGは49%まで減少(ヨーロッパで最低)。
  • 今週の急な寒波に対処すべく、イギリスのナショナル・グリッドが緊急措置の一環として石炭火力発電所を再稼働の意向。ヨーロッパからの電力輸入が途絶えた場合の最後の手段として、ヨークシャーの2つの石炭火力発電所が稼働態勢。イギリス全土の停電を防止する計画。
  • 2022年最後のオークションは12月14日(330万トン)。2023年最初のオークションは1月11日(320万トン)。

投資家の関心上向き
  • KFA Global Carbon ETF(投資家心理の指標)のEUA保有量は約2.3%減の480万トン。UKA保有量は404,000トンに減少。NAV(Net Asset Value:純資産総額)も7億7,500万米ドルに減少。

技術的な短期見通し:強含み
  • Futurestechの次期レベル:82.58 ユーロ、85.80ユーロとなった後、99.22ユーロが視野。
    推奨される取引:押し目買い

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • フランスの11月の電力輸入量が過去最高を記録。
  • 米国・イギリス間のLNG取引で両国関係が強化される一方でヨーロッパへの依存度が低下

ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • GER(Global Emission Reduction)は前週比14%減。ロンドン証券取引所が新たなVCM枠組に基づく投資ファンドの第一号認証を発表。

再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • EUのGO(Guarantees of Origin:発電源証明)は 36.9%減のの6.15ユーロ GO価格が暴落。スペインで新しいグリーン水素発電所を建設。
テクニカルな見通し‐強含み
Futurestechs Limited.の受賞アナリスト、クライブ・ランバートによる分析。
  • 短期傾向:強含み
  • 昨日(2022年12月11日)までの相場動向ロールオーバー迫る。90ユーロも近し。90.00ユーロ弱で引き続き上下して金曜に陰線。再び 86.70ユーロ に下落し、買い手に有利となった。
  • 推奨される取引:押し目買い
石炭とガスのマージンが引き続き上昇傾向。収益性で石炭が有利。
  • 右記の図はEUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは約0.1%増。ドイツ電力は約0.1%増、ARA石炭は約3.9%%減、TTFガスは約1.9%%増。
  • 右記の図は石炭とガスを燃料とする一年後の先物価格をもとにしたドイツの発電マージン。
    • Y1石炭のマージンは218.94/ユーロ/MWh前後(今週 4.5%増)、Y1ガスのマージンは105.26ユーロ/MWh前後(今週2.1%増)。
    • 発電用燃料としての石炭は引き続きガスより収益性が高い。

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
フランスの11月の電力輸入量が過去最高を記録 急な寒波の到来と原子力発電所の停止により、フランスの先月の電力輸入量が過去最高を記録。 11月19日の輸入量は 15.8 GWに達した。フランスは年初来、正味14.5 TWhの電力を輸入している。昨年同時期、フランスは49.7 TWhを供給する電力の純輸出国だった。11月の輸入量の内訳を見ると、ドイツが最も多く(9.3 GW)、スペイン(3.5 GW)、イギリス(3 GW)がこれに次いでいる。フランスでは先月、原子力発電所の発電量が設備容量の52%程度であったため、実績は前年比約30%減の8.9 TWhにとどまった。一方、モンテルが公表したデータによると、国内の電力需要も前年比18.4%減となっている。

米国・イギリス間のLNG取引で両国関係が強化される一方でヨーロッパへの依存度が低下 イギリスのスナク首相が米国と合意し、2023年のLNG(液化天然ガス)の輸入量を倍増する。ヨーロッパへの依存度を下げるのが狙い。90~100億立法メートルという契約量はイギリスの年間消費量の12.5%に相当する。両国間のこの合意により、スナク首相とバイデン大統領はより強固な国際システムを築き、エネルギー市場の安定を図る。しかし、インベステックのアナリストによると、需要が高騰する中、同計画で電力卸売価格が大幅に下がる可能性は低い。

ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報
GER(Global Emission Reduction)は前週比14%減。
AirCarbon ExchangeのCET(CORSIA Eligible Token)は前週比11%減。減GNB(Global Nature-based Token)は横ばい。

ロンドン証券取引所(LSE)が新たなVCM枠組に基づく投資ファンドの第一号認証を発表。 LSEが新たなVCM枠組に基づく投資ファンドの第一号認証をForesight Sustainable Forestry Company(FSF)に付与することを発表した。ロンドンを本拠とする投資会社であるFSFは商業林の開発に投資しており、 現在、イギリス国内の27ヶ所で植林事業を展開している。ファンドが認証されたことを受け、FSFは開示要件に基づき、VCMの透明性の向上を目指す考えだ。開示要件には、気候変動緩和プロジェクトに投資する資産の比率やそれらのプロジェクトを認証する業界基準等が含まれる。LSEは世界の証券取引所に先駆け、カーボンクレジットを創出する気候変動緩和プロジェクトの資金調達を公開株式市場の枠組で支援することになる。なお、投資家には現金に代わり、カーボンクレジットで配当が支払われる。

再生可能エネルギー市場に関する最新情報
第49週 AIB再生可能エネルギー(本年):

仲値:6.15ユーロ(3.60 ユーロ減/36.9%減)

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
作物:15.50~17.50ポンド、売却目安:28.50~31.00ポンド

供給拡大と需要減退でGO価格が暴落 この1週間、予想外の供給の拡大と需要の減退を受けて戻り売りが続いた結果、GO(原産地証明)価格が下落した。前回のCal 22水力電力価格は7~7.35ユーロ/MWhで取引されている。過去最高値となった前週の10/MWhから約25%下落したことになるが、 他の再生可能エネルギー電力の価格ではさらに下落幅が大きい。某再生可能エネルギー企業のトップによると、Cal22水力電力の供給量は今後さらに増加する可能性があり、そうした中、売り手は事態を「回避」している。また、ある業者によると、ここ数ヵ月の価格の上昇は基本的な需給バランスよりは投機によるところが大きい。
 
ナタージュ・レプソル・レガノサが200 MW規模のグリーン水素プラントの建設計画を発表 スペインの複数のエネルギー企業が石炭火力発電所の跡地に再生可能水素の生産拠点を建設する計画を発表した。まず年間30,000トンを生産を目指す。2025年から30 MW を発電する計画だが、 プロジェクト完成後は200 MW規模に拡大される。この新プラントは、2050年までに排出のネットゼロを目指すレプソルの戦略の一環。再生可能水素はレプソルの重点領域となっている。
 




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