2023-11-06
爆弾低気圧キアランでヨーロッパ大陸とイギリスの再生可能エネルギー発電量が増加;弱気のファンダメンタルズと投機売りでEUAが2023年の最安値となる一方、肌寒い天気でUKAは堅調。
- EUAの終値は前週比2.7%減の77.20ユーロ。取引レンジは4.76ユーロに拡大(前週は2.20ユーロ)。回復を試みるも、繰り返し売り意欲が高まり、ボラティリティの上昇とともに直近の下落傾向が継続。木曜に日中ボラティリティが高まると、直近12ヵ月の最安値となる76.24ユーロまで下落。これで買い意欲が高まり、同日取引終了前に79.06ユーロまで上昇。強気の反転パターンとなった。しかし、この傾向は持続せず、金曜に週最大の陰線が出現し、弱気が市場を支配した。
- 日中平均ボラティリティは2.26ユーロに倍増(先週は1.23ユーロ)
- ガス貯蔵量はほぼフル状態の99.55%。
- ノルウェーのガス:EUへの供給量は前週の3億1,550万立法メートル/日に対して今週は3億3,250万立法メートル/日。
- EUのLNG価格は直近3週間の最安値(13.91/MMbtu)を上回る14.30ドル/MMbtuで安定。EUへの週間輸入量は前月比30%増となった10月に続き、直近5ヵ月で最高となる32億立法メートルに到達。現在の貯蔵レベルは67%(前週は61%)。
- 次のテクニカルなサポートレベルは76.24ユーロ、73.78ユーロ、67.11ユーロ。注目すべきレジスタンスレベルは79.74ユーロ、81.03ユーロ、86.60ユーロ。
- データ:米国FEDが金利引き上げサイクルを停止。ドイツのインフレデータは水曜に発表の予定。
- UKAの終値は0.20ポンド増(0.5%増)の37.80ポンドでほぼ不変。直近の下落傾向で買い意欲がやや高まり、水曜のオークションでボラティリティが最高レベルに。日中平均ボラティリティは1.66ポンドに上昇したが(前週は1.42ポンド)、取引レンジは3.41ポンドに縮小(前週は4.52ポンド)。
- 爆弾低気圧キアランで風力発電量が35%増(前週は26.7%増)となり、イギリスのガス貯蔵量は99%に回復(前週は93%)。
- EUAに対するUKAの週平均スプレッドは0.4%拡大:前週の-34.71ユーロに対し、今週は-34.84ユーロ(チャートを参照)。
- データ:金利は不変。GDPと製造データの発表は金曜。
- サポートレベルは36.34ポンドと33.50ポンド。レジスタンスレベルは39.74ポンド、42.88ポンド、続いて45.32ポンド。
- KFA Global Carbon ETFの保有量はEUAで2.2%減、UKAで1.7%減。NAV(Net Asset Value:純資産総額)は2.5%減の4億6,200万米ドル。
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
- 2023年の AIB GOは最大で8%増;船腹不足でニュージャージー州初の洋上風力発電プロジェクトが頓挫。




技術的見通し
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
- 短期傾向:弱含み
- 中期傾向:横ばい
- 昨日(2023年11月5日)までの相場動向先週の疑問を持ち越してのスタート。すなわち、先週木曜のセッションは年末に向けた回復基調の重要な始点となるか?それとも、弱気を支持し、73.78ユーロ、72.38ユーロ、71.28ユーロを明確なサポートレベルと見るか?79.75~80.20ユーロまで回復しない限り、当面は後者の見解を支持。 推奨取引:戻り売り

