地政学的リスクと供給不安が価格を下支えする中、排出枠市場とエネルギーコンプレックス全般に不透明感

  • EUAの終値は前週比1.5%減の67.51ユーロ。取引レンジは5.22ユーロに縮小(前週は6.80ユーロ)。EUA価格は概ねガス市場に追従し、反発するも、トレーダーが「静観」したため、方向性は定まらず。中東情勢に新たな展開が見られなかったことから、先週は弱気のセンチメントでスタート。その結果、価格は2ユーロ以上下落した。週最安値の64.75ユーロに達したところで買いが発生したため、火曜と水曜の取引には逡巡が見られた。しかし、欧州委員会がロシア産ガスの積み替え禁止を計画していることから、価格は木曜に急騰し、週最高値の69.97ユーロに達した。その後は売りが発生し、70ユーロ超えはならず。木曜午後から金曜にかけて下落し、先週比1.01ユーロ減の67.51ユーロで引けた。
  • 日中平均ボラティリティは再び4.98ユーロに微増(先週は4.46ユーロ)。
  • 天候:気温は平年をやや上回る見通し。風は弱め。
  • ガス貯蔵量は62%で不変。LNG貯蔵量は58%から55%に減少。
  • 取引ポジションデータ:投資ファンドのネットショートポジションは21%減の-1,960万トン(先週は-2,480万トン)。投資ファンドのグロスショートポジションは1,260万トン減の5,050万トン(4月19日時点のデータ)。
  • 次のテクニカルなサポートレベルは67.37ユーロ、66.50~66.57ユーロ、65.80ユーロ。注目すべきレジスタンスレベルは67.78ユーロ、68.37ユーロ、69.20ユーロ。

UKAの取引レンジは引き続きタイト。水曜開催の隔週オークションでボラティリティがある程度上昇する見込み。Redshaw社の見通し:横ばい
  • UKAの終値は前週比1ポンド増(2.8%増)の36.30ポンド。上げ基調で週がスタート。その後も好調な取引を受けて上昇傾向が持続。しかし、ガスとEUの炭素価格の急騰にも関わらず、木曜に1ポンド以上値を下げ、上昇分の大半が消失。金曜には取引の不調でさらに下落。その結果、精彩を欠く週となった。
  • 日中ボラティリティは1.18ポンドに低下(前週は1.61ポンド)、取引レンジは2.89ポンドに拡大(前週は2.84ポンド)。
  • イギリスのガス貯蔵量は容量の41%まで減少(先週は48%)。次週の気温は平年以上となるものの、風力・太陽光発電量は平年をやや下回る見通し。
  • EUAに対するUKAの週平均スプレッドはUKAの高騰を受けて大幅に縮小:先週の-29.12ユーロに対し、今週は-24.50ユーロ。
  • 次の重要なサポートレベルは34.56ポンド、33.01ポンド、31.30ポンド。一方、レジスタンスレベルは37.69ポンド、38.40ポンド、39.91ポンド。

Carbon ETFsのポジションは減少
  • KFA Global Carbon ETFのEUA保有量は約2%減。NAV(Net Asset Value:純資産総額)は3億700万ドル。
EUAのテクニカルな短期見通し
  • 推奨取引:ロングポジションを推奨。
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • EUが持続可能性デューデリジェンス指令を採択;特別委員会がスカンソープ製鉄所において電気アーク炉の導入を協議
ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • カーボンクレジット価格は保ち合い;炭素除去ベンチャーがCO2コンクリート固定化技術の開発主体に投資
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • GO価格は下落;6~10GWの洋上風力発電プロジェクトの入札がデンマークでスタート
技術的見通し
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
  • 短期傾向:横ばいから強含み
  • 中期傾向:横ばいから強含み
  • 昨日(2024年4月28日)までの相場動向2セッション連続で下ヒゲ十字線が出現し、65.80ユーロのサポートレベルを突破。その後、取引終了前に反発。強気筋がこのレベルを維持しようとした模様。木曜には長い下ヒゲ陽線が出現。これが弱気筋には好材料となった。金曜には再び長い下ヒゲと上ヒゲをともなう陰線が出現し、やや混沌とした状況に。しかし、65.80ユーロ以上を維持していることから、今週はやや強気のセンチメントでスタート。
  • 現時点での推奨取引:ロングポジションを推奨。
  • 大局的な見解と目安:80~81ユーロに回復?先週の反転からすると、これは再考の余地あり。しかし、65.80ユーロのサポートレベルが維持されれば強気筋にはある程度望みあり。
供給不安の沈静化と需要減退を受けてエネルギーコンプレックス全般がさらに低迷

  • 右記の図(上)は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Dec Y1(一年先の12月先物価格)を見ると、先週、 EUAは1.5%減、ドイツ電力は1.1%減。ARA石炭は7.3%減。TTFガスは1.4%減。
  • 右記の図(下)はドイツにおける発電のマージンの今後1年間の予想推移(燃料源は石炭とガス)。
    • Y1石炭のマージン(効率42%)は-3.60ユーロ/MWh 前後、Y1ガスのマージン(効率59%)は8.94ユーロ/MWh 前後。
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報

