供給不安が解消してエネルギー価格とともに排出枠価格も下落;投資ファンドがEUAのショートポジションを再び積み増し

  • EUAの終値は前週比2.65ユーロ減(3.6%減)の71.42ユーロ。取引レンジは6.87ユーロに大幅拡大(前週は4.05ユーロ)。メンテナンス後のノルウェー産ガスの供給遅延でEUAはきわめて好調にスタート。月曜午前に週最高値の77.81ユーロに到達したが、供給不安が解消されてすぐに失速。売り圧力が高まり、午前の上昇傾向が反転して引けた。火曜以降も売り圧力は持続し、200日移動平均を割ったが、71ユーロ前後がサポートレベルに。しかし、週末に向けてエネルギー市場全般が軟化し、下方圧力が持続した。
  • 日中平均ボラティリティは2.22 ユーロに微減(前週は2.29ユーロ)
  • 天気:気温は平年をやや下回る見込み。穏やかな風と南部の洪水がドイツの再生可能エネルギー発電量に影響。
  • ガス貯蔵量は再び2%増加して72%に(先週は70%)。LNG貯蔵量は51%に微減(先週は52%)。
  • 取引ポジションデータ:投資ファンドがネットショートポジションを積み増し。前週の-670万トンに対し、先週は-800万トン。5月24日取引終了時点のデータ。
  • EUの選挙で右派が優勢に。
  • 次のテクニカルサポートレベルは70.97ユーロ、70.55ユーロ、70.09ユーロ。注目すべきレジスタンスレベルは71.85ユーロ、72.31ユーロ、72.73ユーロ。

隔週オークションが再開し、過去最高のネットショートポジションを維持する投資ファンドの確信が試される局面。Redshaw社の見通し:横ばいから弱含み
  • UKAはエネルギー価格の下落にともなって1.24ポンド安(2.6%減)の47.34ポンド。状況はEUAとほぼ同様。供給停止の延長で変動するガス価格にともない、激しい値動きでスタート。直近の最高値から下落を続け、水曜に週最安値の45.80ポンドを記録。しかし、取引低調ながらも木曜と金曜には若干持ち直した。
  • 日中ボラティリティは1.48ポンドに低下(前週は1.75ポンド)。取引レンジは4.10ポンドに縮小(前週は4.97ポンド)。
  • イギリスのガス貯蔵量は43%に微減(前週は44%)。気温は平年をやや上回り、再生可能エネルギー発電は通常量となる見通し。
  • 先週のUKA価格の急落を受け、EUAとUKAの週平均スプレッドは前週から18.8%縮小;前週の-20.50ユーロに対し、先週は-16.64ユーロ。
  • 次の重要なサポートレベルは45.80ポンド、44.49ポンド、43.60ポンド。一方、レジスタンスレベルは49.90~50.00ポンド、51ポンド。

Carbon ETFの排出枠ポジションは減少。
  • KFA Global Carbon ETFの保有量はEUAとUKAの双方で減少。NAV(Net Asset Value:純資産総額)は5.5%減。
EUAのテクニカルな短期見通し
  • 月曜に価格頭打ちとなり、その後に売りが増加。戻り売り
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報
  • 欧州中央銀行(ECB)が5年ぶりに政策金利を引き下げ;UK ETSの2023年検証排出量が12.5%減
ボランタリー炭素市場(自主的な取り組み)に関する最新情報
  • AO500クレジット価格は5.3%増;ICVCMが2,700万トン相当の CCP認定カーボンクレジットを供給
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
  • GO価格わずかに反発するも最安値近辺で引き続き低迷;欧州委員会が4.6GW分のイタリアの補助金を承認
技術的見通し
以下は受賞歴のあるクライブ・ランバート氏(Futurestech社)による分析。
  • 短期傾向:横ばいから弱含み
  • 中期傾向:横ばいから強含み
  • 昨日(2024年6月9日)までの相場動向「流れ星」の反転ローソク足パターンが出現。しかし、72.95ユーロと72.63ユーロのサポートレベルは強固と思われるため、現時点では弱気の展望を全面的に支持はしない。この二つのサポートレベルを下回れば67.78ユーロまで下落する可能性があるが、それは実際に下回った場合のみ!火曜に72.63ユーロを突破し、以後、反発はしているものの、売りが発生していることから、短期的には引き続き弱気を支持。金曜は一定の値幅での低調な取引に終始。
  • 概要/考察月曜に価格頭打ちとなり、その後に売りが増加。
  • 推奨取引:戻り売り
電力価格の下落が発電のスプレッドに大きく影響。

  • 右記の図(上)は、EUA、ドイツ電力、ARA石炭(石炭のベンチマーク)、TTF天然ガス(天然ガスのベンチマーク)の一年先の先物価格の推移。
    • Y1(期近12月物)を見ると、先週、 EUAは3.6%減、ドイツ電力は5.8%減。ARA石炭は7.3%減。TTFガスは4.3%減。
  • 右記の図(下)はドイツにおける発電のマージンの今後1年間の予想推移(燃料源は石炭とガス)。
    • Y1石炭のマージン(効率42%)は-4.83ユーロ/MWh 前後、Y1ガスのマージン(効率59%)は5.54/ユーロ/MWh 前後。
コンプライアンス市場(法的取り組み)に関するその他の最新情報

