リパワーEU計画の決定と温暖な気候を受けて排出枠価格が下落

  • EUAの終値は前週比約4.7%減の83.63 ユーロ。取引レンジは7.35ユーロに拡大(前週は4.15ユーロ)。
  • 温暖な気候に戻って炭素・エネルギー市場は下落傾向。
  • EU各国が需要を大幅に抑制したことにより、ヨーロッパのガス・石炭備蓄は引き続き潤沢。石炭の備蓄量は過去2ヵ月の高水準から3%の減少に留まっており、ガス備蓄量も86%を維持している。
  • 12月22日の先物取引期限(12月19日)とクリスマス休暇中のオークションの休催(12月20日~1月6日を含む)を前に市場ポジショニングはほぼ確保。
  • EU各国エネルギー担当相、ECが提案した「オランダのTTFガス価格の上限規制」に関する決定を持ち越し。12月19日(月)に引き続き協議。
  • EU ETSの改革を巡るマラソン三者会談が意欲的な目標を掲げて終了。2030年までに排出を2005年比で62%削減(当初の40%および予測された61%を上回る目標)。建物と輸送部門を対象とするETS IIを切り離すことでも合意。
  • インフレの緩和にもかかわらず、3中央銀行が金利を50ベーシスポイント(0.5%)引き上げた結果、株式市場が急落。

イギリスの気候が再び温暖化:クリスマス休暇の小休止Redshaw社の見通し:横ばいから強含み
  • UKAの終値は前週比約5.92%減の70.56 ポンド。取引レンジは7.20 ポンドにわずかに拡大(前週は7.05 ポンド)。
  • UKAの対EUAの週間平均プレミアムは3.83ユーロに拡大(前週は1.81 ユーロ)。(チャートを参照)。
  • 70ポンド以下で安値売りが続いた結果、木曜と金曜にわずかに反発したものの、2022年最後のオークション期間中に底値に到達。
  • 来週の天気は反転。予報では気温13度。
  • 寒波でイギリスのガス備蓄量は20%減(現在の80%はスロバキアと並んでヨーロッパ最低水準)。一方、LNG備蓄量は49%のまま(同様にヨーロッパ最低水準)。
  • 2022年のオークションは終了。2023年最初のオークションは1月11日開催で320万トンの予定。

投資家の関心再び上向き
  • KFA Global Carbon ETF(投資家心理の指標)のEUA保有量引き続き減少。約10.5%減の430万トン。UKA保有量も394,000トンに減少。NAV(Net Asset Value:純資産総額)も7億3,800万米ドルに減少。

技術的な短期見通し:強含み
  • Futurestechの次期レベル:12月23日、94.00ユーロで高値に到達。 これにより、99.22ユーロと101.95.ユーロを維持。下落傾向としては86.67ユーロが重要な目安。
    推奨される取引:双方向取引の余地あり86.67を境にショートを推奨。

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • 欧州議会議員とEU各国政府が産業部門の排出の削減と気候に優しい技術への投資に合意。
  • 米ICEが上限価格設定に懸念、ガス取引拠点をEU域外へ移転か。

ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • GER(Global Emission Reduction)は前週比3%減。ISDAがカーボンクレジットの取引基準を示す文書を発表。

再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • EUのGO(Guarantees of Origin:発電源証明)は約3.7%減の5.92ユーロ。2020年のドイツの電力需要に占める再生可能エネルギーの割合は47%。ノルスク・ハイドロが1TWh規模の陸上風力発電施設の建設を計画。
テクニカルな見通し‐強含み
Futurestechs Limited.の受賞アナリスト、クライブ・ランバートによる分析。
  • 短期傾向:強含み
  • 昨日(2022年12月18日)までの相場動向:金曜に陰線が増加。12月23日のチャートでは4回連続で陰線が出現し、11月21日以来、ほぼ完璧な38.2%のリトレースメントとなる。フィボナッチ水準は86.67。86.69 は金曜の最安値。もしこのレベルを下回れば、さらなる下落が見込まれる。予想で82.92から82.15へ。
  • 推奨される取引:双方向取引の余地あり86.67 ユーロを境にショートを推奨。
エネルギー価格の下落で石炭とガスのマージンが急落するも、引き続き石炭が優勢。
  • 右記の図はEUA、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは約4.7%減。ドイツ電力は約20%減、ARA石炭は約21%減、TTFガスは22%減。
  • 右記の図は石炭とガスを燃料とする一年後の先物価格をもとにしたドイツの発電マージン。
    • Y1石炭のマージンは186.99ユーロ/MWh前後(今週 14.6%減)、Y1ガスのマージンは67.26ユーロ/MWh前後(今週36.1%減)。
    • 発電用燃料としての石炭は引き続きガスより収益性が高い。

コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
欧州議会議員とEU各国政府が産業部門の排出の削減と気候に優しい技術への投資に合意EU議員が日曜、ETSの対象となる部門からの排出を2030年までに62%削減(2005年比)することで合意した。この意欲的な目標を達成するには、CO2換算で2024年に9,000万トン分、さらに2026年に2,700万トン分の排出枠を削減しなければならない。これと併せ、毎年の排出上限の削減率(現在は2.2%)を2024~2027年において4.3%、2028~2030年において4.4%とすることで合意に至った。また、ETSにおいて最も排出量の多い産業に付与される無償割り当ては2034年までに段階的に廃止される。さらに、無償割り当てに代わるカーボンリーケージ対策として、2034年の完全移行に向け、CBAM(炭素国境調整メカニズム)が2026年から部分的に導入さる。一方、気候にや優しい投資に加え、新規ETS IIが道路交通・建物部門に別途適用される。なお、ETS IIは45ユーロ上限価格と併せて導入される予定となっている。

米ICEが上限価格設定に懸念、ガス取引拠点をEU域外へ移転か インターコンチネンタル取引所(ICE) が警告するところによると、上限価格を設定すれば、リスクマネジメント上の懸念により、トレーダーは市場から排除されることになるかもしれない。具体的には、市場参加者が上限価格を織り込んで現在の価格とリスクモデルを再評価することにより、市場の変動性が著しく高まり、ガスの先物取引に影響が及ぶ可能性が指摘されている。IEU首脳が上限価格を承認した場合に備え、ICEはあらゆるオプションを検討している。これには、オランダまたはヨーロッパがTTF契約のハブとして今後も妥当か否かの評価も含まれている。

ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報
GER(Global Emission Reduction)は前週比3%減
AirCarbon ExchangeのCET(CORSIA Eligible Token)は前週比4%増。減GNB(Global Nature-based Token)は横ばい。

国際スワップ・デリバティブズ協会(ISDA)が認証カーボンクレジットの取引基準を示す文書を発表 ISDAが今回発表した文書には認証カーボンクレジット取引の規定に加え、スポット・先物・オプション契約のテンプレートも含まれている。同文書の目的は、基準と登録の両面でカーボンクレジットの取引を円滑化することにある。これは、グリーン経済への移行を支援するISDAの最新の発表であり、持続可能性に関わる金融派生商品市場についての業務も記されている。ISDAのキャサリン・テュー・ダラス相談役は、法的明確性と一貫性をともなう「確固たる基準」の必要性を強調している。今回の発表は、コンプライアンス市場とボランタリー炭素市場に向けた考察と提言を求めるために証券監督者国際機構(IOSCO)が先月開いた公聴会に続いて行われた。

再生可能エネルギー市場に関する最新情報
第50週 AIB再生可能エネルギー(本年):

仲値:5.93ユーロ(0.23 ユーロ減/3.7%減)

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
作物:15.50~17.50ポンド、売却目安:28.50~31.00ポンド

ドイツの電力需要に占める再生可能エネルギーの割合は47%(montelnews.com) ドイツ連邦エネルギー・水道事業連盟(BDEW)が月曜に発表したところによると、2020年のドイツの電力需要に占める再生可能エネルギーの割合は、2019年から3.8 ポイント増の 46.3%となっている。なお、増加の一因は、コロナウィルス危機にともなう需要減にあるとのこと。この高い割合は、ヨーロッパ最大の経済圏であるドイツが風力・太陽光発電を拡大し、火力発電所からの温暖化ガスの排出を削減した成果といえる。また、事業者が輸送網において再生可能エネルギーのフィードインタリフに対応したことに加え、コロナによる影響も作用した。ドイツは2030年までに電力構成に占める再生可能エネルギーの割合を65%まで引き上げる計画。それに向け、グリーン法令の改革案を今週中にまとめる。
 
ノルスク・ハイドロが1 TWh規模の陸上風力発電施設の建設を計画(montelnews.com) ノルウェーのアルミ大手ノルスク・ハイドロがエビニーおよび風力発電開発事業者のゼファーと提携し、ノルウェー西部で1 TWh/年規模の陸上風力発電施設を建設し、地元の産業に電力を供給する。同社が月曜にモンテルに伝えたところによると、総投資額は30~40億クローネ(2億8,600万~3億8,100万ユーロ)に達する。同社によると、ノルウェー西部のアルミ精錬所は安定した電力の長期供給を必要としており、今後、十分な電力を安価に供給するには陸上風力発電が唯一の方法とのこと。しかし、このプロジェクトの実施にはヘイヤンゲルとサンフィヨルドの自治体による最終合意が必要とされている。
 




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