EUが持続可能性デューデリジェンス指令を採択:欧州議会が企業持続可能性デューデリジェンス指令(CSDDD)の採択に向けて投票を実施。事業活動が人権や環境に与える悪影響の緩和等が企業に義務化される。

これにともない、パリ協定の目標である平均気温上昇1.5℃未満の達成に向け、企業は事業改革案を提示しなければならない。ただし、対象となるEU企業の従業員数は従来の500人から1,000人に、収益は当初の1億5,000万ユーロから4億5,000万ユーロに引き上げられるため、CSDDDの対象企業数は3分の1に減少する。今回の改定CSDDDは段階的に施行される。まず、2027年に従業員数5,000人以上、収益15億ユーロ以上の企業、続いて2028年に従業員数3,000人以上、収益9億ユーロ以上の企業、そして2029年に全企業が対象となる。

これにともない、改定CSDDDはサプライチェーン全般に適用されるため、各企業はサプライヤーの目標達成を支援することになる。

特別委員会がスカンソープ製鉄所において電気アーク炉の導入を協議:ブリティッシュ・スチールが脱炭素戦略の一環として電気アーク炉(EAF)を導入する計画を発表した。

「グリーンで持続可能な企業」に移行すべく、12億5,000万ポンドを投資し、スカンソープ製鉄所とティーズサイド製鉄所のコークス高炉を電気アーク炉に置き換える。なお、スカンソープ製鉄所では2025年12月に電気アーク炉がフル稼働するまで、既存のコークス高炉が使用される。

この計画に対し、労働組合が雇用の喪失を懸念している。電気アーク炉の導入により、最大で2,000人の雇用が失われ、鋼製品の一部がイギリスで生産できなくなるというのがその主張。

ロブ・ウォルサム委員長によると、北リンカンシャー州の特別委員会は「スカンソープでの雇用と生産を維持する」とのこと。同委員会の会合は4月30日に開かれる。

ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報

炭素除去ベンチャーがCO2コンクリート固定化技術の開発主体に投資:South Poleと三菱商事が設立した二酸化炭素除去(CDR)ジョイントベンチャーのNextGen CDR Facility (NextGen)がスイスやドイツを含むヨーロッパ諸国の18件のプロジェクトから炭素除去クレジットを購入した。廃コンクリートを利用したCO2隔離がその由来。

今回の購入は、その他の技術ベースによる革新的炭素除去代替手法の開発に向けたNextGenの投資拡大の一環であり、2025年までに100万トン相当のCDRクレジットの購入を目指す。

NextGenは最近、廃コンクリートを利用したCO2の隔離を専門とするスイス企業と複数年のオフテイク契約を締結している。また一連の関連技術に対し、200ドル/トンを平均価格として2024年5月31日からCDRクレジットの購入を新たに開始することも発表している。

 
 
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
本年第17週AIB再生可能エネルギー:

2024年AIB GO仲値=1.39ユーロ(9.1%減)

潤沢な供給と昨年の証書の持ち越しによる影響を受け、GO価格は先週再び下落。しかし、供給過剰の解消により、アナリストは今年後半の反発を予想している。

供給サイドから見ても需給はタイト化する模様;北欧の水力発電によるエネルギー貯蔵レベルは昨年対比2.2TWh減。また、高金利環境と直近のエネルギー価格の低迷が投資を抑制する可能性がある。さらに、ドイツでは政府の一部が再生可能エネルギーの助成に反対しており、これが発電容量の増加を抑制することも予想される。

一方、再生可能エネルギーへの直近の投資額を見ると、イタリアは他のヨーロッパ諸国のレベルを引き続き下回っているものの、同国ではLNGターミナルへの投資が再生可能エネルギーを大幅に上回っている状況。

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:14.50~16.50ポンド、売却目安:17.00~19.00ポンド

UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP22: 11.99~12.46ポンド; CP23: 8.60~9.00ポンド

6~10GWの洋上風力発電プロジェクトの入札がデンマークでスタート: デンマークのエネルギー庁が総出力で6GWを上回る洋上風力発電プロジェクトの入札を開始した。今後4GWが追加され、再生可能エネルギーのオークションとしては過去最大規模となる見込み。

計画ではバルト海・カテガット海峡・北海で6つの風力発電所を稼働させる。落札者には特定海域での洋上風力発電プロジェクトの開発権が付与されるが、政府による助成金は支給されない。一方、共同所有者となるデンマーク政府は各発電施設の株の20%を保有し、落札者は今後30年に渡り、デンマーク政府に権利金を支払う。プロジェクトの建設は2030年に完了する予定。

デンマークで稼働中の洋上風力発電所の総出力は2.7GWに達している。現在、トール洋上風力発電所の建設が進んでおり、これが2027年に稼働すると、新たに1GWが加わることになる。



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