欧州中央銀行(ECB)が5年ぶりに政策金利を引き下げ:欧州中央銀行(ECB)が先週の木曜、約5年ぶりとなる政策金利の引き下げを発表した。引き下げ幅は0.25%。これにともない、主要政策金利は4.25%、限界貸付金利は4.50%、中銀預金金利は3.75%となる。

この政策金利引き下げにより、経済活動の活発化で景気が回復し、炭素市場で排出枠需要が高まることが期待されている。しかし、金利引き下げの効果が炭素市場に波及するには時間を要する。その理由として、「賃金の上昇による物価圧力が依然として高く、来年も引き続きインフレが目標値を上回る可能性が高い」とECBは指摘している。

発電部門が大きく貢献し、UK ETSの2023年検証排出量が12.5%減:イギリス政府が先週の金曜、UK ETSの2023年検証排出量が12.5%減少したことを発表した。航空部門の排出は3年連続で増加しているものの、発電部門による削減が大きく貢献している。

2022年の検証排出量1億1,060万トン(CO2換算)に対し、2023年の実績は9,676万トン。発電部門の排出が1,110万トン減少したことにより、総検証排出量も減少している。重工業部門の排出も前年から6.9%減少している。一方、航空部門の排出は13%増。2022年の780万トンに対し、2023年の実績は880万トンとなっている。

EUの炭素市場でも今年初め、類似の傾向が認められている。欧州委員会の発表によると、EUでも発電部門が大きく貢献し、2023年のEU ETSの検証排出量は前年比で15.5%減少している。
ボランタリー炭素市場(自主的取り組み)に関する最新情報

ICVCMが2,700万トン相当のCCP認定カーボンクレジットを供給:ボランタリー炭素市場インテグリティ協議会(ICVCM)の発表によると、約2,700万トン相当のカーボンクレジットに信頼性の高いコア炭素原則(CCP)認定が適用される。まず、埋立地でのメタンの回収や廃棄物中のオゾン破壊物質の処理等を含む7種の手法から創出されるカーボンクレジットが認定される。8,000万トン相当のカーボンクレジットを創出する他の27種の手法も適用対象として前向きに検討されている。また、 REDD+や管轄REDD、クリーンな調理コンロ等、一般的な手法も複数のステイクホルダーによって検討されており、今後数ヵ月の内に最終決定される見通し。現在、クレジットがCCP認定されている基準管理団体はACR、ART、CAR、Gold Standard、VCS(運営主体はVerra)の5団体のみ。

今回の措置で「プレミアム・クレジット」への関心は高まるかもしれないが、ガイドラインの乱立と高価格帯のCCP認定クレジットはVCMのステイクホルダーにとっては懸念事項。今後の需要を抑制しかねない。CCP認定の影響でクレジット価格は10ドル値上がりすると専門家は見ている。
 
再生可能エネルギー市場に関する最新情報
本年第23週AIB再生可能エネルギー:

2024年AIB GO仲値=0.92ユーロ(4.5%増)

取引低調ながらもヨーロッパのAIB G0市場は先週やや上昇。しかし、供給は引き続き潤沢。さらに6月後半の一連のオークションによる大幅供給増で弱気のセンチメントが優勢に。フランスの月例オークションは6月19日に開催予定。イタリアは6月20日。前回の入札が不調に終わったイタリアのオークションは特に要注目。

イタリアの場合、2023年のGOは2024年のコンプライアンスにも使用できるため、新規発行のGOに影響しており、以前の発行日を選択する企業に選択機会を与える結果となっている。市場参加者は今後のコンプライアンスを低コストで満たそうとすることから、現在の状況は市場のダイナミクスと価格戦略に影響をおよぼす可能性がある。 

UK RGGO(Renewable Gas Guarantees of Origin:再生可能ガス原産地証明)の指標価格:
購入目安:14.50~16.50ポンド、売却目安:17.00~19.00ポンド

UK REGO(再生可能エネルギー原産地証明書)の指標価格:
CP22: 14.75~15.00ポンド; CP23: 9.30~10.00ポンド

欧州委員会が4.6GW分のイタリアの補助金を承認: 欧州委員会(EC)が2024年6月4日、再生可能エネルギー容量の拡大(4.6GW相当)に向けてイタリアが申請している補助金制度を承認した。同制度は2028年まで継続する。

発電事業者との双方向差額契約(CfD)をもとに革新的技術を導入し、再生可能エネルギーを開発する計画。生産される電力はイタリアの送電網に供給され、消費者は当該の発電施設の運用期間に渡り、電力料金の一部で所用コストを負担する。

ECは4.6GWの内訳を公表していないが、最近の法案によると、洋上風力発電で3.8GW、洋上太陽光発電で200MW、内水面での太陽光発電で50MWとなっている。また、ECの規定によると、補助金対象の発電施設は2.5~5年以内に操業を開始しなければならない。



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