EUのガス貯蔵量が100%に近づく中、冬季に向けた懸念は低下;地政学的リスクは存続
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
- 右記の図(上)は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
- Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、EUAは2.7%減。ドイツ電力は5.9%減。ARA石炭は6.5%減。TTFガスは9.2%減。
- 右記の図(下)は石炭とガスを燃料とする一年後の先物価格をもとにしたドイツの発電マージン。
- Y1石炭のマージン(効率42%)は38.56ユーロ/MWh 前後(今週14%増)、Y1ガスのマージン(効率59%)は30.40ユーロ/MWh 前後(今週35.77%増)。
- メリットオーダーでは引き続き石炭がトップ。ガスと電力も改善の方向。
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
ドイツのエネルギー需要は12月初めまで低迷する見通し:ドイツのエネルギー需要は12月初めまで低迷する見通し 温暖で雨模様の天気により、来月のドイツの暖房需要は低下する見通し。予報によると、平年と比較した気温の上昇は次週が1~2℃、その後3週間は1℃前後。今後4~5週間を見ても寒冷化する可能性は低い。温暖な天気にともない、降雨量も増えるが、予報期間の最終週にはやや乾燥する見通し。また、今週初めのドイツの風力発電量は平均で30~35GWに増加するものの、週後半には10~20GWとなる模様。一方、次週の太陽光発電量は平年を0.4GW下回り、その後の週も0.1~0.2GW減少する見通し。ロシアからのパイプラインによる供給が中断する中、昨年同様にガスの貯蔵を計画するドイツにとって、この天気予報は重要な意味を持っている。この冬の寒さが厳しくなれば、最悪の場合、ガス貯蔵量は2%まで激減するとドイツ連邦ネットワーク局(BNA)は警告している。
COP28開催前に「損失と損害」基金の創設を国連が合意:国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)のもとに「損失と損害」に取り組む移行委員会がCOP28を前に「損失と損害」支援基金の創設に向けた一連の提言に合意した。COP28の議長を務めるスルタン・アーメド・アル・ジェイバー博士は多国間交渉の成果を強調している。これにより、膠着状態が打開され、明確な提言に向けた基盤が整った。エジプトのシャルム・エル・シェイクで開かれたCOP27において合意された同基金は、気候変動による損害に対処する目的で国連が設けた初の基金。同基金の発動にともない、気候変動による甚大なリスクに対して特に脆弱な国々に資金が提供され、損害からの復興が支援される。今回の提言により、危機にさらされる数十億人の人々とその生活が保護されることになるだろう。合意に当たり、重要な役割を果たしたのは汚共同進行役のOuti Honkatukia氏(フィンランド)とRichard Sherman氏(南アフリカ)含む移行委員会。合意された提言はCOP28に先立ち、各国政府間で共有され、同基金の設立と発動が保証される。



ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報
先週、N-GEO(ネイチャーベースのGEO)は前週37%増。
GER (Global Emission Reduction) は3%増。AO500(AiedOffsets500 index)も4%増。
カーボンクレジット・プロジェクトに関するパリ協定第6条第4項の最終決定に向けて国連への圧力高まる:パリ協定第6条第4項に関する国連の監督機関グループが先週再び会合を開いた。クリーン開発メカニズム(CDM)に代わる持続可能な開発メカニズム(SDM)をもとにカーボン・プロジェクトを承認する際の基準を決定することが目的。10月30日から11月2日にかけ、ドイツのボンで開かれた同会合は、COP28での承認に間に合わせるための最後の会合となった。最終決定に至る成果は得られなかったものの、具体的な方法論と指針を決定すべく、事前の話し合いに締約国が事実上同意していることから、COP28を前に合意に至る可能性はまだ残されている。そうなった場合、パリ協定第6条第4項にもとづくプロジェクトの登録は来年、カーボンクレジットの発行は2025年から始まる可能性がある。
先週、N-GEO(ネイチャーベースのGEO)は前週37%増。
GER (Global Emission Reduction) は3%増。AO500(AiedOffsets500 index)も4%増。
カーボンクレジット・プロジェクトに関するパリ協定第6条第4項の最終決定に向けて国連への圧力高まる:パリ協定第6条第4項に関する国連の監督機関グループが先週再び会合を開いた。クリーン開発メカニズム(CDM)に代わる持続可能な開発メカニズム(SDM)をもとにカーボン・プロジェクトを承認する際の基準を決定することが目的。10月30日から11月2日にかけ、ドイツのボンで開かれた同会合は、COP28での承認に間に合わせるための最後の会合となった。最終決定に至る成果は得られなかったものの、具体的な方法論と指針を決定すべく、事前の話し合いに締約国が事実上同意していることから、COP28を前に合意に至る可能性はまだ残されている。そうなった場合、パリ協定第6条第4項にもとづくプロジェクトの登録は来年、カーボンクレジットの発行は2025年から始まる可能性がある。

