投機買いでEUAが反発、ノルウェーのガス供給の再開とオーストラリアでのLNGストライキの終結でエネルギー価格は下落 UKAが史上最安値に

  • EUAの終値は前週比3.9%増の85.29ユーロ。取引レンジは5.63ユーロに拡大(前週は3.52ユーロ)。前週と類似したパターン。すなわち、安値で始まったEUAは前週の最安値に迫る展開となった。しかし、取引データによると、別のショートスクィーズが発生し、その勢いが水曜以降の加速。金曜には86.13ユーロに達した。
  • 日中平均ボラティリティは前週の2.01ユーロから2.23ユーロに微増。
  • 温暖で風の強い天気を受けてガス貯蔵量は過去3年の最高水準(95%)。
  • 中央ヨーロッパの気温は20℃台半ばに上昇。南ヨーロッパも再び30℃に。再生可能エネルギー発電量は週明けに平均以下に減少。
  • ノルウェーのガス:ノルウェーからEUへのガス供給量は金曜の2億2,710立法メートルから週末には通常量の2億5,590立法メートルまで回復。
  • シェブロンが労組側と合意に至ってオーストラリアでのLNGストライキは終結。
  • 次のテクニカルなサポートレベルは84.08ユーロ、80.65ユーロ、78.16ユーロ。注目すべきレジスタンスレベルは87.23ユーロ、88.12ユーロ、90.41ユーロ。
  • マクロ経済データ米国中央銀行は金利を据え置き;EUの9月のインフレデータの発表は今週金曜。

隔週オークション終了後にUKAが過去最安値の33.50ポンドまで下落。風力発電量の増加と温暖な気温は今後も続く見通し。Redshaw社の見通し:弱含み
  • UKAの終値は1.31ポンド減(-3.4%)の36.69, ポンド。売り圧力の上昇にともない、月曜から木曜にかけて徐々に売られた結果、UKAは過去最安値の33.50ポンドを記録。しかし、週末に向けて買い戻されたため、金曜には37.53ポンドまで急騰した。日中平均ボラティリティは2.15ポンドに上昇し(前週は1.31ポンド)、取引レンジは4.44 ポンドに拡大した(前週は4.08ポンド)。
  • EUAに対するUKAの週平均スプレッドは対照的な値動きを受けて12.3%拡大:前週の-36.79ユーロに対し、今週は-41.30ユーロ(チャートを参照)。
  • 温暖な気温と再生可能エネルギー発電量の増加(イギリスのエネルギーミックスの40%相当)がガス消費量を抑制。それでもガス貯蔵量は1%減の61%。次週も温暖で風の強い天気が続く模様。
  • データ:インフレ率が予想を下回ったことから、イングランド銀行が14週連続の金利引き上げを見送り、据え置きを決定。イギリスのGDPデータは金曜に発表の予定。
  • サポートレベルは34.01ポンドと33.50ポンド。レジスタンスレベルは37.53ポンド、37.94ポンド、40.15ポンド、40.90ポンド。

炭素投資家によるポジションの解消は継続
  • KFA Global Carbon ETFの保有量はEUAとUKAの双方で不変。NAV(Net Asset Value:純資産総額)は2%増の5億0,300万米ドル。

技術的な短期見通し
  • Futurestechsによる展望:4回連続で陽線。突如として強気筋が目を覚ます!

  • コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • 英スナク首相が気候目標の緩和を発表。

  • ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • N-GEOは35%増;ICVCMがカーボンクレジットの「認証」方法の詳細を発表。

  • 再生可能エネルギー市場に関する最新情報
    • AIB価格は微増;脱炭素目標の達成に向けてEUの送電網は改修が喫緊の課題;スコットランド政府が陸上風力発電の計画期間を半分に短縮する意向
    技術的見通し
    以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
    • 短期傾向:横ばいから強含み
    • 中期傾向:横ばい
    • 昨日(2023年10月1日)までの相場動向83.56が木曜の丸坊主のラインだったことから、金曜のレポートではこれが明確なサポートとなった。金曜の取引開始時点でここから上昇し、午後になって84.61に到達後、一部で反転の動きが見られた。しかし、新たに陽線が出現。新しい週に入り、これは強気筋にとっては良い前兆。
    • 推奨取引:押し目買い
    ノルウェーのガス供給の再開でエネルギー市場全体が下落傾向。EUのガス貯蔵量が過去3年の最高水準に。温暖な天候続く-EUA価格が異常値となって終値上昇。

    • 右記の図(上)は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
      • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、EUAは 3.9%増。ドイツ電力は1.9%減。ARA石炭は 0.8%減。TTFガスは3.9%減。
    • 右記の図(下)は石炭とガスを燃料とする一年後の先物価格をもとにしたドイツの発電マージン。
      • Y1石炭のマージンは28.43ユーロ/MWh 前後(今週10.3%減)、Y1ガスのマージンは26.94ユーロ/MWh 前後(今週8.67%増)。
      • ガスのマージンは現在、石炭とほぼ同等。

    コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
    英スナク首相が気候目標の緩和を発表:イギリスのリシ・スナク首相が同国の気候変動計画を見直したことにより、大きな波紋が広がっている。同首相は2050年を目標とするネットゼロの法的拘束力は改めて確認しているものの、ガソリン車とディーゼル車の禁止期限を2030年から2035年に延長することを決定。さらに、同首相がいうところの「受け入れ難いコスト」を抑制すべく、ガスボイラーからヒートポンプへの移行と断熱改善の義務化が一般家庭に対して緩和される。また、前政権が市民の同意を十分に得ないまま、大胆なネットゼロ目標を性急に設定したことも問題視しており、これが今回の政策転換の論拠となっている。現行路線の継続はイギリス国民を無視することになり、具体的政策と広い意味での気候使命の遂行が危うくなる点も危惧している。しかし、この決定を巡り、企業・環境活動家・野党など、さまざまな方面から厳しい批判の声が上がっている。グリーン政策を減速すれば、脱炭素化がもたらす投資・経済成長の機会が妨げられると反対勢力は主張している。今回の一連の動きの背景には、来る国政選挙に加え、高インフレ率や低成長といった経済問題があると考えられている。排出削減ではイギリスは他主要国に先んじているとスナク首相は主張しているが、独立した気候アドバイザーによると、イギリスは気候目標から遠ざかりつつあるのが現状。また、政策の変更により、イギリスは公約の履行が危うくなっているとのこと。スナク首相はこれに対し、過去の超過達成をもとに柔軟に対応できる余地があると反論している。実際、工業生産のコスト削減と一般市民による気候対策の受け入れは予想以上に進んでいる。イギリスは気候公約の履行に向けて前進していると、スナク首相の自信に揺るぎはない。

    ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報
    N-GEO(ネイチャーベースのGEO)は前週35%増。
    GER (Global Emission Reduction) も3.3%増。AO500(AiedOffsets500 index)は12%減

    供給側の基準管理団体ICVCMがカーボンクレジットの「認証」方法の詳細を発表:ボランタリー炭素市場インテグリティ協議会(ICVCM)がカーボンクレジットを2つのカテゴリー、すなわち、コア炭素原則(CCP)が認証するものと、同原則に準拠しないものとに分けようとしている。これにより、カーボンクレジット市場が二分化される可能性がある。最初の「CCP認証」クレジットが今年中にラベリングされることは発表されているが、作業部会はその方法の詳細を明示していなかった。しかし今回、それが明らかとなった。具体的には、2つの作業部会カーボンクレジット・プログラムの優先順位と評価に加え、そこに至るカテゴリーを決定する方法の概要が示された。認証に向けて優先すべきカテゴリーとそうでないカテゴリー(要件の遵守が期待できないカテゴリー)がカテゴリー作業部会によって審査される。同グループのステイクホルダーにはバイヤーやデータプロバイダー、格付け機関、ICVCMの基準管理委員会専門家パネルのメンバー等が含まれている。次の段階として、複数のステイクホルダーから成る作業部会が「詳細評価」を行い、当該のカテゴリーが要件を満たしているか否かを決定する。

     
     
    再生可能エネルギー市場に関する最新情報
    第38週 AIB再生可能エネルギー(本年):

    仲値= 5.375ユーロ (+0.025ユーロ/+0.47%)

    UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
    購入目安:23.50~25.50ポンド、売却目安:32.50~34.50ポンド

    UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
    CP23:14.10ポンド;CP24:10.50ポンド;CP25:9.50ポンド

    老朽化した送電網の改修なくしてはEUのクリーンエネルギー目標の達成は困難: 欧州委員会によると、10年以内に欧州経済圏を脱炭素化するには送電網の改修に2030年まで毎年5,840億ユーロを投資する必要がある。これは、需要・供給面の一連の大胆な改革にともなうもの。実際、今後数年でEVは数百万台増加し、太陽光・風力発電容量も増加すると見込まれている。送電網の大半は大規模な発電所を起点としているため、太陽光・風力発電所等から電力を調達するには送電網全体の改修が必要となる。さらに、ヨーロッパの送電網の約40%は稼働後40年以上経過しており、これらの改修も必要とされている。必要な資金の大半は民間部門から調達されるか、または電気料金の負担金で賄われる。Eurelectric (欧州電気事業連合)は公的資金の用途として、長期インフラ開発(2030年開始予定の水素プロジェクト等)よりも送電網の改修を優先すべきだとしている。エネルギー担当欧州委員のカドリ・シムソン氏がロイターに語ったところによると、早期認可とEU財源へのアクセスが保証される越境インフラの次期リストに送電網プロジェクトが含まれている。EU加盟国はすでに改修への投資を送電系統運用者に促す電力市場改革について交渉を進めているが、各国政府は6月以来、発電所への国庫補助を巡る論争により、関連法の採択に至っていない。

    スコットランド政府が陸上風力発電の計画期間を半分に短縮する意向: 先週エディンバラで開かれたスコットランド再生可能陸上風力発電会議において、産業界と政府との間で陸上風力発電セクター協定が交わされた。その目的は、公的調査と2年間の審理を免除し、1年以内に大規模風力発電施設の新規建設申請を認可することにある。これにより、認可に要する期間が半減される。スコットラド政府の2030年陸上風力発電量目標である20GWの達成に向け、これは重要な措置といえる。スコットランドをヨーロッパにおけるタービンブレードの再利用・転用のハブとするイニシアチブも同協定には含まれており、2030年までに少なくともひとつの専用施設が建設される。2030年時点でスコットランドがイギリスの陸上風力発電容量に占める割合は70%以上と推定されているが、きわめて非協力的なイングランドの政治的状況と関係大臣の最近の消極的なコメントを考えると、同割合は今後変わるかもしれない。



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