再生可能エネルギー市場に関する最新情報
第44週 AIB再生可能エネルギー(本年):
仲値 =4.000ユーロ (+0.295ユーロ/+7.96%)
UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:23.50~25.50ポンド、売却目安:32.50~34.50ポンド
UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP22: 22ポンド; CP23: 18ポンド; CP24: 17ポンド; CP25: 15ポンド
船腹不足でニュージャージー州初の洋上風力発電プロジェクトが頓挫: デンマークのエネルギー企業オーステッドがニュージャージー州沖の2件のオーシャン・ウインド・プロジェクトの中止を発表した。建設に必須の船腹を確保できないことが原因。マッツ・ニッパー最高経営責任者によると、全市場におよぶ船腹調達の著しい遅延がドミノ効果となってプロジェクト全体が数年遅れ、プロジェクトのすべてまたはかなりの部分について当初を大幅に上回る価格で再契約しなければならない状況が懸念されている。同プロジェクトは出力1,100MWと1,148MWの2基の風力タービンで構成されており、それぞれが年間を通して50万世帯に電力を供給する予定だった。1号機の起工は今年8月、運転開始は2025年、完成は2026年とされていた。ニュージャージー州のフィル・マーフィー州知事によると、オーステッドがプロジェクトを遂行しなかった場合、同州が受け取るべき補償金は3億ドル。さらに同知事は「すべての法的権利と是正措置を検討した上で、必要なあらゆる措置を講じ、オーステッドにその義務を全面的かつ直ちに履行させるよう」州の行政部門に命じている。 なお、連邦税額控除の継続を洋上風力発電事業者に認める法案が可決したことにより、マーフィー州知事の落胆と驚きはさらに高まったようだ。これは本来、料金支払者の電力コストを相殺するための措置だった。プロジェクトを存続させるための譲歩ともいえる。一方、隣のニューヨーク州では、既存の契約を見直すことにより、高騰するプロジェクトの建設・資金調達コストを顧客に転嫁しようとする事業者が現れている。全米におよぶ現在の高いインフレ率と高金利が2030年に向けた洋上風力発電量の国家目標である30GWに重くのしかかっている。
第44週 AIB再生可能エネルギー(本年):
仲値 =4.000ユーロ (+0.295ユーロ/+7.96%)
UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:23.50~25.50ポンド、売却目安:32.50~34.50ポンド
UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP22: 22ポンド; CP23: 18ポンド; CP24: 17ポンド; CP25: 15ポンド
船腹不足でニュージャージー州初の洋上風力発電プロジェクトが頓挫: デンマークのエネルギー企業オーステッドがニュージャージー州沖の2件のオーシャン・ウインド・プロジェクトの中止を発表した。建設に必須の船腹を確保できないことが原因。マッツ・ニッパー最高経営責任者によると、全市場におよぶ船腹調達の著しい遅延がドミノ効果となってプロジェクト全体が数年遅れ、プロジェクトのすべてまたはかなりの部分について当初を大幅に上回る価格で再契約しなければならない状況が懸念されている。同プロジェクトは出力1,100MWと1,148MWの2基の風力タービンで構成されており、それぞれが年間を通して50万世帯に電力を供給する予定だった。1号機の起工は今年8月、運転開始は2025年、完成は2026年とされていた。ニュージャージー州のフィル・マーフィー州知事によると、オーステッドがプロジェクトを遂行しなかった場合、同州が受け取るべき補償金は3億ドル。さらに同知事は「すべての法的権利と是正措置を検討した上で、必要なあらゆる措置を講じ、オーステッドにその義務を全面的かつ直ちに履行させるよう」州の行政部門に命じている。 なお、連邦税額控除の継続を洋上風力発電事業者に認める法案が可決したことにより、マーフィー州知事の落胆と驚きはさらに高まったようだ。これは本来、料金支払者の電力コストを相殺するための措置だった。プロジェクトを存続させるための譲歩ともいえる。一方、隣のニューヨーク州では、既存の契約を見直すことにより、高騰するプロジェクトの建設・資金調達コストを顧客に転嫁しようとする事業者が現れている。全米におよぶ現在の高いインフレ率と高金利が2030年に向けた洋上風力発電量の国家目標である30GWに重くのしかかっている。

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